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第26週 作家・歌人・漫画家 松谷みよ子

はじめに

第26週の作家・歌人・漫画家は 児童文学作家の松谷みよ子さんです。


子ども時代



松谷 みよ子(まつたに みよこ)さんは、1926年2月15日 松谷 美代子さんとして東京市神田区元岩井町(現・東京都千代田区岩本町)に4人きょうだいの末っ子としてお生まれになりました。

お父さんは社会派の弁護士で、無産政党代議士となった松谷與二郎氏です。

お父さんは11歳のときに交通事故死されています。

西巣鴨第五尋常小学校から東洋高等女学校に進まれます。

1943年に卒業されます。

社会人になられる


お父さんが既に亡くなられていたことや家の事情もあり大学には進まずに旧日本勧業銀行に就職されます。その後JTBで編集の仕事に従事されます。

1945年、東京への空襲がはげしくなって家族とともに長野県中野市に疎開されます。


児童文学者に


疎開先の長野で美代子さんは児童文学作家の坪田譲治氏に面会され、翌年1948年に東京で坪田譲治氏を訪ねて師事されます。そして児童文学を書かれるようになります。

1951年には童話集『貝になった子供』があかね書房から出版され、第1回児童文学者協会新人賞を受賞されます。


坪田氏が1951年に創立した児童文学のサークルびわの実学校にも美代子さんは参加され、以後びわの実会では坪田氏の引退後も責任編集などを担当されます。1997年3月から2007年11月まで、児童文学同人誌『びわの実ノート』全33冊を刊行されています。

結婚


1955年11月、人形劇活動を通じて知り合った瀬川氏と結婚されます。

そして同年12月にはともに人形劇団太郎座を創設されます。

民話研究

また1956年に瀬川氏とともに民話の研究を始め、共著で1957年に『信濃の民話』を上梓されています。


1960年の『龍の子太郎』は民話を再創造し、第1回講談社児童文学作品を受賞されます。

同書で1961年、第8回産経児童出版文化賞、翌1962年、国際アンデルセン賞優良賞を受賞されます。

また1961年脚色を夫の瀬川氏が担当し太郎座の第1回本公演で人形劇「龍の子太郎」が上演されます。

60年代の作品

1964年、『ちいさいモモちゃん』で第2回野間児童文芸賞、NHK児童文学奨励賞を受賞後、〈モモちゃん〉シリーズを続けて執筆されます。

そのうち「モモちゃん絵本」を除いた6巻が〈モモちゃんとアカネちゃんの本〉シリーズとしてまとめられると、1974年の『モモちゃんとアカネちゃん』で赤い鳥文学賞を受賞され、累計620万部のロングセラーとなりました。



童心社の編集長・稲庭桂子氏と1964年の「おはなしだいすき」の作品を取り上げ、乳児向けとして「あかちゃんの本」の作成を企画。1967年から70年まで『いないいないばあ』、〈あかちゃんの本〉シリーズとして『いいおかお』(1967年)、『もうねんね』(1968年)、『のせてのせて』(1969年)、いわさきちひろを作画に招いて『おふろでちゃぷちゃぷ』『もしもしおでんわ』(1970年)を出版されます。

70年代の作品

1970年には『日本の伝説』をまとめて講談社から出版されています。

1970年代半ば以降は「モモちゃん」シリーズ第6作『アカネちゃんとなみだの海』(1992年、第30回野間児童文芸賞受賞)を発表されます。

1972年、地元の練馬で1私設文庫「本と人形の家」を設けられ読者としての親子にも触れる 場所を作られます。

また自身の離婚を『モモちゃんとアカネちゃん』に取り入れ、子どもが体験する両親の離婚として児童書で初めて取り上げられます。

「お月さんももいろ」事件

1973年「お月さんももいろ」事件が起こります。

1973年、美代子さんが書かれた童話「お月さんももいろ」(ポプラ社)が部落解放同盟から「差別を助長する作品」とされ、抗議を受けた事件です。

「お月さんももいろ」は、土佐の海辺に住む漁師の娘「おりの」と、山に住む猟師の若者「与吉」の物語である。おりのが与吉に贈った宝物の「ももいろさんご」を殿様の配下が奪う場面で、「横目と、その手のもん」が悪役として登場することが部落解放同盟から問題視されたそうです。

