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やりたい仕事がないって話

俺にはやりたい仕事がない。何かやりたいことはないのかと聞かれるたび、そう答えてきた。すると最近の若者は夢がないだの覇気がないだの嘆く声が聞こえてくる。腑抜けと罵られたこともある。しかし、ないものはない。なくて当然ではないか。やりたいという気持ちだけではどうしようもないのだから。

そう、やりたいだけではだめだ。生活してゆけるだけの金を稼げて、将来の目処も立ち、場合によっては生きがいにもなり、日々前向きに情熱をもって取り組める、社会的で健全な活動でなくてはならない。そうした制約の中で、自分の希望や適性とマッチさせなくてはならない。言うまでもなく至難の業だ。俺を含め多くの脱落者が出て当然ではないか。やりたいことのない奴はだめだとか無気力だとか、そう軽々しく口にするものではない。そう思っていた。つい最近までは。

最近になって、考えが変わった。やりたいことのない俺はだめな人間じゃないかと思い始めたのだ。なぜなら俺の場合、やりたいことが見つからないのはおそらく自業自得だからだ。

やりたいことというのは、ある程度人生経験や社会経験を積まなければ見つかるものではない。遊んだり、バイトをしたり、人間関係の中でもまれたりするような主体的な行動の中でしか生まれない。家に引きこもってやりたいことも仕事の適性もないのだ。しかし、俺にはその経験がない。受動的に生きてきたから、人間性や豊かな社会性、そして人生を育む大切な要素に触れてこなかった。人生の大事な時間を寝ててもできるゲームやネットサーフィンなどの娯楽に費やし、流されるままに生きていた。その体たらくだからやりたいことがないのではないか。

とはいえ、今となってはもうやりたいことなどと言っている場合ではない。新卒を逃し、一年で二度も職を変え、そのくせ資格もスキルもない俺のような阿呆は何をしたいかではなく「何をやりたくないか」、言い換えれば何なら耐えられるかを基準に考えてゆくべきだ。なぜなら何をしたいかを基準にした場合、身の丈に合わない甘えた理想を追い求めることになるからだ。二十そこそこの人ならまだしも、もうすぐ三十になろうとする男のすることではない。

というわけで、これからは簿記三級取得を目指しながら経理を狙うよ。

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