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小説 流転の徒(その3)
優也は駅付近に向かう途中、亀山の身の上話を思い出していた。
亀山は中学を卒業してから60歳手前になるまで、ずっと新聞配達員をしてきたが、IT化社会の波にのまれ、勤め先の新聞販売店が廃業したことにより職を失った。新しい就職先を探してはみたものの、職歴、年齢などの理由でなかなか採用してもらえず、借りていたアパートも退去せざるを得なくなり、ホームレス生活を送ることとなった。
電車の中で隣人に肘がぶ
小説 流転の徒(その2)
玄関付近にいた優也は振り返った。
「亀やんか」
「優ちゃん、1,000円ほど貸してくれる」
60代後半の亀山という入居者で皆から「亀やん」と呼ばれている。亀山はギャンブル好きで、渡された金を競馬やらボートレースやらで使ってしまうことも少なくなかった。
亀山が呼んだ時点で想像はしていたが、優也はため息をつきながら言った。
「またか。まあ、そんなことやろうと思ったわ。ええ加減にしときや、え