若手のジョブ・クラフティングを促すには?
ジョブ・クラフティングとは何か?
「ジョブ・クラフティング(JC)」とは、Amy Wrzesniewski博士とJane E. Dutton博士が2001年に提唱した概念であり、平たく言うと、仕事を自分好みにアレンジしたり、仕事の捉え方を変えたりすることです。
例えば、趣味で絵を描く人が、会議の議事録にイラストを追加して分かりやすくまとめることや、自分の担う仕事がどのような人々にとって役立っているのか想像することで、仕事の意義を再認識することはJCに含まれます。
また、ジョブ・クラフティングは、仕事のやり方の変更(タスク次元JC)、人との関わり方の変更(人間関係次元JC)、仕事の捉え方の変更(認知次元JC)、の3つの次元に分類されます。具体的なイメージは、下記の絵にまとめています。
ジョブ・クラフティングをするとどんな良いことがあるのか?
さらに、JCはやりがいやモチベーション、パフォーマンスを高めるため、
注目を集めています。近年、20〜30代は仕事においてやりがいを重視する傾向にあると指摘されています(朝永 2006, パーソルキャリア株式会社 2019)。このことを踏まえると、特に若手にとってJCは大切だと言えるでしょう。
若手がJCをする上での障壁
では、JCを促すためには、どうしたら良いのでしょうか?実は、若手がJCをする上では3つの障壁があります(e.g. Berg et al. 2010)。
1つ目は、タスクが明確すぎるという障壁です。やることや、やり方が細かく指定されている場合、好きな仕事を付け足す余地はありません。
2つ目は、自分にはJCを行う権利がないと感じる、心の障壁です。「まだ、自分は下っぱだから、言われていないことをやってはいけないんではないか」という不安から、この障壁は形成されます。
3つ目は、JCのやり方を知らないという障壁です。「指示された通りに勉強する」ことを良しとされてきたタイプの新入社員は、そもそも「自分の好みに、やり方を変える」という発想がないことも少なくありません。
障壁を乗り越え、JCをするには?
そんな、障壁を乗り越えて若手社員にJCを促す方法の1つに、
上司自身がJCを行っている姿を若手に見せるという方法があります。
池田・高尾(2023)では、上司と部下の関係が良好な場合、上司のJCの一部が、部下によって模倣される可能性が示唆されています。
部下が上司のJCを観察することで、明確に定められた仕事を上手にアレンジして、自分好みにする方法を学ぶことができるかもしれません。また、上司との関係性が良好であれば、「自分は下っぱだからJCしたら怒られる」といった不安も軽減され、JCをしやすくなるのです。
さらに、観察学習は、観察対象となる他者が利益を得ている時に強化されることを踏まえると、JCによりイキイキしている上司を見ると、JCの模倣はより強化されるかもしれません。
もっと詳しく学びたい人へ
上記で紹介した研究は、都立大高尾先生との共同研究で、
詳しい内容は、3月18日発売の「ジョブ・クラフティング: 仕事の自律的再創造に向けた理論的・実践的アプローチ 」にて、ご覧いただけます!
この本には、他にもジョブ・クラフティングの理論的展開や、様々なトピック(シニア、高度外国人材、テレワーク、続けるための支援等)の実証研究がまとめられていていますので、ご関心のある方はぜひ!
「仕事をもっと楽しみたい」「職場でジョブ・クラフティングを促したい」などとお考えのビジネスパーソンにも、「今後、ジョブ・クラフティングの研究をしたい!」とお考えの大学院生・研究者の方にもおすすめです!
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