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その国の人々は習い事の為に1日の1/8もの時間を費やし、少女のような横顔をしていた。

こんな夢を見た。

今から少し未来。500もの習い事を出来る巨大な複合施設にいた。30階建てのモールでそこでは社交ダンスを始め、ペットのグルーミングからアイロンの掛け方などどんな事でも習うことができる。発表のためのホールや、習い事関連のショップも沢山入っている。

この国では文化レベルが高く、教養を身につける為の福利厚生が厚い。そのため、ほとんどの企業が15時までを勤務時間と定めそのあとは習い事の時間に充てるように推奨されている。趣味ではなく習い事の支援。しかも企業や国を挙げての施策だった。それはなぜか。女性は不当に長く家事や育児に時間を取られてきたからであった。女性は習い事にかかるレッスン料は無償だった。講師は国から給料が支払われた。

長く停滞していた世界であったが、歴史と産業の上で改革が起こり、全人類の暮らしぶりが変わり女性が本当の意味で文化的に生きていけるようになったのだ。女性の議員や社長、更には総理大臣や大統領までもが世界全体の半分を占めた。

皆、思い思いの習い事を習っている様はキラキラしていて美しかった。女性たちは年齢にかかわらず皆一様に少女のような横顔をしていた。花形のように思われる講師だったが、どちらかと言うと小学校の時のクラスの係のようなもので「誰かがやらなければいけないけれど、取り立ててやりたいものでもない。」と言ったような感じだった。忙しい彼女達も時間を作って仕事とは関係のない習い事に勤しんでいた。陶芸講師がジャズダンスを、手芸の講師がテルミンを、と言ったように。

バレエ講師のハン先生の夫は仕事から帰ると3人の子供の面倒を見ることになっている。「妻のことは誇りに思っている。けれども僕は毎日大変だよ」子供たちが持って帰った小学校に提出する為の書類とにらめっこしながら彼は言う。「あの施設に集まる女性達は幸せだね。それは長い歴史の上で勝ち取った権利だから謳歌してほしい。僕にも時間があれば何か習いに行くんだけれど思いつかなくってね」そう彼は遠い目をする。

社交ダンスなどでもパートナーは女性同士が当たり前だった。そして何を着ていても誰も茶化さない。2人がドレスを着ていても、2人が燕尾服を着ていても。施設内は習い事の衣装のまま自由に移動できた。きらびやかなドレスを纏った2人がエレベーターに颯爽と乗り込む後ろ姿を見送った。

私はこの街に引っ越してきたばかりで、何を習おうと期待に胸を膨らませてここを訪れたのであった。夫に子供を預け、近所に住む友達と複合施設を上から下まで見学しに来たのであった。この地域で1番大きな施設だけあって朝から夕方までかけて見回るとすっかりとくたくたになった。

夕暮れ時。軍艦のように横たわり、眩く光るその施設の名前はノアと言った。

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と言うような夢を見たので色々補足しつつ言語化してみました。普段は政治とか社会に全く興味がないのですがニュースなどは最低限しか触れないのですが、何故だかこのような夢を見る脳の不思議。うーん、こんな国に住んでみたい。私が習うとしたらオペラとカポエイラですね。

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