横目(横目付)もその配下の「手のもん」も江戸時代に処刑や刑務に携わった非人と考えられるため、「人間の美しさ、尊厳さを、差別を踏み台にして確立するのは許されない」というのが部落解放同盟の言い分であったそうです。

このため、「お月さんももいろ」の「横目」と「その手のもん」は省略され、あるいは「さむらい」「さむらいたち」と改竄されるに至りました。

旧版
はっと与吉はかおを上げた。いつのまにきたのか、横目と、その手のもんがぐるっとおりのをとりかこんでおった。横目いうたら浦奉行の配下で、そこらをみまわっとるおそろしいやつじゃ。その横目がじっと与吉をみおろしておった。
新版
はっと与吉はかおを上げた。いつのまにきたのか、浦奉行のさむらいたちが、与吉とおりのをとりかこんでおった。そのむこうに、こおりついたように村の人たちもかたまっておった。



ほかに、〈オバケちゃん〉シリーズ、戦争と平和をめぐる作品『ふたりのイーダ』に始まる〈直樹とゆう子〉の5部作があるそうです。

この〈直樹とゆう子〉シリーズで美代子さんはアンネ・フランクを取り上げ、『私のアンネ=フランク 直樹とゆう子の物語』(1979年)で日本児童文学者協会賞を受賞されています。

