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本が好き、その想いだけで書く文章たち。
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#選書

人に本を勧めるのは、実は結構難しい。

「趣味は読書です」と公言していると、よくこんな質問を受ける。 実際にこの質問を受けたことがある人はお分かりかもしれない。 これ、こんな軽いノリで聞いていい簡単な質問とちゃうで。 おすすめしたい本はたくさんあるけれど、いや、おすすめしたい本がたくさんあるからこそ、この質問に即座に答えるのは、実は結構難しかったりする。 人に本を勧めることは、ひとつのスキルだと思う。 ただ自分が好きな本を勧めても、なぜか相手の心に響かず、会話が盛り上がらない……なんてことがよく起こる。聞

私の価値観を変えた本

普段はほとんど小説しか読まないのだが、ごく稀に、何かの拍子に、ちょっとした奇跡が重なって、自己啓発本を読むこともある。 大抵は右から左に読み流すだけで、内容が頭に残ることは滅多にない。これはひとえに、私が真面目に読んでいないからである。もう少し真面目に読んでほしい。 それでも、これまたごく稀に、何かの拍子に、奇跡が奇跡を呼び、私の人生における価値観をガラリと変えてしまうような本と出会うことがある。 世に数多ある自己啓発本。 結局どれを読んだらいいの……? と途方に暮れ

不可逆の歴史のうねり、中東の地で|今月のむささび選書

みなさん、こんにちは。 むささびです。 9月も、たくさんの素敵な作品と出会いました。 今回はその中でも、特に印象に残った作品たちをご紹介します。 ■恐ろしくも味わい深い余韻、余韻、余韻。 まずは、北山猛邦さんの『さかさま少女のためのピアノソナタ』です。 『「クロック城」殺人事件』から始まる新本格の流れを汲んだミステリや、「ダンガンロンパ霧切」のノベライズなどで知られる、北山猛邦さん。 本作は、そんな北山さんによるミステリ短編集。 あらすじにもあるように、物語の謎

『本の虫の本』——本好きのための用語辞典

みなさん、こんにちは。 むささびです。 読書に関するnoteの投稿を始めて、約半年が経ちました。 こんな拙い文章のnoteを読んでくださり、本当にありがとうございます……! 今回は、実はあまり(一度も?)やってこなかった、一冊の本にテーマを絞った本紹介をしようと思います。 本の虫、集え早速ですが、今回紹介する本はこちら。 「本に埋もれて、生きる。」 本好きの夢を代弁した、素敵なキャッチコピーですね。 このnoteを読んでいる方は、ほとんどが「本の虫」なのではな

想像力、爆発。|今月のむささび選書

みなさん、こんにちは。 むささびです。 8月も、たくさんの素敵な作品と出会いました。 今回はその中でも、特に印象に残った作品たちをご紹介します。 少しでも皆さんの選書の参考になれば嬉しいです! 知らない土地のはずなのに、懐かしい。 まずは、岸政彦さん・柴崎友香さんの『大阪』です。 「文藝」に連載されて話題を呼んだ、岸政彦さんと柴崎友香さんの共著エッセイです。 大学生になってから大阪に住み始めた岸さんと、20代後半で生まれ育った大阪から東京に移った柴崎さんが、そ

小説は、こんなにも面白い!|今月のむささび選書

みなさん、こんにちは。 むささびです。 7月も、たくさんの素敵な作品と出会いました。 今回はその中でも、特に印象に残った作品たちをご紹介します。 少しでも皆さんの選書の参考になれば嬉しいです! 起きるはずがない連続殺人が起きた理由とは? まずは、斜線堂有紀さんの『楽園とは探偵の不在なり』です。 第21回本格ミステリ大賞(小説部門)の候補作にもなった、「特殊設定もの」の本格ミステリー作品です。 著者の斜線堂有紀さんは、もともとライト文芸の分野で活躍されていた方で

2021年むささび選書 上半期編

みなさん、こんにちは。 むささびです。 気づけば2021年も残り半分となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。 今回は、私が2021年の1月〜6月に読んだ本の中で、特に面白かった5作品をご紹介したいと思います。 私の趣味趣向に依るところが大きいですが、どれも自信を持っておすすめできる作品です。 ぜひチェックしてみてください! 本を選ぶ前に、今年の上半期に読んだ作品数を数えてみたところ、186冊でした。 私は比較的速読タイプだと思うのですが、その中でも過去一くらい

母と息子の人生に寄り添う。|今月のむささび選書

みなさん、こんにちは。 むささびです。 今月も、たくさんの素敵な本と出会いました。 その中から特に感銘を受けた作品をピックアップして、ご紹介させていただきます。 皆さんが次に読む本を探すとき、少しでも参考になれば嬉しいです。 母と息子の人生に、寄り添うように読書するまずは、リリー・フランキーさんの『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』です。 2006年に第3回本屋大賞を受賞した、著者と母親との半生を描く自伝的小説です。 作品最大の魅力は、著者が隣に立って話