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#読書感想文『2050年 世界人口大減少』

ダリル・ブリッカー、ジョン・イビットソンの『2050年 世界人口大減少』を読んだ。2020年2月に文藝春秋より出版された本である。

2011年に人類の人口は70億人に達した。著者らは、人口爆発は起こらず、人類は壊滅に向かうと述べている。都市化が起こり、女性の教育水準が高くなれば、赤ん坊が死ぬのを見越して、多めに産んだりするようなことはなくなる。女性の地位向上は、発展途上国でも進んでいる。

ドイツ銀行の調査報告では、2055年に世界人口が87億人でピークを迎え、今世紀末には80億人に減るという予測されているのだという(p.70)。

第4章では日本の少子高齢化とアジアの国々の出生率について論じられているのだが、驚いた。2018年頃、香港は1.0を割ったらしい。韓国は0.98、タイは1.4、ベトナムは1.8、マレーシアは2.0とアジアの国々の出生率は、すでに低い。

象徴的なのは、この章に登場する韓国のチョ教授は、自分の娘たちを塾に行かせていない。その理由は、娘たちが大学進学する頃、ほとんどの大学は定員割れを起こし、再編成されている。そして、娘たちに頭を下げて大学に来てくれと言うだろう。将来の娘たちの生活水準は下がるだろうけれど仕方がない、とすでにあきらめていたことだ。

少子高齢化が進むのは中国も同じであるが、移民への受け入れには積極的ではなく、民族問題も抱えているため、アメリカのようなパワーは得られないだろうと予測されている。移民を受け入れ続け、人々が夢や希望を持ってやってくるアメリカは、やはり強い。アメリカが移民政策で失敗をして、中国とロシアが経済的に失速し、超大国になれなかったとき、次に台頭するのはインドだという。しかしながら、著者らはインドのスラムの女性たちもスマートフォンを手にしている様子を目にして近いうちに出生率が下がるだろう、と予測している(p.242)。

しかし、人口が減る理由は以下の理由だけで十分な気がする。

 女性は近年急速に自分の出産に関する決定権を握るようになったが、この権利拡大は多くの面でゼロサムゲームなのだ。ごく最近まで男性は頑固に無駄な抵抗を続けてきたが、それにもかかわらず出生率は低下した。男性は女性に所有権や投票権を認め、最終的には完全なる平等に近いところまで譲歩したが、喜んでそうしたわけではない。そうしたくないとジタバタ抵抗しながら認めてきたのである。
 人類の歴史上ほとんどの時間、男性は女性をその身体まで含めて実質的にも法律的にも支配してきた。都市に住み、教育を受け、自立するようになった女性たちに強制されて初めて、男性はその支配をあきらめたのである。確かに人類誕生以来、男性と女性は互いに愛し合い、一緒に暮らしてきたのは事実だ。だが、それは一方的に男性の望む形に合わせてそうしてきたのであり、その形が女性にとって苛酷だったこともあろう。
p.75  『2050年 世界人口大減少』

この本の原題は、『EMPTY PLANET(空っぽの星)』である。

もう、人口爆発の心配をする必要はない。

日本の若者(0~20歳)の人口は、現時点で2,000万人しかいない。そのほかの年代が1億人いるに過ぎない。どこかの段階で加速度的に人口が減るのだろう。若者に支えろ、というのは土台無理な話なのだ。

解説の河合雅司氏の「日本は移民の方々に来ていただくタイミングを既に逸した(p.380)」という指摘に、わたしも同意をする。ここまで労働者の賃金が低く、それよりも低い賃金で技能実習生に奴隷労働をさせるような国に誰が来たがるのだろう。そして、途上国も少子化が進みつつあるのだから、好き好んで英語も使えない日本に来るわけがない。

子孫が生き続け、国や社会が続いていくだろうという目測は、単なるファンタジーだったようだ。人類はいずれ終わる。少なくとも、今のような世界が続くという保証はどこにもない。

正直なところ、人類の嘆きも悲しみも、いつかは終わるのだと思うと、気が楽になったのも事実である。

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