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映画『ドリームプラン』(2021)の感想

映画『ドリームプラン』を映画館で観てきた。原題は『King Richard』である。

プロのテニス選手のビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹の物語で、二人がトレーニングを積み、ヴィーナスがプロになるまでの過程が描かれる。父親の教育と母親の頑張りが中心で、二人の悪戦苦闘がメインだ。

主演・製作はウィル・スミス、監督はレイナルド・マーカス・グリーン、脚本はザック・ベイリン、144分、2021年製作のアメリカ映画だ。

リチャード・ウィリアムズは、テニスの経験がなく、自己流と独学でテニスを娘たちに教える。いつも、短パンなのが、すごく気になるのだが、おそらくポリシーがあるのだろう。

原題が『王様リチャード』であるため、暴君っぷりが描かれるのかと思いきや、「意外とまともだったかも」という印象だ。

リチャードは、勝利至上主義が嫌いで、勝ったからといって、はしゃぐのはみっともない、自慢してはならない、謙虚になれ、と娘たちに説く。それは敗者を辱めるな、というメッセージであると同時に、敗者であった自分、敗者になる可能性のある自分をひどく恐れているようにも見えた。

次にリチャードは、娘たちが成功できるかもしれない、という希望を抱きながら、挫折してドラッグや暴力の世界に行ってしまったらどうしよう、と起きてもいないことを心配する小心者でもある。成功への執着と成功への恐れが並行して存在する。

そして、勉強を疎かにしなかったことも、いい親だと思う。テニスさえできればいい、テニスだけやっていればいい、という親もいる。それは、やはりリスキーだと思う。勉強する習慣があれば、何かに挫折してもほかの道に行ける。

このお父さんは、いいお父さんではないけれど、悪いお父さんでもない。前妻の子どもたちを見捨てている、という酷薄さはあるが、再婚相手の連れ子たちをイジメたりはしていない。

ビッグマウスで人を翻弄したり、ときに疑心暗鬼になってわがままになったりもする。黒人であることを理由に差別されること、攻撃されることも、わかっているので、急に慎重さを見せたりもする。怖くて娘の試合を直視できなかったりもする。

見る前の予想では、もっとコメディタッチであるか、あるいは娘たちが父親の支配から、葛藤を経て自立していく過程が描かれるのだと思っていたが、そこまではっきりとしたニュアンスはなかった。

まあ、ウィル・スミスのための映画と言われれば、そんな感じもする。

ウィル・スミスは賞を取ることに対して貪欲で、それが空回りしているのかな、と感じることもある。さて、2022年のオスカーは獲れるのだろうか。

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