ハレもケもハレ 4 : 彼が入院するらしい
お付き合いをしている彼と同棲を検討し始めたのをきっかけに、人生とは?結婚とは?家族とは?を考え始めた今の心境を書き綴ることにしました。
経緯はこちらから : ハレもケもハレ0 : 人生の岐路に立っている気がするので、書き記すことにしました。
∴過去エントリー
1 : 家探しを始める前から、問い合わせをするまで
2 : 「あなたの幸せを思って」と母から言われたけれど
3 : まだわたしは何者にもなれていない
今回は急に彼が入院することになり( 幸い、そう大ごとではありません ) 関係性の脆さを考えた話です。
🕊
いつものように病院から帰ってきた彼がなんてことないふうに告げた。
「なんか、6月中旬に1週間くらい入院しなきゃいけなくなっちゃった」
「えっ」
大事なこと、急にめちゃくちゃフツーに言うやん。
話を聞けば、持病のバセドウ病の影響で、1週間入院しながら内服調整をすることになったらしい。
母も同じバセドウ病持ちなのと、あとはリハビリ職いえども一医療従事者なので、どういう病気でどういう薬が必要かはある程度分かっている。薬の種類がそう豊富ではなく、早めに適宜対応が必要なことも。
これまでもちょこちょこ通院していて「手術しなきゃかなあ」「病院めんどくさいなあ」「数値爆上がってた」なんてことは聞いていたけれど、2日連続通院するか1泊2日の入院程度だと聞いていた。それがまさか、1週間になるとは。
とはいえ適宜バイタルを見ながら内服調整をすることが目的なので、そう手術だ治療だ安静だ、というほどのことではないらしい。ひとまず安心した。
「…不安?」
背伸びをして、そっと顔に手を伸ばす。ぴたりと手に馴染む、触れ慣れた冷たさ。
「いや、それよりめんどくさい。会社に言って有休使わなきゃなのとか」
めんどくさいんかい。
どこまでも感情の起伏に乏しく、ドライな人だ。「あなた自分ことよ?仮にも入院よ?」と問うと「愛する恋人の前で気丈に振る舞ってるだけかもよ?」とのこと。山ほど日々患者さんを見ているし、敢えてそうやってわざと明るく振る舞う方もいらっしゃるけど、さすがに恋人の心の機微くらいはわかる。これは本気でめんどくさいだけのやつである。とりあえず「はいはい。愛してくれてありがとうねえ」と礼は述べておいた。今シリアスやってるので頬を摘んだり揉んだりして遊ぶのはやめてください。
「会社に言わなきゃだな〜あとさすがに一応親にも言わなきゃか」
「そうねえ、まあ何か必要な物が出てきたときは言ってよ。お家に取りに行くし、ご時世的に面会出来ないけど届けるし」
「よろしく」
そんな話をしていたのが、つい今日の昼下がりのこと。そう、頭に色々なことがよぎるので、彼の家からの帰り道に電車の中でこれを書いている。
毎日、急に病に侵された方々と一緒にいるので、有事のことは考えているつもりだった。自分が病気になった時のことも、それが両親や彼の場合も。
けれど、やはりこうして具体的に親しい人が( たとえ大ごとではなく、2ヶ月前から分かっているとしても ) 入院するとなると、心がゆらぐ。一緒に住んでいないのに寂しいし不安になるし、きっと彼よりわたしのほうが実はこわい。
それに、入院手続きの書類にわたしのことは一切載らないことが、当たり前のことなのに切ないのだ。
こんなにも近しい人なのに、社会全体の法制度で見るとわたしと彼の関係は、ただの他人なのである。
就職と同時に九州から上京してきた身なので、両親はわたしの家を知らない。住所は知っているし、なんとなくの家の写真は見せているけれど、どこに何があるか知っているのは両親より彼だ。
何かあった時のことを想定して話し合ったうえで合鍵を持っているのも、下着や薬、なんなら通帳や印鑑がどこにあるか伝え合っている唯一の存在も彼である。お互い肉親よりも家を行き来して頻繁に会っていて、相手の家のことも最近のお互いのことも知り尽くしているというのに。
それでもわたしに何かあった時、彼には連絡がいかない。付き合っている、という事実以上も以下もそこには無い。結婚を前提に、というのは口約束に過ぎない。婚約者、ではないから。脆いなあ。
ここまで書いていて、頭のなかの整理がついた。
わたしはこの人の家族になりたいんだな。
何かあったとき、真っ先に病院から連絡が来る存在になりたいのだ。逆にもし自分が自力で決断をできない状態に陥ったとき、この人に委ねたいのだ。
とはいえ急にそんな話をしても飛躍しすぎていてびっくりされるだろう。わたしが逆の立場でも間違いなく驚く。だから、ひとまずは1回考えるのをやめて6月まで楽しく過ごすことにする。1週間の入院生活がちょっと楽しくなるようなプレゼント、考えよう。病院勤務の彼女として、腕の見せどころだな。
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