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読み切りで垣間見る"底辺"の魅力。

数あるラブコメディ作品の中でも「極道」を舞台にしたマンガはとても珍しいのではないだろうか。

小西明日翔先生の『来世は他人がいい』は、まさしく極道を舞台に描かれるスリリングなラブコメディ作品だ。

関西で最大勢力を誇る極道の一人娘である主人公・染井吉乃。そして、関東最大勢力の極道の跡取りである深山霧島。お互いの祖父たちの身勝手な口約束によって婚約者となった2人は、東京で共同生活をすることに...。けれど、吉乃を待ち受けていたのは、温厚な見た目とは裏腹に狂気的な霧島の本性、そしてヤクザたちの抗争だった。

吉乃を支える狂犬、鳥葦翔真

本作で私が一番注目しているキャラクターは、吉乃の染井組の一員である鳥葦翔真だ。整った顔立ちだけれど、どこか深い闇を抱えているような表情。そして両腕の刺青がトレードマークだ。

大学生でありながら関西最大勢力の極道の一員。基本的にいつも眠そうにしているが、持ち前の勘の鋭さと喧嘩の強さで吉乃のことを陰ながらに支えている。

吉乃に危険が迫ったり、また彼女を侮辱されたと感じると、人が変わったように怒りを爆発させる。まるで、吉乃だけに忠実な狂犬のようなキャラクターだ。

吉乃とのストーリー

何故、翔真はここまで吉乃に尽くすのか...?その秘密は来世は他人がいい』の読み切り作品である『二人は底辺』で描かれている。

物語は吉乃が13歳の頃に遡る。極道の家の娘ということで、学校でも浮いた存在だった彼女。ある日、家に帰ると祖父が翔真を引き取ると言い出す。

吉乃にとって翔真は同じ中学に通う素行も評判も悪い先輩...。本作では、そんな翔真と吉乃が出会い、2人が兄妹のように力強い絆で結ばれるまでの過去を描く。

真が見つけた生きる理由

翔真は複雑な家庭環境で育ち、ずっとひとり孤独に生きてきた。生きることに対して投げやりだった翔真が行き着いたのは吉乃がいる極道の世界だった。

本作では、極道の世界を「底辺の人間が行き着く最後の場所みたいなもんや」と言うシーンがある。そんな底辺の世界で出会った吉乃と翔真だけれど、翔真は吉乃に導かれて生きる理由を見つける。

その生きる理由とは、やはり吉乃を守ることなのだと思う。吉乃と出会ったことをきっかけに初めて自分と言う存在を実感し、彼女を守ることで生きる理由を見つけた翔真。

二人は底辺』を読むと、底辺なりにもがく吉乃の強い生き様と、翔真の覚醒と言った本編とはまた違った魅力が垣間見える。来世は他人がいい』を読んでいる方はぜひ一緒にチェックしてほしい作品だ。

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