ものの効用
今朝、レシピ本を見返していてふと読みたくなったものがある。
大好きだったオリーブという雑誌の中の堀井和子さんの料理ページを切り抜いてスクラップした、自分だけの思い入れのあるノート。
探してみても、ない。
引っ越しで捨てちゃったんだっけ?
引っ越しが少なくなかった私は、捨てたことを後悔しているものが、もうひとつある。
それは、自分で曲の流れを考えて朝とか夜とかテーマを決めて音楽を集めたMDだ。
結婚して引っ越したときに、お相手のステレオだけを残すことにして自分のMDも聴けるCDプレーヤーは捨てた。
そのとき一緒にMDも捨てた。
音楽は私の心にあるから大丈夫。
お金持ちになったらそれらが入っているCD全部大人買いするから大丈夫。
そう思っていたけれど。
好きな曲を集めるという豊かな時間はそれ以降訪れなかったし、時代はCDの時代ではなくなってしまった。(もちろんMDもそう。)
音楽は今は聴こえなくてもその時の高揚した気分は憶えているし、心の中には目に見えなくても蓄積されていると思う。
でも、でもだ。
もしそれがあったら、娘と一緒に今その音楽を楽しむことができたはず。
あの頃お母さんはね、というくだらない思い出話とともに。
捨ててはいけないものは、自分だけのもの。
自分が作っていなくても、自分が素晴らしいな、好きだな、と思ったものを集めたもの。
そのときの自分の感性は形にして取っておくと、いい。
自分の中にあるものはなくならない。
けれど、人は、大切な人ができたときに、思いや感動を共有したくなる生きものだから。
世の中はたくさんのもので溢れている。
自分以外のものがどんなに素晴らしく思えても、自分がどれだけちっぽけだと思っても、「自分」は捨てたらいけない。
「自分だけの感性」は唯一無二。
それを自分がわかっていることが、まずは一番。
そしてその取るに足らないように見える、むしろ恥ずかしい「自分の感性」、自分の中にあるのはわかってるからってポイって捨てないで。
それがどんなに貴重だったかあとからわかるから。
いつか誰かと共有したくなるときがくるかもしれないから、大切に大切に取っておいて。
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