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2乳幼児ワーママ南アに来た【第7&8週/10】痛みを超えてリスキリングを決意する

今週もまたタフだった!
週末はサーファーの聖地にしてW杯開催地、ダーバンでリフレッシュ!

己の力不足。それを嘆くのは、今じゃない

片や戦略コンサル歴20年の超ベテラン2人が素晴らしい議論をし、中身が濃くもわかりやすいスライドを量産している一方、片や1枚のスライドを作るのに3回くらいやり直しを喰らっている私。
哀しみを通り超してちょっと笑けてくるレベル。

もうねー、本っ当に連日!毎時!
小物感をこれ以上なく味わっている!!

しかもめちゃめちゃ手取り・足取り・励まされ・褒められながら、やらせて貰っているので、
とにかく「やれることを全部やります!」という姿勢で臨む以上の余地が残されていない。。。頑張ろう。

人生初のストレス性胃炎⁉︎他メンバー同士でも軋轢が

実は連続12日腹痛があって昼食か夕食を食べられずにいた。
貴重な日本の同僚からもらった正露丸が素晴らしく効き、駄目押しで医者にも行き、無事復調となる。

南ア食は油脂・肉が多くて胃に溜まる。
他にも体調を崩した人がチラホラ。
完全に新天地、生活水準は高くないとなれば個々人のストレスも溜まるというもの。
それに、3週間も24時間一緒に生活していれば、人間関係の軋轢も生まれる。
メンバー同士の仲違いが表面化してしまったチームもあった。

こんな経験を経て、自分も変わりたいと思った。強く。
育休明けで南アに来るなんて奇跡だったけど、これからの自分に向けて良い道しるべとなったのかも知れない。

3つの軸でリスキリングしていきたい

3つのスキルとは、①英語で議論する、②戦略的思考、③はリーダーシップだ。

忘れたくなくて帰国後直ぐ書いたスライド

まず英語
絶対必死でやる。絶対に。
だって、世界は広いのだ。

今回如実に感じたことはまさにソレ。
世界の広さと人々の多様性を身近に感じながらこの後生きたいのであれば、日本語以外を操れなければ仕方ない。

メンバー出身の11カ国の中で圧倒的に英語が下手だったのは東アジア勢。
私も具体的な物事に関して
「こうあっては困る」
「こうあって欲しい」
という類の発言はできるがビジネスにおける「あるべき姿」や人のモラルなど、価値観を問う深い議論になったときには貢献しきれず、大変残念でも悔しくもあった。

更にいえば、言語と思考がパラレルに駆動できるレベルまで習得するのはかなり道のりが長いなと痛感した。

母語のときは誰でも聴きながら・話しながら考えられる。
だけど聴くことに100%注力するしかない語学力では、脳内ではシーケンシャルに
【理解→考察】
をプロセスすることになり1つ1つの発言に1.5倍のリードタイムを要する。
母語ならパラレルに
【理解&考察】
出来ているのとは違ってしまう。

そこに「自己主張あってナンボ」のコミュニケーション文化の差が拍車をかける。
他人の発言に自分の発言を重ねたうえでいちいちクドく話すので、日本人の常態として、発言の機会を待っていても永遠にお鉢は回ってこず。
マインドセットとしては日本で言うところの「黙って俺の話を聞け」くらいの気持ちで割り込まないといけない。
マインドセットの問題は即解決できるが、脳内プロセスをパラレル化するには学習が必要だ。

戦略的思考、中でも「問題を定義する力」は、意識的に身に付けたいと思う。
これもここ数年、見ないようにして進んできてしまった自分の弱点。
南アフリカでのプロジェクトの四週間を通じて、結局のところ自分はオペレーショナル、あるいはタクティック(戦術的)なスキルしか無いということが痛い程よくわかった。

戦略コンサルのチームメイトが内部でどう会話し、その結果をどうお客様に議論として提示し、最終的にプレゼンテーションに提言としてまとめたか(免責も含め)は、大変勉強になった。

彼らはとにかく初期の頃「あの人が」「この組織長は」「でもこれはあの人の関心じゃない」など、とにかくヒトについてばっかり話していたが今ならようやく腑に落ちる。

南アの社会問題は非常に複雑で多面的で、情報として記述しようとするだけでも完全性を失ってしまう。
でもその中で、「誰」の「何」を問題として、「何を変えるべき」と着眼するのか、から、「私達が取り組むべき問題」を見い出していくのだと、学んだ。

