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#映画感想文『ブルー・バイユー(Blue Bayou)』(2021)

映画『ブルー・バイユー』を映画館で観てきた。

監督・脚本・主演はジャスティン・チョン。彼は韓国系アメリカ人の二世である。上映時間は118分で、2021年製作のアメリカ映画だ。

原題は『Blue Bayou』で、青い入り江、という意味だ。わたしは、カタカナから、Blue by youと頭の中で誤変換しており、「あなたのそばにいるとブルーになる」などと解釈してしまっていた。

ちなみにディズニーランドに同じ名前のレストランがあり、検索すると、「予約できた!やった」とか「今年、一番うれしかったこと」などという歓喜の言葉が出てくる。わたしはディズニーランドが嫌いなので、その素直さがうらやましく感じる。

ジャスティン・チョン演じるアントニオは、三歳のときに韓国から養子に出され、里親のもとを転々とし、大人になった。タトゥーの彫り師として働いており、おそらくきちんとした教育は受けていない。そんな彼はシングルマザーのキャシーと出会い、結婚をする。映画の冒頭で、キャシーはアントニオの子どもを妊娠していることが判明する。夫婦は喜び、連れ子であるジェシーは、親の関心が赤ん坊に移り、自分は捨てられてしまうのではないかと不安に思っている。そんなジェシーをアントニオは優しく見守る。よき父親でありたいと彼は願っている。

そんななか、彼には市民権がなく、強制送還の対象であることが明らかになる。2000年の移民法改正以降に、養子になった子どもたちには市民権が付与されるが、それ以前にやってきた人たちは、里親が市民権を取らせていなければ不法移民(不法滞在)扱いになってしまう、ということらしい。これは、どう考えてもひどすぎるではないか。養子斡旋業者が、民間だったとしても、その活動を制限しなかった政府にも問題がある。

弁護士が「1980年代の養子斡旋にはいろいろと問題があった」という。アントニオも、その時期に養子に出されており、彼らは2022年現在40歳前後なのだ。つまり、ずっとアメリカで暮らしていたのに、生まれた国に戻されるのだ。この残酷さには戦慄する。わたしは、そんな状況に耐えられるだろうか。

そして、アントニオは韓国人の母親に捨てられた事実にずっと苦しみ、それがトラウマになっている。養子になりたくて、養子になる人などいない。

この映画を観たあと、まず、思い出したのは、ミア・ファーローの養女で、のちにウディ・アレンの妻となったスンイのことだ。彼女の内心はどのようなものなのだろう、と何度か考えたことがある。ウディ・アレンは、どう考えてもよい父親とは言えない。しかし、養子という不安定な身分で、少しでも安定したいと考え、庇護してくれる身近な男を夫にしてしまった、という気もするのだ。そんな彼女を誰が責められるだろう。

そして、ラスト5分で、映画館の中で、泣く人、鼻をすする人が続出した。みんな泣いていたのではないか、と思った。わたしも、びっくりしながら、泣いていた。

そして「自分で作る家族は選べるんだ」という監督のメッセージは力強かった。



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