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映画『20センチュリーウーマン』(2016)の感想

映画『20センチュリーウーマン』を見た。

原題は『20th Century Women』で、直訳すると『20世紀の女性たち』ということになるだろう。

『20センチュリーウーマン』は、アネット・ベニング、エル・ファニング、グレタ・ガーウィグと、なかなか個性的で強烈な女性キャストが揃っている。その彼女たちに囲まれているのが、ルーカス・ジェイド・ズマンが演じるジェイミーである。2016年製作、上映時間119分のアメリカ映画だ。それだけでなく、A24製作ではないか。(道理で、わたし好みなわけだ。)

2022年4月22日より、マイク・ミルズ監督の新作の『カモン カモン』が公開されるので、予習として見ておこうと思ったのだ。『ベルファスト』に引き続き、2020年代のモノクロ映画だ。

冒頭のスーパーの駐車場で車が炎上するシーンから、心を奪われた。カット割り、シーンの繋げ方、台詞のひとつひとつが、わたしの弱いところをついてくる。

自信満々のシングルマザーではいられないお母さん。息子にどう接していいのかわからず、他人に頼って解決しようとしたり、自分自身が男性とどう付き合っていけばいいのか悩んでいる50代半ばの一人の女性。

このような映画を観ると、30代でも、40代でも、悩みは尽きないのだな、と励まされると同時に気が遠くなる。ただ、悟ったふりや、どうでもいい、という態度でいても、幸せにはなれない。時の流れに身を任せるしかないのかもしれない。

「この映画の全部が好き!」と万歳してしまった。そんなわけで、マイク・ミルズ監督を調べたら、ミランダ・ジュライの旦那さんであることが判明!

なってこった! わたしはミランダ・ジュライも大好きなのだ。

(というか、あんたが旦那だったのか、という感じ)

わたしは、この夫婦の作るものが全部好きかもしれない。

ただ、ミランダ・ジュライの描く痛みの方が、わたしにはより痛い。身をもって痛い。映画と小説、どちらもそうだ。

「セックスをしても全然気持ちよくないけれど、相手の体臭を思う存分嗅げるからいいのだ」というジュリー(エル・ファニング)の老成した雰囲気、好きでもない男と寝て、好きでもない男に振られてブチ切れるフェミニストのアビー(グレタ・ガーウィグ)、どちらも素敵だった。さみしさを埋めるだけの相手は、相手も同じだという現実。

ジェイミーは女性に翻弄されながらも、自分一人で考え続ける。みんな、狡さや打算がないわけではないけれど、邪悪ではない人たちが、どう生きていくべきかを考えている作品だった。

このような作品を観ると、自分の頑なな潔癖さのせいで、いろいろなものを逃してしまっていたような気がする。一方で、それがわたしを守っていたという側面があることも否定できない。致命的な傷を負わないかわりに、何かを得ることもできなかった。それがいいのか悪いのか、よくわからない。

さあ、『カモン カモン』も、観に行こう!

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