母が死んだ。 ー母とのことー
母は写真が嫌いな人だった。
写真では絶対笑わないし、すごくぶすくれた写真しかないので遺影に困った。
ちなみに一般的な遺影のサイズで遺影を頼むと良心的な葬儀屋さんでも3万円だった。
「後々のこと考えると、小さいほうがいいし充分だよね」
と、理由付けてオプションで5000円の写真作成をオーダーした。
お金があれば3万円にしたかもしれないけど、5000円サイズが身の丈だった。
その写真データを選ぶのに一番最近父と旅行した時にとった写真がスマホにあるというので見せてもらったが、例にもれずいい写真がなかった。
とりあえずその中で一番ましなものを選んでおいたが意識不明のまま頑張っていたので、やっと捻出した1人の時間に遺影に使える写真をアルバムから選んだ。
母は父と出会った頃と、わたしが2歳ぐらいまでの写真はほぼ満面の笑顔だった。
新婚旅行の写真は本当に幸せそうで、母も幸せな時があったんだと思っていろいろな感情があふれてきて涙が止まらなかった。
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