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そのまま受け取る | 読書日記『なんで僕に聞くんだろう。』

著者である写真家の幡野広志さんになぜか人生相談が舞い込んでくる。それを著者は自分の息子からの相談と想像して答える、という内容。

ガン患者だからより一層死生観や生きることについてより深く捉えられるのではないか、という相談者の錯覚も働いているのだろう。しかし、もともとこの著者の死生観に対する捉え方がなんだか潔いし、人間関係の捉え方も俯瞰した視点をお持ちだったのかなと私は感じる。

この本に触れて、世の中様々な悩みを抱えている人が多いと思った。不倫関係、いじめ、虐待、嫁姑問題などなど。ニュースや小説で取り上げられる話題ばかり。当然それらは現実に起こっていることで、この本の中には相談者から送られてくるリアルな悩みが掲載されており、人生がこんなにも辛いと感じている人たちの多さにある意味で衝撃を受ける。巷のニュースなどよりも一件一件の具体的ない相談に触れることの方がインパクトはデカい。

その相談ひとつひとつに著者が丁寧に且つ率直に回答している。相談者はその著者が自分の相談事をそのまま受け取ってくれること自体に安堵というか安心感を抱くのではないか。そこが著者のすごいところだな、と感じた。

ここに掲載されている内容は誰にも話したくないような内容だし、聞いている側も気持ちが暗くなるばかりだしそもそも解決方法がない問題ばかりだ。

そして、そんなことは相談者は分かっている、だから誰にも言えずに自分で抱えてただ悩み苦しむことを耐えて過ごしているのではないか。そういった悩みをまず聞いてもらえること、受け取ってもらえること、そのこと自体がすでに一歩前に進むきっかけになるし、またこうやって、読者としてこういった理不尽に悩まされている人がいることを知ることもほんのちょっとだけ世の中が良い方向に変わっていくチカラになるのかな、なんて思いながらこの本に触れた。

著者は自分の息子を想定して答えているというスタンスをとっている。相手を決めるからこそ具体性が増すことも改めて知る。

この本に触れて、私は改めて他人の悩みや人間関係を否定するのではなく、まずはそのまま受け取れる器量を持つ。そして、何事も他人のせいにするのではなく自分事として捉えられる人になりたいな、と思いました。

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