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藤代冥砂
2024年5月12日 00:00
僕はソナさんの綺麗さに、なんだか緊張した。神戸のあの夜は、本当に現実に存在したのだろうか、咄嗟になぜかそう思った。「わたし、浅くない?」あの夜、彼女がつぶやいた問いは、僕の中に小さくない何かを残していた。そういう質問を受けたのは、生涯であれっきりだ。僕がどう答えたのかは覚えていないが、確かに彼女の言う通りだった。そんなソナさんが、あの時と同じ綺麗な姿のままで現れた。僕は最初から動揺し
2024年5月5日 00:00
翌朝6時に起床を知らせる電灯がついた。2等船室に雑魚寝していた韓国の人々は、起床直後だというのに大きな声で会話を始めている。地声が大きいのか、母国への到着がよほど嬉しかったのか、とにかく彼らの朝の第一声は明るく大きかった。僕は手際良く寝具を片付けると、その会話の響きから逃れるようにデッキへと上がった。4月の初旬の朝6時はまだ薄暗く、未明の空と海とのグラデーションを特に美しいと感じることもな