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唎酒師ビダイセイ

2022 JAGDA国際学生ポスターアワード受賞
2022 農業高校との産学連携 お米のパッケージデザイン制作
2019 沼津市の洋菓子店ikorパッケージデザイン依頼

数々の賞やデザインの採用実績の作者、利酒師・美大生の杉山芽衣を訪ねる。静岡県の伊豆長岡市の酒屋を営む家庭で生まれ育ち、現在は新潟にある美大の4回生で視覚デザインを学んでいる。ゼミではパッケージデザインとCIデザインを研究。温かみのあるパッケージデザインを得意としている。

実家の酒屋にて撮影

代表作、「夏始」

彼女の代表作は、日本酒のラベルデザインである。大学と新潟の酒造会社の産学連携プロジェクトに参加した8名によるデザインコンペから選ばれ販売までされた逸品である。瓶の色、ラベルデザイン、ネーミングをデザイン。「発売が初夏っていうことから夏の始まりを告げる言葉を選んだ。爽やかさを感じられつつ、夏の暑さが少しずつ訪れてくるようなイメージ。で、水色から黄色のグラデーションにした。」
初夏への心象風景が反映されたデザインとなっている。

2021~2022 プロジェクト参加 2022.4月販売開始

日本酒愛

制作の原動力は、彼女を取り巻く環境にあった。静岡県の伊豆長岡にある創業 年の酒屋、「杉山商店」の娘として、多くの酒瓶に囲まれ育った。

杉山商店外観

進路選択の際に「実家の酒屋」「絵を描くのが好き」をきっかけに高校では芸術科美術専攻でデザインと出会い日本酒産業が盛んな新潟の美大へ進学。実家の酒屋と日本酒への愛によって今日まで7年間制作活動に励んできた。プロジェクトへの参加も実家が酒屋であることが決め手で参加したという。その際、一番良いものを作りたい一心で唎酒師の資格取得に励んだ。
「日本酒ってめちゃめちゃ貴重なお酒なんだなっていうのが資格を受けたことによって初めてわかった。あんまりデザイン学びつつ唎酒師の人っていないからこそ、デザインや絵が描ける人間が唎酒師取れたらより上手く日本酒のことについて伝えるようにしたい」
日本酒の良さを味覚だけでなく視覚、デザインから人に訴えかける新しいアプローチを可能とした。そして、興味のある分野や企画に飛び込める美大生の今だからこそできる作品と学びだったとしみじみと彼女は代表作の「夏始」の制作過程を振り返り語った。

デザインとの出会い

日本酒とデザインの異例の掛け合わせを武器に制作を続けている彼女の原点に振り返る。
中学3年生、進路選択の際に「実家の酒屋」「絵を描くのが好き」をきっかけに沼津の芸術科のある高校へ進学。
高校で初めてデザインに出会って『これだ!』となった。自分の性格とやりたい絵にピタッとハマった感じがあって。自分がデザイン学ぶことによって実家のお手伝いできたらいいなっていうふうに思った。人に喜んでもらえるのが好きだったから自分がデザインしたラベルを見て家族と商品を買っていくお客さんが喜んでくれるのが嬉しくてもっと学びたい」
こうしてデザイナーの卵としてデッサン、平面構成、コンぺに揉まれながらも美大へ合格、今年でデザイン歴7年目へと突入した。

2019 高校時代、卒業制作のお菓子のパッケージ作品とともに撮影された一枚

でも、デザインを嫌いになったこともあった 

デザイン一筋のように見えるが一度デザインをやめようとした辛い時期もあったことを打ち明けた。原因は多忙故の生活リズムの崩壊、ゼミ生と比べ自信を喪失が原因だった。そしてこれまで大好きだったデザインを苦痛に感じ、新しい領域への進路開拓を試み公務員試験の勉強を始めた。しかし、「勉強嫌いだ。これデザインの苦しみの方が勉強の苦しみよりマシだぞと気づいてしまって。これってデザインの苦しみの方が100倍マシだってなって、それがきっかけでデザインしか自分にない覚悟が出来上がった」
急な方向転換をしたからこそ早く帰ってきたのである。

作風を一言で言うと、

親しみ。はみ噛みながら呟いた。感覚重視で制作しているスタイルや自身の手描きしたものに引け目を感じていたがそれが地域連携のデザインで評判がよかったことから、勝手にダメだと思っていたことでも他人から見たら良いものとになることもあると知れたと言う。
「自分の良さや個性っていうふうに捉えるようになってからすごい自信持てるようになったしデザインが好きになった」
そう嬉しそうに語った。
 

2022 お米のパッケージデザイン

この作品も、その特性が生かされている。ゼミで取り組んだ新潟の農業高校のお米のパッケージデザインなのだが、毛の部分はアナログで滲みを描いてそれを取り込んだものを落とし込んだという。
 「手描き文字や手書きで書いたイラストはパソコンではできないから唯一無二で特別感があっていい」

こうして、触ったらカモの毛が手に沈み込む想像できるほど感覚に訴えかけてくる愛らしいデザインが生まれた。手作業や感情によってつくられたデザインは地域に溶け込み、それが実家付近では評判となって新たな依頼につながっていくこともあるそう。

これから、

彼女は静岡の化粧品の会社で来年度からデザイナーとして働く。その本業と実家の手伝いとなる日本酒のラベルデザインは継続できたらする予定となっている。現在、杉山商店の新作である鎌倉の13人をモチーフにしたオリジナル日本酒が販売されている。店主である父が中身を監修し、彼女はそのパッケージデザインを制作したとのことだ。是非、実物を見て味わえるようにここに商店のHP兼ECサイトへのリンクを貼っておく。

北条義時 あぐら「翠 -midori-」 特別純米酒 720ml ¥1,980
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