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ハレもケもハレ12 : 恋人が婚約者になりました

お付き合いをしている彼と同棲を検討し始めたのをきっかけに、人生とは?結婚とは?家族とは?を考え始めた今の心境を書き綴ることにしました。
お好きなところだけつまみ食いしていただけると幸い。

今回は、彼が恋人から婚約者になった夜の話です。

🕊

先日の誕生日に、彼からプロポーズを受けた。
年内を目処に一緒になるという話は以前から2人でしていたので、いつかは起こることだと思っていたはずだった。それにさんざん友人たちから「絶対誕生日だよ〜!」と言われていたので、期待していなかったといえば嘘になる。
けれどなんてことない顔をしてわたしの仕事が終わるのに合わせて我が家でご飯を食べ、帰っていったものだから「なるほど。今回ではないのね?」くらいの気持ちだった。それなのにサプライズで花束なんて持って戻ってくるから、ひっくり返りそうになった。なんなら文字通り思わず腰掛けていたベッドから滑り落ちて、そのまま床に座り込んでしまった体制で話を進める始末。同じ目線に腰をおろす彼にダイニングテーブルの椅子ではなくヨガマットを引っ張り出して差し出したあたり、どれほど自分が驚いていたかは思い出すに容易い。


お風呂沸かさなきゃな、ああでも少しだけベッドに座って休もう。そんなふうに思っていたから、靴下は脱ぎっぱなしだったしなんなら床に落ちていた。基本的に整理整頓が得意ではない我が家はどことなく散らかっていて、後から写真を見返してもドラマチックとは言い難い。我がことながら、もっと泣いたり後からニヤニヤしたりするものだと思っていたけど、思いのほか日常は変わらず流れていった。

プロポーズを受けた日の夜にまず取り掛かったのは、ドライフラワー作りだった。せっせとバラを解体し、見様見真似でスワッグを束ねる。葉っぱを切り落とし、茎の長さを揃え、と1人黙々と作業するのはまるで業者みたいだった。幾つか作り、残りは家中の花器を集めて活けておく。
108本の立派のバラの花束をいただいたは良いものの、我が家には一輪挿しや、せいぜい数本が活けられる程度のものしかなかったからだ。バラには本数ごとに意味がある。1本は「一目惚れ」12本は「わたしの恋人( 妻 )になってください」108本が「結婚してください」みたいに。ひとまずドライフラワーにするものは6本ずつにまとめた。

6本には「あなたに夢中」という意味もあるけれど、「お互いに敬い、愛し、分かち合いましょう」という意味があるらしい。自分が描く理想に近いふたりの形はこれだな、と思った。お互いに相手を敬いながら、分かち合うこと。


作ったことのないスワッグをスマホ片手にせっせと作りながら、これからの日々はもしかして、こういうことの積み重ねなのかな、と思った。彼がくれたバラを、わたしがこうして綺麗に残そうとすることは、彼が傾けてくれた優しさをいちばん良い形で汲み取ることに通ずるのではないだろうか。そしてそれと同じかそれ以上の優しさを返すこと。
決して花を扱うのは慣れた作業ではない。手先が器用とはお世辞にも言えたものではないので時間もかかる。実際、普段は日を跨ぐ前に床につくことが多いのにこの日は2時近くまで起きていた。でも、彼の気持ちと行為が嬉しかった。だから喜んで応えようと思えるのだ。こうやって、優しさや愛情に対して手間を惜しまずに、まっすぐ向き合える存在でありたい。

きっとこれから嫌なことや大変なことだって沢山あるだろう。
毎日ご機嫌に過ごせるとは思えない。今までの週末にだけ会うような関係性は、楽しいところしか知らない。恋人と夫婦は違うというのは散々聞く話だし、世の中には色々な事情を抱える人たちがいることを職業柄よく知っている。20数年違う人生を送ってきた他人と一緒に生きていくのだ、うまくいかせるためには努力が要るだろう。そもそも結婚するまでに行うべきタスクの量からして、明らかに甘やかさより困難さのほうが多く含んでいる。

それでも、この人で無理ならわたしに結婚という社会制度そのものが向いていないと迷わず思えるような人を選んだ。彼と家族になれることが今は本当に嬉しい。

今日から彼は転職先で新しい生活が始まる。生活圏内こそ近くなるものの、まったくの異業種転職なのでしばらく慌ただしい日々が続くだろう。わたしも春先は心身ともに毎年体調を崩すので、自分と向き合う時間がきっと増える。おそらくスピーディーに事を運ぶというより、お互いのタイミングを見計らいながらゆっくりと、ということになる。ひとまず今度ゆっくり話そう、とだけ交わして解散した。


日々は続く。
ハレの日もケの日も、ほどほどに楽しくやっていきましょうね、ふたりで。

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