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新規事業の立ち上げ時に未経験者を採用?!独自のチームビルディングに勇気と影響を与えたのはあの「マンガ」

新年度が始まり早1ヶ月が過ぎました。リモートワークと出社勤務の共存が余儀なくされる今の時代、チームビルディングの必要性をこれまで以上に実感している方も多いのではないでしょうか?

ちなみにチームビルディングとは、各メンバーのスキルや能力、経験を最大限に発揮して目標を達成できるチームを作り上げていくための取り組みのことを指します。チームビルディングに正解不正解はなく、たくさんトライアンドエラーを繰り返して自分たちのチームにあった方法を導き出すことが重要です。

そこで今回は、今まで数多くの新規事業を手掛けながらもチームメンバーに未経験者を積極的に採用し強固なチームを築いていきた中村武士さんにチームビルディングの手法についてお話を伺いました。そこから見えてきたのは中村武士さんならではのチームビルディングとご自身が影響を受けたと語るとあるマンガでした。

〈聞き手=ちゃんめい〉

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【中村 武士(なかむら たけし)】リクルートの新規事業からキャリアをスタートし、営業・渉外・新規事業の立ち上げを経験。その後ITベンチャーの執行役員や、ヘアケアや美容に特化したWebメディア「HAIR」、ギフトメディアEC「Anny」、株式会社ココナラのオウンドメディア「ココナラマガジン」の立ち上げを経て、現在は株式会社メルカリで事業開発領域に携わる。

ーこうして改めて経歴を拝見すると、たくさんの新規事業を立ち上げていますよね。これらの新規事業を立ち上げる中で未経験者を積極的に採用してきたのは本当なのでしょうか?

中村武士さん:確かに僕が自分で立ち上げる事業はインターンや新卒、第二新卒など、新規事業立ち上げというよりも仕事そのものが未経験のメンバーと一緒に立ち上げることが多いね。

ー新規事業といえば即戦力が求められるイメージが強いのですが、なぜ未経験者を採用してきたのでしょうか?

中村武士さん:そもそも僕は未経験の人が新規事業立ち上げに不向きだとは全く思っていないんだよね。特に僕の場合は今の若い人たちが使うウェブやアプリのサービスを立ち上げているので、例え未経験だとしても実際にユーザーと近いメンバーと働くことが結果的にサービスの成長に繋がると思っているから尚更だね。

ー確かに、今まで立ち上げてきたヘアケアや美容、ギフトといった領域は武士さんよりも圧倒的に若手の感性が必要になってきますよね。

中村武士さん:そうそう。あともうひとつは、他社でたくさんの経験を積んできた人たちはそれぞれ、会社や事業、仕事、上司について既に価値観やカルチャーが形成されているから、ある意味僕としては「やりづらい」ことも多くなるんだよね。なので、僕が初めての上司、または初めてのリーダー、新規事業や新サービスを作るのは僕とが初めて...という人の方が圧倒的に進めやすい。僕のチームビルディングや上司、チームリーダーとしての振る舞いは本当に独特だと思から、例えば「上司命令は絶対!」という組織で育った人が僕のチームに来たらあまりの環境の違いに気絶するんじゃないかな(笑)

ー気絶するって...(笑)。武士さんの性格が気さくかつ陽気すぎて、あまり上司っぽくないなぁとは私も思います。ちなみに私はギフトメディアEC「Anny」で武士さんと一緒に働いていた時にすごく印象的だったフレーズあって、それが「まずは自分を疑え」なんですよね。

中村武士さん:まさに僕がチームビルディングで大切にしているフレーズがそれだね。

まずは自分を疑え
人は限定合理性の中で生きている。
自分の思い込みで人を傷つけてしまうことがある。
まず一瞬でも自分を疑う姿勢が大切。

これは、2015年に立ち上げた新規事業を進める中で生まれた言葉。自分自身に向けた戒めの言葉でもあるし、チームメンバー全員に向けた言葉でもあるんだよね。サービスデザインやチームビルディングを積み重ねていく中で、とても大切なことだと思ったから生まれた言葉だと思う。

ー新規事業って暗闇の中を手探りで歩いているような状態じゃないですか。何が正解が分からないからこそ、自分の中にある情熱を頼りにしたり、理論武装して突き進むのではなく、自分を疑う姿勢を持つことも大切ですよね。

中村武士さん:自分の思い込みでメンバーを傷つけてしまうこともあるしね。あと、もう一つ大切にしているのは「Social Style(ソーシャルスタイル)」というフレームワークかな。

Social Style(ソーシャルスタイル)
アメリカの産業心理学者であるデビッド・メリル氏が提唱したコミュニケーション理論。人のスタイル(行動パータン)は、自己主張度(X軸)・感情表現度(Y軸)で分かれる。異なるスタイルが集まったチームは強いことを理解する。自分のスタイルを知り、相手のスタイルを理解し、互いに良い対話を行う。

メンバーがお互いの強みや弱みを理解して補い合うために用いられるフレームワークですね。例えば、チーム内で合わないなと感じるメンバーがいても、この人はこの環境ではこういうSocial Style(ソーシャルスタイル)なんだなぁ...って客観的に相手を見つめられるようになるところも良いところですよね。

中村武士さん:Social Style(ソーシャルスタイル)では以下の4つに分類されるんだけど、僕のチームではそれぞれのタイプが均等になるように採用することが多いかな。

1.ドライビング(前進型・行動派)
2.エクスプレシッブ(直感型・感覚派)
3.エミアブル(温和型・協調派)
4.アナリティカル(分析型・思考派)

ーこの4タイプのメンバーが揃ったら、タイプがバランス良く分かれるのでマンガみたいに1つの物語が生まれそうですね。そもそも未経験者が新規事業立ち上げという大きな舞台で活躍する様子はまるでマンガの主人公みたいですよね!

