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人は変われると気付いた話【後編】

この記事は前編の続きです。ぜひ遡ってから読んでみてください。

仕事で自己肯定感を上げる

新卒で入社した会社は広告代理店で、私は京都エリアの営業職として配属された。いわゆるホワイト企業とはほど遠く、法人クライアントとメーカーとの板挟みで、毎日朝の8時に出社し、夜の10時に帰れたら早いほうだった。ノルマは厳しく、毎週目標が決まっていて、達成できていなければ休日も自主的に出勤し、営業準備をするのが当たり前だった。

私はこの会社で5年間働いた。
続けられたのは、営業らしく成績が賞与に反映されたというのもあったが、一番大きな理由はとにかく人が好きだからだ。

決して後ろ向きなことや同僚の悪口を言わない。
相談すれば何時間でも話を聞いてくれる。
後輩に指示するときは、自分も絶対に同じことをやり遂げる。

もちろん全員ではなかったが、私が出会った上司にはそんな人が何人もいた。私が入社できたくらいだから、メンバーも頭がいい人ばかりではなかったけれど、人として未完成でありながらもがむしゃらに生きる姿が尊敬できた。

教えてもらったことは数え切れないほどあるが、私が一番好きな考え方は、何か起こったもきに自らの責任で捉える、というもの。今から考えると、連絡せずに仕事を辞める人(いわゆる「飛んだ」というやつだ)も一定数いたので、きっと追い詰めすぎてしまう人が自己責任で考えすぎるのはよくないのだろう。
ただ、私は何か事象が起こった時に「自分には何ができただろう」と考える癖がつくことで視座が広くなり、考えが成熟していくのを実感した。

そうやって一つ一つの仕事を覚え、できることが増え、目標を達成する。ときには失敗をし、自己嫌悪に陥りながらも、営業活動を繰り返すたびに承認欲求はどんどん上がっていった。決まった目標を追いかける「営業」という仕事も、自分の性分に合っていたのだと思う。

ある程度「こうすれば達成できる」という営業のコツをつかみはじめたころ、後輩の教育係やチームのチーフをさせてもらえる機会も増えた。後輩を育成する面白さに目覚めた私は、マネジメントをしっかりやってみたいと思った。

もともと離職率が高い会社ではあったので、私のフォローが足らず退職してしまう部下もいた。しかしその中でも、私のことを慕ってくれる子も存在した。

あるとき後輩がクレームを起こし「悪いのは行いであって、あなたの人格ではない」と私から伝えたことがあった。先輩からの受け売りだったが、私なりに気持ちを込めて話した。それからしばらく時間が経って、その後輩から、私のその言葉を今もとても大事にしている、と言われた。
このように、先輩からもらった考え方を後輩に伝え、自分が部下だったらこんな上司と働きたいと思える人になろうと意識した。たいていの子には、伝わった。
私は自分で自分のことをどんどん好きになれた。仕事を通して成長することで、自己肯定感が上がったのだ。

目標を立て、達成する

いろんなことを教えてくれた会社を、5年で辞めたきっかけは、ずっとやってみたかった「ヨーロッパ一周」を実現したかったからだ。この話は長くなるのでまた別の機会にまとめようと思うが、入社3年目くらいから本格的に準備を始めた。貯金を始め、行きたい国を決め、ルートを引いて情報を集める。そうやってコツコツ作業を進め、2ヶ月半ものひとり長期旅行を計画した。
仕事を辞めてまで実現したので、不安もあったが本当に行ってよかったと思う。純粋にヨーロッパへ行きたかったために決行したことだが「自分で決めたことを達成する」ということは、結果的に私の自己肯定感を大きく上げてくれた。

愛してくれる人を見つける

もう一つ、私に大きな影響を与えた要素がある。それは恋愛だ。
幼いころのトラウマで、私は外見よりも中身を重視して人を好きになるタイプだ。(このトラウマの話もいつか書こうと思う。)
私が人を好きになる基準は「私のことを好きかどうか」だった。もしかしたら、劣等感が強いせいかもしれない。

新卒で入った会社で、私は同期と社内恋愛をした。その彼が今の夫だ。
彼は、とても優しい人で、行動でも口でも愛情表現をしてくれる人だ。「好き」「かわいい」「大丈夫だよ」「優しい」「料理おいしい」。幼いころに培われた冷たい劣等感が、次第に温かい彼の言葉で溶けていくのがわかった。

恋愛感情はそう長く続かないだろう。でも彼は、出会って9年経ったいまでもずっと私に優しいから、きっとうまいこと恋が愛に変わったのだと思う。
彼にとって私が「一番」かはわからない。彼には親や友人など、大切な人がたくさんいる。だけど、私たちは夫婦だから、一緒にいる時間がとても長いから、周りの誰よりもきっと一番深く人として向き合っている。彼は温厚で人とぶつかることも少ないので、私ほど真剣に喧嘩をして、嫌な面も知っている人間はほかにいないと思う。それでも私を好きだと言ってくれている。この事実が、私の自己肯定感を上げてくれた。

自己肯定感が私を変えた

私の人生は世間から見たら、大成功したわけではない。大金持ちになったわけでも、超イケメンと結婚したわけでもないから。
だけど、上記の経験を積み重ねたおかげで、幼いころ私を苦しめた劣等感からはゆっくりと抜け出し、少しずつ自分のことを愛せている。不必要に人の悪口を言わなくなったし、人を攻撃したいとも思わないし、家族を大切にしたいと思っている。劣等感を抱えたままの私は、そんなささいなことさえできていないかもしれない。

転職をしたいまになって思うが、変わったということは、この先また悪い方向に変わることもあるだろう。
だが、この先どんなことがあっても「自分は変わることができた」という事実は、きっと自分を立て直すヒントになり続けると思う。
今回の内容は、もちろん仕事と恋愛がすべてという意味ではない。子育てや、友人関係、趣味。なんでもいいから、努力をして小さな成功体験を積み重ねたり、人を愛し、その結果愛されたりすることで「自己肯定感」を培う。その結果、自分を変えることができるのではないかと思う。
この内容を自戒として、これからも日々を過ごしていきたい。

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