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はじめての詩

題はまだないのです。

昭和のビルの間を通って
電車に朝日が差している

すこしばかり
オレンジ色を帯びたまま

無限の層になって
光はつねに揺れている

それはわたしも同じ
なぜなら
わたしはつねに無数に存在するから

いま、ここに揺れているわたしは
いままでに訪れたすべての海辺にいる

トーストの目の前に
釣り人と
学生と
飼い犬の
間に
ひとりでいる

電車がわたしを揺らすのではない
わたし

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輪郭

輪郭

わたしは
あなたの輪郭をなぞって
あなたを存在させてみせたい

見えないあなたの
毛先を撫でて
まぶたを拭い
ほほと
首筋の丸みに触れたなら
あなたはここにいる

たしかにあなたはここにいるのに
あなたの喉に触れようとすると
指先が
ワイヤーで吊られたように
こわばってしかたがない

それでも
わたしがあなたに触れようとするので
ワイヤーが
指先から第二関節に伝って割れてゆく

薬指
(と呼んでよ

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食事

食事

拒食は消極的な自殺と聞いたことがある
なるほど、食べなくてはひとは死ぬ

それでいて食は任意である

ひとはおのおのの時間に
おのおのの食事を取る
そこに自分自身を見出すのは容易だ

まさに休みなく
酸素を摂取するすべての生きものと
ここでこのテーブルで
この世にひとつのハンバーグを前にする
たったひとりのわたしは
あたかもべつものだ

しかし
任意に生きるわたしと
不随意に生きるわたしは二重で

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世界へのチューニング

世界へのチューニング

毎朝
シャワーを浴びる というルーティーンで
わたしは世界と折り合いをつけている

閉じかけの目はそのままに
衣服を脱ぎ
一枚ごとに日々のルーティーンへ迫る

もっとも動物らしい姿になり
なぜか重くなる体を浴室へと持ち出す

やっとシャワーに温水が届き
周辺の時空間をいっときに変化させる
その一瞬おきに
わたしはすこし救われる思いがする

湯気とともに
細やかな粒子が浴室を包んだら
わたしの体も

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