中村武士さん:確かに。マンガといえば古舘春一先生の『ハイキュー!!』はチームビルディングの面でとても勇気づけられるんだよね。

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『ハイキュー!!』とは?|古舘春一先生が描くバレーボールマンガで「週刊少年ジャンプ」にて2012年〜2020年まで連載。仙台の古豪・烏野高校バレーボール部が全国を目指す物語。

そもそもバレーボールってルール上、決して1人では完結しない唯一のスポーツで、まさにチームビルディングが重要になってくるんだよね。だからこそ『ハイキュー!!』から勇気づけられたり学ぶ部分が多いなと思ってる。

例えば、主人公・日向と影山は出会ったときから常にぶつかり合っているんだけど、そのときに交わす言葉は常に本音だし本気。そして実はお互いに認めあっているし、信頼している。こういう関係ってなかなか作れないけど、実際に生まれると事業やチームを成長させる原動力や起爆剤になるんだよね。

ー日向と影山の関係性はすごく素敵ですよね。印象的なシーンやセリフはありますか?

中村武士さん:影山が日向に

今のお前はただの「ちょっとジャンプ力があって素早いだけの下手くそ」だ。大黒柱のエースになんかなれねえ でも俺がいればお前は最強だ!

って言うシーンがあるんだけど、ここから「相手を尊重しながら、本音で話す」ことの大切さを感じたよね。

ー「相手を尊重しながら、本音で話す」は、日向と影山はもちろん烏野高校排球部メンバー全員に感じられる姿勢ですよね。

中村武士さん:そうそう!月島ことつっきーも最初は斜に構えていたり、みんなそれぞれ欠点を抱えているんだよね。でもその欠点を克服するのではなく尊重して本音で話す、そしてチームとして成長していく...すごく理想的だよね。

ー「相手を尊重する」という面では武士さんがチームビルディングで大切にしている「まずは自分を疑え」とも通じるものがありますよね。ちなみに『ハイキュー!!』の中で特にチームビルディングの面で特に勇気づけられたエピソードってありますか?

中村武士さん:やっぱり対白鳥沢学園高校のクライマックスかなー。正確には、白鳥沢学園高校に勝つまでの話なんだけど。

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ー単行本だと21巻のお話ですね。

中村武士さん:Social Style(ソーシャルスタイル)でいうと、エクスプレシッブな日向、アナリティカルな影山、そしてドライビングなつっきーたちが、チームで勝利するために必死にトスを上げてボールを繋いでいく...。特定の誰かひとりの活躍ではなくて、全員の努力と積み重なったものが結果に繋がるってすごく感動的だよね。新規事業っぽくない?

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あと、烏野高校排球部のメンバーはもちろんだけど、烏養コーチもチームビルディングにおいてすごく重要な役割を果たしていると思うんだよね。この2人って基本的に部員に命令もしないし行動を強制することがなくて、部員が自走するような環境を作っている。でも白鳥沢学園高校がマッチポイントになって、烏野高校はもはや負ける寸前...という思い空気がチームに漂った時に、

下を向くんじゃねえええええ!!! バレーは!! 常に上を向くスポーツだ!

って烏養コーチがベンチから叫ぶんだよね。この一言でチームの空気が一変する。基本的には部員たちが自分たちで盛り上がるような環境にしつつ、重要な場面ではしっかりと言う、このスタンスが烏野高校排球部のチームビルディングの一助になっていると思う。

ーこうして見ると『ハイキュー!!』は高校生の話ですが、社会人のチームビルディングとして学びになるシーンが多い作品ですよね。ちなみに、武士さんが未経験者を採用したことで、実際に体験した『ハイキュー!!』みたいにアツい出来事ってありますか?

中村武士さん:最近で言うと、一昨年に株式会社ココナラで立ち上げたオウンドメディア「ココナラマガジン」かな。メディアの立ち上げはもちろんライター未経験のインターンが情熱を持って臨み、メディアと共にメンバーも大きく成長する。そこからリーダーが生まれて他の新たなインターンにスキルやスタンスが伝播しまたチームが強くなり、大きくなる...。これは過去に立ち上げた事業でも同じだったなぁ。

ー素晴らしい実例ですね...!ちなみに武士さん自身はどんな思いでチームと向き合っているんですか?

中村武士さん:チームビルディングにおいては、リーダーとして、サブリーダーとして、メンバーとして、先輩として、後輩として、新メンバーとして、色々な立場で関わる場合があると思う。でもどの立場であっても僕は「これを通じて一生の友人が作れたらいいな」と思って臨む。そうするとメンバーに対して、威張り散らすこともないし、または誰かを出し抜くとか騙すとか、そういうことは決しておきないんだよね。

ー武士さんと話していると、上司というよりか友人のような身近さを感じる時があります。そのお蔭でチームメンバーがどの立場であっても、萎縮せずに積極的に意見を出しあうことができるのかなと思います。

中村武士さん:今までの経験上「一生の友人を作りたい」と思って事業やチームを作ると、本当に人生を楽しく豊かにしてくれる友人たちが周囲に増える。そうした人たちは仕事や会社が別々に離れてしまったとしても、友人として時々会ったり、また一緒に仕事をしたり、あるいは新しい仕事に繋がったりするんだよね。


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「まずは自分を疑え」というフレーズと「Social Style(ソーシャルスタイル)」。そして、仕事やチームに対して「一生の友人を作りたい」というスタンスで臨むことが中村武士さんならではのチームビルディングの秘訣でした。

そんな中村武士さんが勇気付けられたと語る『ハイキュー!!』は、登場人物たちのコミュニケーションに注目してみるとチームビルディングに役立つかもしれません。


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