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リップクリームに思いを馳せて

 ここに1本のリップクリームがある。正確には『メンソレータム薬用リップスティック』。ロート製薬株式会社が販売する緑色の本体と白キャップの、日本でもっとも王道なリップクリームだ。

 内容量は4g、1円玉が4枚分。リップクリームの値段が80円くらいのはずだから、およそ20分の1にボリュームダウンしたことになる。ただ1円玉では僕の唇に潤いをもたらさないので、その分の付加価値はあるだろう。もっとも1円玉が80枚あったところで、生活が潤うこともないのだが。

 どうやら大阪市の生野区という場所で生産されているらしい。そこは大阪鶴橋市場があるとこだそうだが、その市場が初耳なので馴染み深いとは言えない。そんな場所から生まれたリップクリームが、手元にあるのは不思議な気分だ。

 ずっと勘違いをしていた。リップクリームは美容品と思っていたが、医薬品という扱いであった。僕は軽度のアトピーを持ってるので、リップクリームの他にも何種類か塗布剤を利用している。気づいていなかったが、僕は薬漬けの生活を送っていたのだ。恐ろしいが、今のところ良い影響しかないので「クスリバンザイ」である。

 どうして僕らはリップクリームを使うのだろうか。なかったとしたら、どんなデメリットがあるのだろうか。

 医薬品であるので、本来の目的は唇の乾燥やアカギレを修復、防止すること。しかし顧客視点で語るとしたら、僕らはリップクリームによって「痛みの緩和」と「好印象」、そして「柔らかいキス」を買ったことになる。

 痛みの緩和は言うまでもない。好印象というのは、残念ながら唇が乾燥している人の印象は、そうでない人より低くなってしまうだろう。あるいは女性の場合は、リップクリームに色が入っているので、おしゃれとして自身の魅力度をあげるのに一役買っているに違いない。

 またキスをするとき、やはり潤っているほうが満足度が高くなる。高くなるというよりは、低くなる確率を下げることができる。誰だって柔らかいほうが好きだ。「いや、私はカサカサの唇が好き!」という人がいたら申し訳ない。

 なるほど、リップクリームは僕らの健康面だけでなく、人間関係や恋愛においても支えてくれているということになる。いままでその重要性に目を向けてこなかった自分を恥じてしまそうだ。

 これからは、感謝をしながらリップクリームを塗ることにしよう。

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