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ブックカバーチャレンジ-1

FBでミスターマツモトからバトンを受け取ったブックカバーチャレンジ。
せっかくなのでnoteに残しておこうと思います。

〜DAY1〜
【長距離ランナーの孤独/アラン・シリトー/1959】


大学時代英米文学を専攻していた私は、本来ならスタインベックの「怒りの葡萄」で卒論を書く予定でした。私が受講していたクラスの中でもとびきり厳しくて怖い先生がアメリカ文学担当のK先生でした。長身に深海魚のような顔、いつも消えない眉間のしわ。K先生の授業だけはピリリとしていてほんとうに怖かったけれど私はその緊張感が好きでした。「1日が24時間では足りない」が口癖で、教授だから当然なんですがめちゃくちゃ勉強されていてとにかく研究熱心な人でした。そんなK先生の指導でしかも難易度の高いスタインベックの大作で卒論を書くという選択はかなり勇気のいることで荒波に飛び込むような気持ちで決心したのを覚えています(実際このチョイスをした生徒は2人とか3人とか、かなりの少人数でした)。そうして就職活動と並行しながらさあいよいよ始まっちゃうなあと卒論の緊張感に身構えていた冬の日。びっくりするようなニュースが。

K先生が死んだ。

!!??
殺されても死なないようなあんな堂々とした人が。しばらく放心状態でした。あとで聞いた話ではキャンパス内でぶっ倒れていたのを発見されたそうです。心臓発作による全くの突然死でした。K先生のお通夜は私の住むエリアではめずらしいほど大雪の降った日で学生たちはみんな泣いていました。

そんなわけで唐突に生涯の師となる予定だった先生を失い、卒論の計画は白紙に。救世主として指導してくれることになったスコットランド人のA先生(イケメン)のもと、アラン・シリトーのデビュー作「土曜の夜と日曜の朝」で卒論を書くことになり無事に卒業できました。「長距離ランナーの孤独」は同時期に発表された短編集の中の一作です。短いので読みやすいため、あまり詳しく書く気はないですが20歳そこそこの私には、水のようにぐんぐん入ってきた作品でした。イギリス人が持つ反骨精神、踏まれても立ち上がるしぶとさ、長いものに巻かれない強さ。スカッとする作品です。
映画にもなっていますが今原作を読んだらどんな感じだろうと思います。

先のK先生の授業で、「ここの意味、わかる人!」って刺すような緊張感の中、誰も答えられなかった行間に関する微妙な内容に答えることができたあの瞬間、私の大学での最高の瞬間でした。その人の生まれてきた国の歴史や時代背景を知ることで一見理解できない行動が理解できるようなこともあります。私が英米文学を学んだ意味はまさにそんなとこでした。


ブックカバーチャレンジはつづく。



#推薦図書   #ブックカバーチャレンジ #イギリス文学 #アラン・シリトー





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