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『よろこびのうた』それぞれが守りたいものを守った先に。

思わず表紙に惹かれてマンガを購入する、そんな体験は久しぶりだった。

「よろこびのうた」と書かれたその作品の表紙には、老夫婦が暗闇で身を寄せ合っている絵が描かれている。

本作は、とある田舎町で火葬場から老夫婦の焼死体が見つかるところから始まる。警察は"老老介護"の末の無理心中と結論付けるのだが、事件から半年後、週刊誌の記者・伊能は取材ため現場を訪れる。

近隣住民に聞き込みを行っても、誰一人事件について語るものはおらず取材は難航を極める。そんな中で、現場近くに残るタイヤ跡や焼死した夫婦の不可思議な行動に不信感を持ち独自に調査を進めていくのだが、伊能を待ち受けていたのは、どこにでもいる老夫婦のとても温かくて切ない真実だった。

本作は、老夫妻が火葬場で心中したという現実の事件をモチーフとした作品だ。限界集落での孤独、老老介護、認知症、児童虐待と行った現代社会の問題に切り込んだ内容となっている。

重い題材を扱った作品だけれど、老夫婦の心中の背景にあるのは紛れもなく「愛」だった。それぞれが守りたい者を守ろうとした結果起きてしまった悲劇。

タイトルにもなっている「よろこびのうた」というのは、あのベートーヴェン第九のことだ。老夫婦が心中を図った時にこの曲を流していたことが由来している。

2人の死の真相はぜひ本作を読んでみてほしいのだが、このタイトルこそが心中に隠された真実を物語っているように感じた。

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