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学校って何だろう?〜絵本からも考えてみた〜

去年の春、地元の岐阜市に興味深い中学校ができた。多様性が認められる学校だという。
●「東海地方初の公立不登校特例校が開校 岐阜市草潤中」
https://www.asahi.com/articles/ASP476QN4P47OHGB006.html

その開校式に、理想の学校として、京都大学総合博物館の塩瀬さんが紹介されたのが、絵本『バーバパパのがっこう』に出てくる学校だ。

●「岐阜市に「不登校児専門公立中」開校。除幕式で会場を涙させた京大准教授のスピーチ全文」https://news.yahoo.co.jp/articles/28bdee3a33dc177dc95909d7f669b8038d179d5b

(抜粋)重要なのは「学びの選択肢がたくさんある」こと。…好きな場所で学ぶことができたり、好きなことを学ぶことができたり、学ぶ内容を選べたり、さらには学びの設計図である「時間割」を先生と一緒につくることができる学校こそが、子どもたちにとって本当によい学校なのではないか、と思うようになりました。

バーバパパの考える幸せな学校

バーバパパの絵本の最後は、こんな言葉で終わる。

「なによりもすばらしいのは、みんな、みんな、しあわせにやっているということです」

学校が、一人一人幸せを感じられる場所になれたら、なんて素敵なことだろう。

京大の塩瀬さんのスピーチに出てくる、自分の時間割を作れるということは、自分の好きなことを分かっているということと同義だ。好きなことを自分のコントロール下で組み立てられるようになったら、それは今後生きていく上でとてつもなく大事なスキルになる。というのも、「自分の時間割を作る=自分を知っている=自分を自分で満たし、認められるようになる」ことといえるだろうから、まさに人生ご機嫌に自分と付き合っていくきっかけになると思うのだ。そして、そんな時間割を作れる場は、子どもにとっても大人にとっても理想的だと思う。

自分で自分の時間割を作るって・・・

ただ、ここで思ったのは、自分の時間割を作るって、とても難しいことだよなぁということ。これまでの教育を、書いて文字通り、受けてきた私たちにとって、用意された時間割がなくなってしまったら、不安さえ覚えるかもしれない。

まず、時間割の項目にどんなものがあるのか、どんなものを候補とするかを考えることから始めなければ・・・そのためには、自分の感覚を取り戻し、素直にやりたいことと向き合う必要があるかもしれない。素直であるには、どんなことがあってもなくても、そのままの存在を認めてくれる大人や仲間が近くにいるといい。そして、時間割となりうる選択肢をたくさん知っている、今を楽しんでいる大人たちがいるともっといい。

最近よく聞く、音声メディアVoicyのパーソナリティの中に、「粋な女子道」という、美しい生き方のコツを伝えていらっしゃる稲垣紗織さんという方がいる。

その方が自分を顧み、自分が変わった瞬間として上げられていたのは、当時小学5年生の男の子が「大人になってもっと大変になるのなら僕は大人になりたくない」という理由で自ら命をたってしまったというニュースだという。

楽しそうに生きている大人は一体どれくらいいるのだろう・・・若干耳が痛い。自分が心地よくいられる時間割を作ることって、大人にこそ必要なことかもしれない。

そういう意味でも、時間割を作る学校って、単なる自由さだけではない、面白みがある。

"自分が先生になる" 授業自体を作ってしまおう

自分たちの時間割を作った上で、こんなこともできるといいのでは?と思ったのが、子どもが先生になるということだ。大人はただ子どもより少し早く生まれて、少し地球で暮らしている時間が長いだけ。大人も子どもも先生になったり、生徒になったりできればいい。

理論的な話をすると、何かを学ぶときに一番身につくのは誰かに教えるときだといわれている。ラーニングピラミッドという考え方だ。得意なことを伸ばすには、得意なことを誰かに伝えること。それが循環しているような学校があったら、私はそこで学びたい。

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https://career-ed-lab.mynavi.jp/career-column/707 より抜粋

アメリカ国立訓練研究所の研究によると、学習方法と平均学習定着率の関係は「ラーニングピラミッド」という図で表すことができます。…ピラミッドの下に行くほど定着率が高いことがわかります。

旅したナージャが体験した異文化教室

大人も子どもも先生になったり、生徒になったりするためには、環境も大切だ。
そろそろ長くなってきて、絵本の話から逸れてきたので、絵本の話を持ち出してみよう。

絵本に「ナージャの5つのがっこう」というものがある。ご両親の転勤で作者が本当に通ったというロシア・イギリス・フランス・アメリカ・日本の小学校の違いが紹介されている。座席配置の違いに着目して、色んな教室の様子が描かれている。教育内容の違いの前に、座席配置の違いから「らしさ」が作られていくという指摘はとても興味深い。


●「ナージャが旅した世界の学校 座席から見えた教育思想」

https://www.kyobun.co.jp/commentary/cu20190311/

各国とも価値観が違い、前の国では良しとされていたことが、次の国では違うと言われる。自分の軸ができるまではつらかったのですが、こんなやり方もあるし、他のやり方もあると柔軟に考えられるようになりました。いろいろなやり方を知れたことで、自分に合うもの、合わないものもわかりました。

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https://www.ehonnavi.net/ehon/119890/ナージャの5つのがっこう/

いっそ、色々なスタイル(座席配置)を交互に試してみるというのも面白いかもしれない。記事の中にある、自分に合う・合わないを知れたという気づきこそが、学びの結果だとも思う。

自分の軸を見つけるための学び…そのためにできること

自由な学校がいいよね!と、自分も軽々しく学生時代に言っていたけど、こう書き連ねていると、自由って自分を知っていないと揺らいでしまう。

ナージャの言葉を借りると、自分の軸ができるまでの過程に寄り添うものが学びだといえるかもしれない。その自分の軸を知るお手伝いができるように、多様な選択肢を子どもたちにプレゼントすることが大人にできることなんだろうなと改めて思った。

手前味噌だが、今年は国内外、様々な国や地域の絵本を読もう。異なる時代背景の、多様な作者のものを。リアルで会うことが難しくてもオンラインだからこそ得られる出逢いもある。

"旅行へなかなか行けなくても得られる異文化体験を。より学びに貪欲に!" そんな一年の抱負を掲げて、この辺で終わりにしようと思う。そうして今年の終わりには、自分自身の時間割もできていることを願って。


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