ラージャ【取り急ぎ語らせてください。/第3回】
マンガライターのちゃんめいが、タイトル通り「取り急ぎ語らせてください。」と感じたマンガを紹介する本企画。読み終わった後の鮮度高めの感情のままに書く、というショートコラムになっています。第3回目に紹介するのは印南航太先生の『ラージャ』です。
マンガの一大ジャンルとして、長年にわたり愛されている歴史マンガ。史実をベースに、近年の研究結果を踏まえ斬新な設定や細やかな心理描写を盛り込んだ歴史マンガは、教科書に羅列されていているような情報ではなく、一人の人間の物語として胸に迫ってくるものがある。例えば、中国なら『キングダム』西洋なら『ヒストリエ』など…..今までさまざまな地域、時代の歴史がマンガ化されてきたけれど、そういえばインドの歴史マンガって見かけなくない? と。昨年公開の映画『RRR』の熱にあてられて思っていたら、いつの間にか新たに爆誕していました。それが『ラージャ』。
物語の舞台は古代インド。当時は複数の国に分かれていて、各国がしのぎを削り争い合っているという超激動の時代。『ラージャ』は、そんな時代に終止符を打つべく、インド統一を目指す青年・カウティリヤの生き様に迫る物語。インド統一とは、すなわち“王”を目指すということ。きっとカウティリヤは、すんごい死闘や激闘を繰り広げながら華麗にのし上がっていくんだろう、だって主人公にしてるくらいだし…….と、インド史をそんなに深く履修してこなかった私は余裕ぶっこいて読んでいたんですけど。そんな展開じゃないんですよね。てか、この作品はカウティリヤを主人公に据えたことが、作品の面白さを爆上げしていると思う。
もう一度整理するとカウティリヤの夢はインド統一。ってことで、“王”を目指すわけなのだが、カウティリヤは最終的には王にはならないことが1話で明かされる。王ではなく天才軍師となり、初代帝王・チャンドラグプタとインドを統一し「マウリヤ帝国」を建国する…….というのが揺るがぬ運命、歴史。王を目指す物語なのに王になれないんか。しかも、王ではなく、天才軍師という別のポジションでインド統一を成し遂げるって。もう“おもしれー男”じゃないですか!
本来とは別の道で志を成し遂げた男・カウティリヤ。彼は一体、その目で何を見て、何があって、どんな運命を辿ったのだろう。歴史マンガって個人的には誰の目線で語られるのかが面白さの鍵を握ると思っているのだが、古代インド統一の歴史を王という真正面の立場ではなく、“王になりたかった軍師”という(なんか拗れた感情抱えていそう)立場の目線で描かれるって、絶対面白いじゃん! と。彼の生き様から目が離せない。
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