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「北風」

北風の強い日だった

寝不足の私

強い北風は

寝不足の私の脳を

何とか活動状態にしてくれた

車窓から吹き込む強い北風は

寝不足の私の脳を

運転に集中させてくれた

強い北風が吹く中

学生時代によく行ったコンビニで煙草を買う

学生時代の私を知るおばさんが

「昔よく来てたわよね」と話しかけてくれた

私は勿論その人を覚えていた

髪色が変わっても、眼鏡を付けていなくても

名札の苗字と写真は変わってはいなかったから

強い北風に吹かれながら吸う煙草から

物理的ではなく心理的な温もりを感じた

強い北風に負けずに

愛車は私を家まで送り届けてくれた

全開の窓から室内に吹き込む強い北風

雨が降り終わった後のようで

窓辺に掛けた洗濯物は濡れていた

強い北風を遮断して暖房を入れた

徐々に部屋が温かくなっていった

強い北風から避難するように

敷布団を一枚、掛布団を二枚

寝室に敷いてぬいぐるみを抱いた

意識は強い北風から深い暗闇の中へ

意識が「ただいま」を言って戻った時

強い北風が外を駆け抜ける音がした

寝不足の私の脳が寝不足ではなくなった

強い北風は聴覚でしか感じない

全身はお布団で暖まっている

どうして、何故

両頬に北風より冷たい雫が流れている

どうして、何故。

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