コンサル出身のチームメイトの姿を時に思い浮かべながら、今後の仕事する中でも、ただの状況描写から、もう一歩踏みとどまって「誰の何が問題か」の考えを深めることを意識したいと思う。

最後に、リーダーシップ。
でも、もっと率直に言うと人に優しくあることについて、と言いたい。

これはベルギーからのチームメイト、あるいは他のチームにいるフィンランド人からも大変学ばされた。
どんな人が居ても、居心地の良い場を提供することにちゃんと必死になる。
これはとても大事。必死でやらなければ、楽な道にいつでも逃げられてしまうから。
1回でも1日でも終わらず、40日間連続でやるには大変なエネルギーが必要だった。

実は今回派遣された16人の中には、英語が本当に苦手なメンバーや、プロジェクトデリバリーにはやや不向きなメンバーも居た。
彼らは彼らなりの闘いをしていたのだが、彼らがその闘いに勝つにはやはり強大なバックアップもあったのだ。
楽しい話題、ジョークを提供することも含めて、モラルの高いメンバーに私自身なんど救われたか知れない。
プロジェクトが前進する力を本当に与えてくれたのは、リード(牽引)してくれたのは、そうしたメンバーの真の人間性ともいうべきものだった。

自分がどういうコミュニケーション文化や人間関係性の価値観を持っているか、に拘りすぎず、
カメレオンのごとく違う環境にいる時にはいつもと違う色を強調できるような多彩さを内包した人間でありたい、と思った。
そこで一緒にいる仲間たちのために。

遠浅のダーバンの海はサーファーのメッカ

南アから考える日本の社会

そして南アの社会問題を通じて、自省を促される機会も多くあった。

多言語の共生

南アには11の公用語がある。
バベルの塔の世界そのもので、11の公用語がそれぞれ言語的に近いわけではなく、全く理解しあえない言語同士もある。

南アではアパルトヘイトの歴史が更にこの相互不理解に拍車を掛けた。
たくさんの部族がいる中で、政府としては凄く苦労して共通言語による共通理解を進めようとしている。
言語は思考も絡む話であり「わかり合えない私たち」あるいは「本当の私でいられない私」を生む話。
もし移民をこれから日本が歓迎するならば、言語問題を超えていかに融和を促すか。
移民二世の子ども達も含めて、かなりの覚悟と、相互理解のための教育や制度への投資が必要だと思う。

社会の分断に対する融和の取組み

アパルトヘイト以後/以前の世代のギャップ、人種間のギャップ、あるいは地方と都市のギャップなど、二次元でも三次元でもベクトルの足りない多様性を一国内に抱えている南ア。
あらゆる人々の融和を目指して虹の国を掲げる彼らの努力には敬服する。
一方我々は、あまりに均質的な社会に慣れているがために違いに非常に不慣れである。
これは遺伝子レベルで不慣れである。
でも国勢調査における「標準家庭」が既に全く標準的ではなく、誰も本当には日本社会を代表できなくなりつつある(「代表的日本人」などいない)。
あなたと全く違う他者とただ共に居る為に、あなたはどこまで身銭を切り、負担を負えますか。

インダストリー4.0への取り組み

この国では大統領直轄でAIや拡張機能, 自動化など先端技術に投資することが昨年から進められている。
技術トレンドに置いていかれてはいけないという国を挙げての不退転の決意は、きっとトップレベル同士で戦ったときには日本が負ける未来図を予感させる。
特に中国と南アが国家取引の結果、BBBEEという南アの基幹政策において、中国人・中国系投資を優位に扱うメカニズムを組み込んでいる現実は無視できない。
私たちも、置いていかれる側なんじゃなかろうか。

金曜日に最終プレゼンが迫る中、同時に帰国も近づいており、この思いを今後に活かさねばと早くも思う。

↑日課となったビデオ電話中の息子。
スクリーン越しにキスしてくれている。
↓ダーバンでインド洋に沈む夕陽

※上記は2019年7月の日記の転載です。