80年代の作品

1985年に『現代民話考』シリーズを始められ、柳田國男氏のフォークロア収集の影響のもとに現代の都市伝説や現代妖怪譚を収集されます。

この作品は、民俗学的にも評価されているそうです。


また1988年に出版された『屋根裏部屋の秘密 直樹とゆう子の物語』を書かれたのち、 九条の会に参加されています。

90年代の作品

1994年、『あの世からの火 直樹とゆう子の物語』で小学館文学賞を受賞。1997年に巖谷小波文芸賞を受賞されます。


2000年代の作品

2000年代にまたいくつかの民話についての本を出版されています。

『現代の民話 あなたも語り手、わたしも語り手』(2000年)、『異界からのサイン』(2004年)、『民話の世界』(2005年)を著されています。

編集を務めた『怪談レストラン』シリーズはアニメ(2009年-2010年)放映を経て落合正幸監督により映画化されました。


2015年2月28日、老衰のため東京都内の病院で死去されます。89歳でした。


主な松谷美代子さんの作品リスト


『松谷みよ子の本 別巻ー松谷みよ子研究資料』(講談社 1997年)「松谷みよ子全著作目録」に詳しいそうです。

1950年代
『貝になった子供』須田寿絵、あかね書房 1951 のち角川文庫
『かきのはっぱのてがみ』いわさきちひろ絵 、泰光堂〈ひらがなぶんこ〉1956
『ぞうとりんご』田代ともえ等絵 金の星社 1956
1960年代
『ひらかな童話集』戸田綾子等絵 金の星社 1960
『きつねのよめいり』瀬川康男絵 福音館 1960年 月刊絵本〈こどものとも〉53号、のち『こどものとも 傑作集』(1967年)
『龍の子太郎』久米宏一絵 講談社、1960 のち文庫
「モモちゃんとアカネちゃんの本」シリーズ(全6巻)(講談社) -
詳細は「モモちゃんとアカネちゃんの本」を参照
『茂吉のねこ』三十書房 1964 のち偕成社文庫
『まえがみ太郎』福音館書店 1965 のち講談社文庫
『ふうちゃんの大旅行』小峰書店、1966
『てんにのぼったげんごろう』偕成社 1967
童心社〈あかちゃんのほん〉1967-1970
瀬川康男絵
『いないいないばあ』 1967
『いいおかお』 1967
『あなたはだあれ』 1968
『もうねんね』 1968
東光寺啓絵
『のせてのせて』 1969
『おさじさん』 1969
いわさきちひろ絵
『おふろでちゃぷちゃぷ』 1970
『もしもしおでんわ』 1970
『ジャムねこさん』大日本図書 1967 のち講談社文庫
『コッペパンはきつねいろ』偕成社 1968
『ふたりのイーダ 直樹とゆう子の物語』講談社、1969 のち文庫
『むささびのコロ』童心社 1969
『くもだんなとかえる』ポプラ社 1969
『おひさまどうしたの』あかね書房 1969
1970年代
『ちびっこ太郎』フレーベル館 1970 のち講談社文庫
『日本の伝説』全5巻 講談社 1970 のち『日本の昔ばなし』として講談社文庫、『日本の民話』として角川文庫
『おおかみのまゆ毛』大日本図書 1971 のち講談社文庫
『オバケちゃん』講談社 1971 のち文庫
『木やりをうたうきつね』偕成社 1971
『センナじいとくま』童心社 1971
『まこちゃんしってるよ』講談社 1971
『松谷みよ子全集』全15巻 講談社 1971-72
『たべられたやまんば』講談社 1972
『朝鮮の民話』全3巻 太平洋出版社 1972
『さぶろべいとコブくま』童心社 1973
『お月さんももいろ』ポプラ社 1973
『つとむくんのかばみがき』偕成社 1973
『松谷みよ子のむかしむかし』全10巻 講談社 1973
『つつじのむすめ』あかね書房 1974
『黒いちょう』ポプラ社 1975 のち講談社文庫
『水のたね』講談社 1975
『にげだしたじゃむぱんさん』講談社 1976
『死の国からのバトン 直樹とゆう子の物語』偕成社 1976
『千代とまり』講談社 1977
『てんぐとアジャ』岩崎書店 1978
『私のアンネ=フランク 直樹とゆう子の物語』偕成社 1979 のち文庫
1980年代
『いたちのこもりうた』ポプラ社 1981
『一まいのクリスマス・カード』偕成社 1982
『おかあさんのにおい』講談社 1982 その他、〈ふうちゃんえほん〉シリーズ
『鯉にょうぼう』岩崎書店 1983
『ぼうさまになったからす』偕成社 1983
『あの世からのことづて』筑摩書房 1984 のち文庫
『おときときつねと栗の花』偕成社 1984
『現代民話考』全5巻 立風書房 1985-86(19版、–1996)のちちくま文庫 全12巻(2003-2004)
『キママ・ハラヘッタというヒツジの話』偕成社 1985
『鯨小学校 おじさんの話』偕成社 1986
『わたしのいもうと』味戸ケイコ絵 偕成社 1987
『とまり木をください』筑摩書房 1987
『現代民話考 第2期』全3巻 立風書房 1987 のちちくま文庫
『戦争と民話 なにを語り伝えるか』岩波ブックレット、1987
『屋根裏部屋の秘密 直樹とゆう子の物語』偕成社 1988 のち文庫
『松谷みよ子全エッセイ』全3巻 筑摩書房 1989
1990年代
『ベトちゃんドクちゃんからのてがみ』童心社 1991
『小説・捨てていく話』筑摩書房 1992
『あの世からの火 直樹とゆう子の物語』偕成社 1993
『松谷みよ子の本』全10巻 講談社 1994-96
『現代民話考』9-12 立風書房 1994-96 のちちくま文庫
『りえ覚書』筑摩書房 1994
2000年代
『現代の民話 あなたも語り手、わたしも語り手』中公新書 2000 のち河出文庫 
『読んであげたいおはなし 松谷みよ子の民話』筑摩書房 2002 のち文庫 
『若き日の詩』童心社 2003
『異界からのサイン』筑摩書房 2004
『民話の世界』PHP研究所 2005 のち講談社学術文庫 
『自伝 じょうちゃん』朝日新聞社 2007 のち文庫 

共編著
『むかしむかし』与田凖一、川崎大治共編 童心社 1966
『秋田の民話』瀬川拓男と共著 未来社〈日本の民話 第10〉 1958
『狐をめぐる世間話』(共編) 青弓社 1993
『福岡県筑後ん昔ばなし』松谷みよ子民話研究室共編 1998
『怪談レストランシリーズ』怪談レストラン編集委員会著(責任編集) 童心社、1996- ※アニメ版では原作者の1人としてクレジット。


めぐめぐがすごいと思う松谷みよ子さんのこと

1坪田譲二氏に合われることで児童文学を目指され、その後赤ちゃんから大人まで読める多くの作品を生涯にわたり世に送り出されたこと。

2民話の研究に取り掛かられ、民俗学的にも価値のある研究を残されていること

3そして平和活動にも参加され、平和についての子ども向けの本を出されていること。

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