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未来の学校をつくる1〈チャレンジスクールの誕生〉

 東京都の「チャレンジスクール」は、不登校や中途退学などでこれまでの学校生活では個性や能力等を十分に発揮できなかった生徒でも、安心して存分に学ぶことができる時と場を提供する高等学校です。
 最初のチャレンジスクールである東京都立桐ケ丘高等学校は、今から21年前に開校しています。その当時は、長引く不況によってニートやフリーターが社会問題となり、不登校や中途退学がクローズアップされ始めていました。
 こんなに不登校の生徒が増えたのは、単に本人の問題だけではなく、学校や社会といった仕組み自体に課題があるのではないか、と考えました。世の中では「みんなで一斉に」という考えから、「一人一人の生き方に合わせて」という考えに変化していました。学校も、これまで「みんなで一斉に」という考えから、登校時間や時間割や授業や校則といった仕組みが作られてきましたが、こういった仕組みをもっと緩やかにし、「一人一人の生き方に」合わせられないだろうか、という様々な試行がされていました。その試行の一つがチャレンジスクールだったのです。
 高等学校のほとんどは通常の課程(全日制課程)をとっていますが、それが「みんなで一斉に」の学校であって、それでは世の中の変化についていきにくい。そこで、チャレンジスクールは定時制、単位制、総合学科の高校として作られました。定時制、単位制、総合学科のメリットを考えてみます。
 まず、定時制は通常の課程以外の時間帯で実施される課程です。ちなみに通信制は登校せず通信で授業を行う課程です。定時制であれば、登校時間は8時半に限らずもっと柔軟に登校できるかもしれません(実際は午前部、午後部、夜間部の三部制となりました)。また、東京都のルールでは生徒数を1クラス30人以内に抑えられ、一人一人に目が向けやすくなります。ます。校則も定時制だということで原則的なルールにできそうです。このように定時制にすることで、これまでの「みんなで一斉に」というスタイルではない学校ができそうです。
 次に、単位制であれば、たった1科目の単位を落としただけでも進級できない、ということもありません。通常の課程では学年制をとることが多く、中学までと同じようにみんなで進級し、みんなで卒業することを前提としていますが、単位制の学校はどちらかというと大学と同じように、一人一人が自分なりのカリキュラムを履修し、卒業が認定されます。また、前期だけの履修で単位修得できたり、夏休みの間に集中講義を受けて単位を取れたりする制度も作れます。大学の講義やオンライン講義を受けたり、英語検定や簿記検定に合格したりすれば単位が認定される学校外の学修の単位認定制度も作れます。
 最後に、総合学科であれば、たくさんの選択科目の中から選ぶことで、生徒一人一人に、自分の得意な科目を伸ばせるオリジナルの時間割を作ってもらうことができます。講義型の授業を減らし、体験的な学びを多く取り入れることができます。今となっては当たり前ですが、探究的な学びを提供しやすいカリキュラムを作ることもできました。
 こうして、「みんなで一斉に」という考え方でなく、「一人一人の生き方に合わせて」という考え方をもとにした新しい学校として、定時制、単位制、総合学科という仕組みを持つチャレンジスクールが誕生しました。

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