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読了 | 伊坂幸太郎『トリプルセブン』

待望の新作!と思って予約までしていたのに…。
寝かすだけ寝かして、ようやく読了を迎えました。

いやー、面白かったです。
鉄板の殺し屋シリーズ。『マリアビートル』の関連作と言えばいいのか、天道虫さんと真莉亜さんのコンビが再び登場するという設定もファンにはたまらない。

高級ホテルを舞台に繰り広げられる殺し屋同士のバトル。そこには伊坂ワールド全開で、テンポ感のあるストーリー、そしていつも通りのあっと驚くクライマックス。

伊坂さん、またまた素晴らしいエンタメをありがとう!という文句なしの内容でしたー。

本作も時事ネタというか、伊坂さんらしいメッセージが所々に散りばめられていて、印象に残るメッセージもいくつかありました。

人間って、他人よりも上位に行くために頑張る生き物だと思うんだよね。
それを利用しているというか、助長させているのが、資本主義だよ。おしゃれな服も、立派な家も、うっとりされる外見とか、背の高さ、胸の大きさ、とにかく優越感と劣等感のための商品とかサービスばかりでしょ。
だから、『恋人がいないなんて!』とからかわれちゃうのも、もとを辿れば、資本主義が目を光らせてるせいかも。あいつを急き立てて、早く、金を使わせないと、って」

伊坂幸太郎『トリプルセブン』87頁

最近のルッキズムを風刺するような描写。資本主義こそ競争を助長するシステムなのか。

また、恋愛したことがない、というのを、まるでアイスクリーム食べたことないんですか?のように質問するのは変だよね?という例え話もとっても面白かったです。

『こんなところで運を使わなくていいんだ。もっと大事なところでついてるはずだから。心配するな。大丈夫だ』

伊坂幸太郎『トリプルセブン|273頁

乾の昔話。まさに題名にあるトリプルセブンについて語られているところ。

トリプルセブンはスロットの当たり目である777のこと。

最近では親ガチャとかいう表現もあったり、そもそも生まれた時にある程度運命が決まっている、なんてことを耳にしたりする。

結局、見た目がいい人が得をする、頭の良さなんかも遺伝子レベルの部分が大きくて、要は生まれつき自分に備わったスペックで人生上手くいく人といかない人って決まってるんじゃないか、というなんとも言えない現実がある。

じゃあ、生まれたときにトリプルセブンのような運を掴めなかった人はどう生きればいいの?

という疑問というか、世の中に蔓延るこのモヤモヤに対して、伊坂さんが一石を投じた物語かな、と私は受け取った。

この作品の一つのアンサーは
「人と比べることに意味なんてないんじゃないかなぁ。」
というとってもシンプルだけど忘れがちなメッセージ。

「梅の木が、隣のリンゴの木を気にしてどうするんだよ」と答えたのだという。「梅は梅になればいい。リンゴはリンゴになればいい。バラの花と比べてどうする」

伊坂幸太郎 『トリプルセブン』 | 181頁

他人と比べず、自分は自分の価値観で有意義な人生を謳歌したい、と改めてこの作品に触れて思う。

また伊坂さんの作品で元気と勇気をもらいましたー。

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