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ファッションと美容に対する欲望

ここのところ、ファッションと美容に全然興味が持てない。

もちろん、2020年の新型コロナウィルスの流行が始まりであったことは間違いない。

どこかに出かけてはいけないし、新しい人に会ってはいけない。

だから、ばっちりメイクをして、新しい服を着て、自分をよりよく見せる必要もない。

だんだん、ファンデーションでマスクが汚れるのも嫌になり、メイクは最低限で済ませるようになった。

そのうえ、未曽有の不況の中、失業を予定しており、散財している場合ではない。

Amazonでワンピースを延々と検索したり、UNIQLO店内を漫然と歩いたりしていない。薬局で美容マスクシートを買うこともなくなった。付録付きの雑誌を買うこともなくなった。

きれいだと思われたいとか、モテたい、とか思わなくなってきた。

むしろ、オシャレしなくても、わたし、かわいいし、それなりにモテるし、と開き直り始めている。

いや、わたし、かわいくなくても、モテなくても、よくね? わたし、最高じゃん、みたいな駄目な自己肯定感の塊になっている。

これは、他者の視線を欲望しなくなる。これは結構、画期的なことかもしれない。

女は見られている。視線に晒されることが10代、20代は嫌で嫌で仕方がなかった。

あるとき、中村うさぎさんだったと思うが「わたしは毎日、女装をしているのだ」とエッセイで書かれていて、目から鱗が落ちた。

そして、わたしも「女装」を楽しもうと思った。スカートが抵抗なく、はけるようになり、花柄のワンピースも着られるようになった。女だから着るのではなく、女のコスプレ、「女装」しているのだと思えば、着られるのだ。感覚とは不思議なものだ。抵抗感や違和感がなくなり、着たいと思った服を手に取るようになった。

「女」という役割を演じることを楽しんでいたのだが、それも、まあ、もういいか、という気がしている。ある種の油が抜けたような感がある。

愛されメイク、モテテクニックとか、だからどうしたんだ、と見向きもしなくなった。エロい唇にしようとか全然思わないし、色気を出そうとかも、まったく考えなくなってしまった。

「男性が引く女性の行動30」みたいな記事をクリックすることもなくなった。

(つうか、女が男の行動にドン引きしていることのほうが、圧倒的に多いだろう。記事にしても、ページビューが稼げないから、やらないのだろう。男性は反省なんかしませんからね笑)

古びた服は雑巾にして、使わなくなった化粧品やメイク道具は処分した。

自分を削ぎ落すような感覚だ。健康が一番で、他人の評価なんか要らない。

80年代の糸井重里の「ほしいものが、ほしいわ。」という、欲望を欲望する、というループから脱出したのだと思うが、これって、資本主義とはものすごく食い合わせが悪い。

特に美容はコンプレックスビジネスと呼ばれたりもする。それは儲かるのだろうけれど、脅迫めいた押し売りに近い。

コロナ、中年、失業と、キーワードでまとめると悲惨なのだが、本人としてはそれほど悲壮感はない。

人生をリセットするのではなく、仕切り直すチャンス、という感じだ。

「欲しいものが何もない」の先に何があるのか、わたしにはまだわからない。

(中村うさぎさんのエッセイはすべて名著です)






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