無機質な気質 | 読書日記『コンビニ人間』

ちょっと前に話題になった本作。多様性の黎明期ともいえる時期にこの作風がハマったともいえよう。

私は大変興味深く読んだ。

世間ではこういう人をサイコパスという一言で括ってしまうのかなあ。そんな感想は無機質な言葉に感じられるがこんな感じもした。

コンビニという、日常の中に当たり前に存在するところが舞台なのに、そこから展開されるストーリーには自分には見えてない世界・社会が広がっていた。

多様な生き方が選択できる時代になる一方で皆が普通であることをより一層求める風潮が強まっている、というのはまさに今の社会が抱える課題だなと共感する。

またみんな他人の人生に興味深々なのだろう。私だってそうだ。何かにつけて人と比べてしまう。人と比べれば比べるほど、苦しくなるのに。そしてなぜか自分の価値観の方が優れている、と思い込みそれを押し付けて来る人がたまにいる。自分はなるべく価値観を他人に押し付けないように気をつけている。でも、世間にはたくさん自分の正しい価値観を押し付けてくる人がどうしてもいる。こういう人と関わる時に私だって煩わしさを感じてしまう。特に会社の上司ともなると難しい。仕事上のルールと価値観の違いに境界線がない人がたまにいる。そこのラインを越えられると、私はどうしても防御モードが発動してしまう。

お互いの違いを認め合いましょう、という考え・スローガンはそれはそれで素晴らしいと思う。でも、そう振る舞えなくて悩む人もいるし、めんどくさかったり不器用だったり不完全なのがまさに人間らしさではないか、とも思う。なので自分なりの一つの作法として、気にしないというのもアリとしている。どうしても心がざわついてしまう価値観や違いは気にしない、距離を置いてしまう。そうすれば相手も私に理解を別に求めなくても害にはならないんだからほっておけばいい。とりあえずはそれが一つの対処方法なのかな、と思っている。

変化や違いにそうサクサクとはなかなかついていけない。そんなにフットワークは軽くない私、不器用な自分をよく知っているから仕方がない。

とはいえ、改めて自分らしく生きるということの難しさとそれを手にして生きていくことの稀有さに気付かされる一冊でした。

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