#映画感想文『ベルファスト』(2021)
映画『ベルファスト』(2021)を映画館で観てきた。
製作・脚本・監督がケネス・ブラナーで、ジュード・ヒルが演じるバディが主人公。
2021年製作、上映時間は98分、イギリス映画。
ケネス・ブラナーはこの映画でアカデミー賞の最優秀脚本賞を受賞している。
あまりにかわいい映画で、61歳のケネス・ブラナーまで抱きしめたくなってしまった。久々に、映画館に行ってよかったと、翌日も、その翌日も、思い出して、にやにやしてしまう作品だった。
主人公バディがどの場面でも輝いている!
少年の表情のみずみずしさ、ぎこちない歩き方も、癇癪を起したりするさまも、すべて愛らしい。席替えの気まずさも、笑ってしまう。
テレビで映画を観るときも、舞台鑑賞でも、もちろん映画館で映画を観るときも、少年は口を開けて夢中になって見る。それはケネス・ブラナーの原体験、映画的体験が回顧的に再現されているのだろう。
夢は世界一のサッカー選手になることと、キャサリンと結婚することなのだけれど、バディが好きなものは「物語」なのだ。
ケネスブラナーのセルフオマージュなのか、自己引用として、監督をしていた作品のコミックの『マイティ・ソー』、クリスマスプレゼントにはアガサ・クリスティの本も出てくる。(サンダーバードのコスプレも、めちゃくちゃかわいかった。)
感情が爆発するシーンが印象的だった。「言葉も変えたくないし、神様も変えたくない」と泣きながら、訴える少年に思わず、わたしも泣いてしまった。わたしも、転校して環境が変わることに耐えがたい苦痛を感じていたことを思い出した。
お調子者の女の子(彼女も最高)の家来のようになって、図らずも暴動に参加してしまい、洗剤を自宅に持ち帰る。お母さんに「It’s biological.」と言い訳をするさまも、宇宙一かわいかった。
ケネス・ブラナー監督のインタビューを読むと、キャスティング、つまり役者の生まれ育った土地にもこだわったのだとよくわかる。
そして、切ないのベルファストを出たその後のケネス・ブラナーの人生だ。映画では一切描かれていないが、今回が初めて語るような経験だったらしい。
ケネス・ブラナーがようやく今になって語れた。つまり、懐かしんでいるのではなく、記憶を解きほぐしている段階なのかもしれない。不思議とノスタルジックな甘ったるい感じはなかったし、子役で金儲けしてやろう、といういやらしさもなかった。
主人公のバディは、前に出過ぎることもなければ、人に意地悪したりもせず、いつも素直な子どもで、本当にまぶしかった。それは、両親だけでなく、自然と祖父母や近所の人に育てられた結果なのかもしれない。
ケネス・ブラナーの中にある子ども時代の記憶と、ケネス・ブラナーの理想の子どもが合わさったのが、バディなのではないだろうか。
主人公のバディを演じたジュード・ヒルを見つけられた時点で、この映画の成功は決まっていたのではないか。彼が、これから、ぐれて大変な人生を歩む可能性もゼロではない。彼がやさぐれてしまったとしても、わたしは言いたい。
「ベルファスト、最高だったよ。君は、世界一の役者だよ」と。
配信でも何でもいいから、ぜひ観てほしい。もう一回、観に行きたくて、うずうずしている。
追記
・出稼ぎでロンドンに向かうお父ちゃんの背中を2階の窓からじっと見つめて、見送るシーンも、めちゃかわいい
・お父さんとお母さんは、おそらく町で一番のイケてる二人が結婚したのではないのか。
・エンドロールでも、結構大きな文字で出てきたヘアメイクの吉原若菜さんのインタビューも見つけた。彼女が初参加した映画作品は、ケネス・ブラナー監督の『魔笛』だという。人間の縁というのは、つながっているのだ!
・あと、頭の中でずっと『Everlasting Love』が流れている。
・おじいちゃんの教えに従い、数字を紛らわしく書くことを覚え、「数字の書き方には改善の余地があります」と先生に指摘されるもシーンも最高だった。
チップをいただけたら、さらに頑張れそうな気がします(笑)とはいえ、読んでいただけるだけで、ありがたいです。またのご来店をお待ちしております!