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#映画感想文203『エンドロールのつづき』(2021)

映画『エンドロールのつづき(原題:Last Film Show)』(2021)を映画館で観てきた。

監督・脚本がパン・ナリン、主人公のサマイをバビン・ラバリが演じている。

2021年製作、112分、インド・フランス合作である。

主人公のサマイは、列車の乗客にチャイを売る仕事をしている。カーストはバラモンであるものの、父親は兄弟に騙され牛を奪われ、チャイを売って生計を立てている。9歳の息子であるサマイが売り子として頑張っている。

ある日、家族で映画を観に行き、サマイはすっかり映画に夢中になってしまう。最初はチケットを買って入っていたが、チャイの売り上げを毎回くすねるわけにもいかず、映画館に忍び込むが摘まみだされる。そこで出会ったのが、映写技師のファザルで、彼はサマイの母親の弁当をいたく気に入り、弁当を交換条件に彼を映写室に招き入れる。

サマイの特別なところは、映写室から映画を学ぶだけでは飽き足らず、フィルムの仕組み、映像とは何か、光と闇、投影とは何かといった映画の根本を知ろうとしていく。その学びの過程が友情とともに描かれていく。映画のモチーフはフィルムそのものなのだ。

そんで、みんな思ったことだろうけれど、サマイがマジの映画泥棒になってしまう展開には驚いた!(笑)

そして、終盤では、唐突にフィルムと映写機が廃棄される。映画館にはノートパソコンとタブレットが導入され、フィルムはデジタルデータ化され、プロジェクターが使われるようになったのだろう。(廃棄されたフィルムは、再利用され、女性たちのブレスレットになったらしい)原題の『Last Film Show』とは、最後のフィルム映画の上映という意味だったのだ。

ただ、この作品の舞台はインドの片田舎とはいえ、一体いつの時代を描いたものなのか、と混乱してしまった。ITやデジタル機器の導入が急すぎる(笑)

サマイの先生が「現在のインドにカーストはない。あるのは英語ができる層と、英語ができない層だ」という話にまたもやドキッとする。日本では、「インド人は英語ができるから」なんてこともなげに言うが、そのように言われているインド人も英語と格闘しているのだなと再確認した。

映写技師のファザルが夢中になったサマイのお母さんのお弁当だが、料理をする手元が映されるシーンが何度かあった。そのシーンの野菜の色がとても鮮やかで、そして監督の出身地であるグジャラート州の空の色、田園風景がとても美しかった。それこそが映画の光のマジックなのだと思われる。

本作は『RRR』に競り勝ち、アカデミー賞の外国語作品のインド代表に選ばれた作品だという。描かれていたのは映画愛というより、貪欲に学び、自分でやってみることの大切さだと思われた。

「見るのとやるのは全然違うよ!」と9歳の少年が教えてくれているかのようで身が引き締まった。

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