見出し画像

その文章、消化に良いですか? :ゲーム説明書の文章力アップ術(ゲームのルールの伝言ゲーム)

こちらはアナログゲームマガジンの連載「ゲームのルールの伝言ゲーム」の19回目、途中から有料となります。文字数は約3,500字です。

はじめに

今回から、「ゲーム説明書の文章力アップ術」と題して、テクニカルライティングについて語っていく予定です。詳しく書きたいため、6回以上に分かれます。
今回は、文章の目的、そして読む時の心理のお話です。

説明書の目的を考える

アナログゲームの説明書は、実用文の一種です。実用文の特徴は、前回も挙げましたが次の3点です。

【実用文の特徴】
・わかりやすく効率的に(簡潔で明快)
・正確に
・読み手の行動を促し、文章の目的を達成する

参考:一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会 『日本語スタイルガイド』

具体的に言うと、説明書という文書の目的は、次の2点でしょう。
①なるべく正確に、ルールを理解してもらう
②読み手の心を動かし、そのゲームを遊ぶ気になってもらう

これらの目的を達成する内容であれば、時間をかけずに作った、シンプルな説明書でも良いでしょう。

逆に、時間をかけて、図やイラストを入れ、色やデザインにこだわったとしても、内容に不足があってルールが伝わらず、ゲームが遊ばれなかったとしたら、目的を果たせません。

読む人のことを考えて書いた文章にしなければいけません。

文を読むのは理屈だけじゃない

しかし、です。ゲームを理解するのに必要な情報が全て書いてあれば、読み手が必ず読んで、そして理解してくれるものでしょうか。

こんな文章でも。

それよりも、こういった説明書の方が、読みたくなりませんか? また、分かりやすくないでしょうか?

『読む心・書く心』という本によると、「文章を読む」ことは、

情報が「一方的に入ってくること」ではなく、「双方向の流れ、もっている知識と入ってくる情報のやりとりによって、書かれている文章の内容世界を読み手の心の中につくり上げていく過程」

秋田喜代美 2002 『読む心・書く心』 北大路書房

だと書かれています。

どんなに面白いゲームで、どんなにルールがしっかりと書かれた説明書であっても、

・分からない専門用語がたくさん出てきた
・パッと見て読みづらそう
・文量が多く、読むのが大変そう
・不快な表現があり、読みたくない気分になった

読み手がこう感じた時には、読み進めにくくなるでしょう。

読み手のアナログゲーム経験や好み、知識の差は人それぞれです。それでも、読まれるために、書き手側としてできるだけのことをしたいものです。

認知心理学で見る「読む・わかる」

では、読み手が「わかる」とはどういった仕組みなのでしょうか。
その「わかる」を調べているのが、認知心理学です。

ここから先は

2,460字 / 1画像
7人以上のライターが月に1本以上、書いています。是非、チェックしてください。

アナログゲームマガジン

¥500 / 月 初月無料

あなたの世界を広げる『アナログゲームマガジン』は月額500円(初月無料)のサブスクリプション型ウェブマガジンです。 ボードゲーム、マーダー…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?