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猫家系の娘

  まずは夫と初めてあった日のことに遡ってみる。テーマと少し離れる部分が少し長くなるが結果的に猫にたどり着くのでご容赦いただきたい。
  夫と私の馴れ初めはSNSだ。昨今では珍しくないのではないだろうか。偶然住まいが近く、私の職場が変わった時に「駐輪場がどこにあるのか分からない」という理由で、新しい職場近辺に詳しかった夫に実際に会って教えてもらったのだ。顔も何も知らない夫に会うことに抵抗はなかった。当時私はアマチュアでポートレートの被写体をしていたのでカメラマンと連絡をとり現地集合などで撮影して解散、という活動をしていたので慣れていた。夫の方はというと私みたいにSNSで何の活動もしていなかったので今に考えてみれば緊張していたのではないかと思う。
  待ち合わせした書店で実際夫と会って、ハッキリと抱いた感想がある。

  この人猫飼ってるな。

  猫を飼ってる方にはこの感覚が分かる人と特に何も感じず分からないという人がいるようだ。それは過去の私の狭い人間関係の中から導き出した法則でしかないので真偽のほどは定かではない。

  とりあえず夫は全身黒系の野暮ったいコーディネートで猫の香りをぷんぷんさせていた。
「あのさ、家で猫飼ってる?」と聞いてみた。
「えっ!?なんで分かるの!?」
  分からないでおらりょうか。そんなに匂わせて歩いておいて。実家が猫をたくさん飼っていたため猫の匂いがしていた夫も、後に私とペットを飼わず暮らし始めると匂いが消えていった。今は猫の匂いを嗅ぐのは義母が来訪した時くらいだ。
  私は小児喘息をもっていたため幼少期に犬や猫のペットを飼ったことがなく、本当のことを言うと猫の匂いも苦手だ。見るのは可愛いけれども触るのも飼育経験の無さが理由であまりできない。抱っこも無理。私がなぜ猫の匂いを知ってるのかというと猫を飼ってる友人がいて家に遊びに行った時のその匂いを覚えていたからというだけである。

  そんな私から産まれた娘はあらゆる点で夫の遺伝子が色濃く、まあそれとは勿論関係ないかもしれないが大の猫好きに育った。それなら猫を飼ってあげられればよかったが私は小児喘息は治って安心して暮らしていたところ今度は大人の喘息を突然発症。呼吸器科の医師には「大人の喘息は治らない」という宣告をされているし、住めば都な現住居はペットは禁止、しかして引っ越す予定もない。娘には可哀想だと思いはするけれども猫を飼えない理由が揃っている。結構所持していたぬいぐるみにも喘息を理由に数の制限を設けてさよならをさせもした。ぬいぐるみは持てず猫も飼えない。すまない娘よ。

  娘が小学生になり、通学路や買い物の通り道にはちらほらと野良猫がいる。野良猫に餌をやったりする資格のようなものがあるらしく、そういった人達がきちんと世話をしている野良猫だ。
「あっ!猫!」
  人懐っこい猫に出会うと夫も娘もひとしきり戯れる。娘はまだ少し怖がっているところはあるが片や夫は実家に猫を何匹も飼ってた猫マスター。夫が撫でると猫はころんとひっくり返りお腹を見せたり気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らす。
  私も控えめになら撫でてみたけれど、スリスリと足元に身体を擦り寄らせられると慣れない感覚にどうしても怖気付いて一歩、いや二、三歩ほど逃げてしまう。最近は諦めて触ってみることもやめてしまった。見るのは可愛いのに。

  そんな私達家族が揃って楽しめるのは動物番組。犬、猫に限らず色んな動物が出てきて三人揃って「可愛い!」とメロメロになっている。

  もしも。娘が猫好きの人と結婚できたら飼うことができたらいいと思う。その時々によって色んな表情や動きを見せてくれる猫。子供時代には叶えてあげられないのが残念だが、それならば将来への希望をこめて。
  娘が一人暮らしなど自立をして猫を飼ったとしたら、またあの何とも言えない猫の匂いが娘からするのだろう。それは娘の念願が叶った匂い。なんと素晴らしい匂いではないか。


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