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1995年のバックパッカー 

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1995年。写真家の藤代冥砂は突然仕事を辞め無職となって世界一周無期限の旅に出た。27歳。当時新進カメラマンとしてミスチルのCDジャケットを撮影するなど注目されていたが、約束され…
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1995年のバックパッカー 3 韓国1 ユーラシアの端に。母の面影を追って。

1995年のバックパッカー 3 韓国1 ユーラシアの端に。母の面影を追って。

翌朝6時に起床を知らせる電灯がついた。

2等船室に雑魚寝していた韓国の人々は、起床直後だというのに大きな声で会話を始めている。地声が大きいのか、母国への到着がよほど嬉しかったのか、とにかく彼らの朝の第一声は明るく大きかった。僕は手際良く寝具を片付けると、その会話の響きから逃れるようにデッキへと上がった。

4月の初旬の朝6時はまだ薄暗く、未明の空と海とのグラデーションを特に美しいと感じることもな

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