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アドボカシーという仕事

困ったなぁと思う質問があります。
それは「どんなお仕事されているんですか?」です。

「医者です」
「高校の先生です」
「本を作る会社で働いています」

とかって質問してくれた人とイメージが共有しやすいですよね。

でも「アドボカシーをしています」って答えたら、質問した側からすれば、なんじゃそりゃ(笑)

今日はそんな私の仕事についてご紹介したいと思います。

私は、子ども支援専門の国際NGOで、アドボカシー(政策提言)を担当をしています。2年ちょっと前に書いた自己紹介では、国際NGOで働くまでの私の軌跡が書かれているので、興味がある方はこちらもご覧ください。

これまでは日本国内の虐待予防や子どもの権利に関する政策提言・社会啓発を担当していました。
そしてこの3月から、念願のアドボカシー部へと異動になりました。今後は国内・海外の子どもの権保障の実現につながる幅広いテーマについてアドボカシー(政策提言)を専門に担当します。

アドボカシーってなに?

アドボカシー(advocacy)とは、擁護・支持・提唱と直訳されます。

日本では、社会的に弱い立場にある人たちや、(特に医療・介護などの現場では)声を上げられない人の代わりに、権利を守る、主張を代弁するといった意味合いで使われています。

私が所属するNGOでは、アドボカシーを「社会が抱える課題や問題を広く知ってもらい、関心を高める(社会啓発)とともに、その課題・問題を解決するために政策提言すること」と捉えています。

アドボカシーという部門は、国連機関や海外に本拠地がある国際NGOには必ずある部門だと思います。1つのNGOが単独で動くこともありますが、多くはネットワークを大事にして動きます。例えば、SDGsや子どもの権利など、共通のテーマでネットワーク団体があります。ネットワークに加盟している団体が議論しあって、あるテーマに関する提言や方向性をまとめ、一緒になってその提言が実現するように働きかけるのです。

(余談ですが、日本ではアドボカシー部門はとてもマイナーですが、イギリスやアメリカなどでは博士号を持ち国連機関とNGOを行き来している人がゴロゴロいるような専門性の高い、有名な仕事のようです)

日本国内のみで活動しているNPOの中でも、政策提言を行っているところがいくつかあります。

またロビイングは、NPO•NGOだけでなく民間企業でも行われています。

予算(お金)をとってくるのか、システム(制度・政策・法律)を変えるのか

現場での活動や当事者への調査から、困りごとや課題が浮かび上がります。それを変えたい、改善したいと思った時にできること。それが政策提言です。

政策提言が求める方向性は大きく2つに分けることができます。

「お金をとってくる」か、「制度・政策・法律を変える」か。前者を予算アドボカシー、後者をシステムアドボカシーと呼んでいます。

例えば、私がUNICEF東京事務所のアドボカシーインターンをしていた時、日本政府のODA拠出金がどの機関にいくら振り分けられていて、そのプロジェクトはなにがメインか?という分析をしました。その分析からODA拠出のトレンドが分かるので、UNICEFへのODA拠出金を増やすにはどの分野で攻めていったらいいのかを考えることができます。

基本的に予算アドボカシーは今あるパイの取り合いです(涙)それは国内の子ども政策についても同じで、お金がかかることは財務省が首を縦に振らないと実現できないことも多く、なかなか進みません。

予算アドボカシーとは別に、今ある制度のこの部分が使い勝手が悪いからこうして欲しいなどといった制度変更や、この法律ではこういう不利益があるからこういうふうに法改正をしてほしいと求めることもあります。これがシステムアドボカシーです。

例えば、2019年に児童福祉法等が改正し、親などによる子どもへのしつけを名目とした体罰が禁止されました。この時は、激しい虐待(しつけと言われていた)で亡くなった2人の女児を契機に一気に議論が進みました。この時には、すでにある法律(児童福祉法、児童虐待防止法)に1つ条文を足して体罰を禁止してほしいというロビイングをしました。

この法改正のためにロビイングしていた時に取材いただいた記事です。

国際イシューでいえば、例えば、紛争下で開校中の学校を軍事利用しないでくださいという約束を各国政府に約束してもらう「学校保護宣言」というものを日本政府にも賛同してもらえるように働きかけています。

政策“提言”から政策“実現”へ

「こんなことに困ってます!」「ここが問題です!」という声を、実際に解決するために「政策提言」するわけですが、議員や政府・自治体に提言して終わりではありません。

その提言が実現して、困っている人たちの問題が解決して幸せにつながらないと意味がないと個人的には思っています(この辺はいろいろな考え方があると思います)。

1つ1つの政策や法律、制度が変わるにはすごく時間がかかるし、労力もかかります。
政治家にお願いしに行くロビー活動が多いので、イメージが悪い人もいるでしょう。

でも、いろんな立場の人と一緒になって「子どもたちがもっと自分らしく生きれるような環境をつくろう」と汗をかく、この仕事が大好きです。
提言している政策が本当に実現したら、多くの子どもたちの幸せに向けて1歩前進すると信じることができる、それが仕事のやりがいです。

国際協力に興味がある人には、ぜひ「政策提言」という仕事があるんだよーということも知っていただけると嬉しいです。

じゃあ実際にアドボカシーって何してるの?とか裏話的なことは、長くなってしまったので、また今度。

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