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満員電車で開く勇気がない本

タイトル:

うん古典 うんこで読み解く日本の歴史

キーとなる言葉解説

 妃にふさわしい理由:「妻が倉の横でウンコしてたら、神様が現れて、妻の(とても発言できないトコロ)をノックして、女子を妊娠したから、妃として相応しい」
 何度読んでも理解できないエピソード。因みに『古事記』らしい。冒頭にサラっと書かれてるエピソード。思わず10回くらい読み返したけれど、まだ理解に時間がかかっている。

 神々BLとウンコの関係性:ウンコをせずに移動する距離vs土を担いで移動する距離。距離の長い方が勝ち!ファイっ!そんな戦いをする男神2柱は、オホアナムチとスクナヒコナ。他にもエピソードがあるらしく、マイルドなBLっぽいストーリー展開らしい。
 そういう耐性ついてる読者が読むと、そうとしか読めない内容らしいので、いつか読んでみたいです。『播磨国風土記』

 糞置村:東大寺領の荘園「糞置荘(くそおきのしょう)」。福井市にあったが平安中期には消滅。名前の由来が気になってしょうがないけれど、筆者も分からなかった。

 万葉集のウンコ視点:意外にもウンコがテーマな歌があった。また「巫女(女性)」「ウンコ」「川」は神々からの寵愛などを暗に示していたという。「倉でウンコ」と通じるカテゴリーが語られているらしい。これまでの万葉集のイメージが崩れ去る。

 トイレはあの世とこの世の境:出産を「ウンコが生まれた」という表現法があるらしい@群馬県。群馬県、凄いね。

 落窪物語のウンコ視点:シモ関係についての表現がやたらと多い中世の物語(986年ごろ)。個人的には日本版シンデレラと思ってた。ほんわかした理解しかなかったのに、全てを塗り替えられました。

[シモ関係についての表現]
・プリンス、ウンコの上に座る。
・トイレの横に落窪姫(プリンセス)の部屋があるらしい。
・意地悪な継母は、お爺さんに落窪姫を襲わせようとするが、寒かったらしく、お爺さんがウンコ漏らした(古典的な擬音語付き)。

 仏教とウンコ:当時の宗教観で、地獄がどれだけ最悪なトコかを説明するのに、ウンコが有力なツールとして使われていたらしい。
 例:餓鬼はウンコ食べる

 平安時代のおトイレ事情:貴族は漆塗りのおトイレ桶に用をたし、それを外に捨てに行く係「ひすまし」があったそうです。

 平中:『今昔物語』に最低で最悪なストーカーが登場。
 好きな姫のおトイレ桶を奪い、飲んじゃう平中という男。サイテーすぎて引く。この人の思考回路は本当に分からない。
 当初は「好きな女性を諦める為に、ウンコを確認する」というもの。そして「臭くないから、飲んでみた」に一気に飛躍する。一生かかっても理解できない。

 平安時代の侍:侍(さぶろうもの)は、風呂・トイレ・掃除が業務内容だった『富家語』より。
 主に男性貴族の「ひすまし」役はサムライだったのですね。つまり当時の侍ジャパンは掃除のプロフェッショナルだった訳か。

 平安京:当時はウンコまみれ。汚かったのね。

 鎌倉時代:トイレ後は洗おう運動が起き始める。平安の頃と比べると、すごい進歩!道元が説く、仏の道とトイレのマナー。

 中世〜近世のトイレ観:異界への入り口。妖怪が現れるようになる。

 [中世ごろ おトイレ在住の怪異たち]
・紫姑神:中国『異苑』(5世紀ごろ)。トイレがらみの嫌がらせで亡くなった人をトイレの神様「紫姑神」として祀る。

 ・怪物:中国『紀聞』(8世紀)。目は窪み、鼻は高く口は虎のように大きくて爪は鳥のように鋭い。死期を言い当てる。

 ・がんばり入道:大和国の変質者兼犯罪者な妖怪。死してもなおトイレを覗くサイテー野郎。

 おならの悲劇と喜劇
[悲劇]
 嫁がマグニチュード級のオナラをしてしまい、恥ずかしくて自殺。その後婿も後追い自殺。義理の両親もそれを苦に自殺という、あり得ない連鎖を引き起こし、村が全滅したという。『読みきかせお話集 日本の昔話 1』

[喜劇]
 嫁ぎ先で嫁が我慢の末にオナラをしたところ、姑を吹き飛ばしてしまう。家に戻されるも、その道中でオナラで反物をゲットして(功績が認められて?)、婚家に戻るというハッピーエンド。『日本昔ばなしハンドブック』

 戦国時代のウンコフェイクニュース疑惑:徳川家康が三方ヶ原の戦いで漏らしちゃったというのは、どうやらフェイクニュースだったみたいです。

・1610〜1643年ごろ『三河後風土記』で、漏れちゃったエピソード。

・1833年『改正三河後風土記』では削除。「漏れちゃったのは嘘なので削除しました」という注訳付き。

 大御所様のお漏らしエピソードをしれっとフェイクニュースにしたのか、本当にフェイクだったのか、、、


本の要点

 ウンコ、オシッコ、オナラ、その他シモ関連をぎゅっと凝縮した、むせかえる濃ゆい一冊。日本の人々のウンコの捉え方の変遷、トイレなどの衛生観念の誕生を見ることができる。

 古代、国づくりの重要アイテムとして、幾たびか登場するウンコ。そこから垣間見える人々の生活が、ユルいのかカタいのか判断できない。そこでウンコという共通項を通じて、離れすぎた社会通念の距離感を実感できる。


 中世の頃になると、衛生観念が仏教の一部(?)としてぼんやり登場。
 貴族の横にさぶらう者、お侍のお仕事にトイレ掃除が入ってきて、平安時代のトイレにまつわる役職や変態ストーカーを眺めることができて、怖いもの知らずな読者は、程よく気持ち悪くなれる。


 この頃になるとウンコは、もはや国づくりのアイテムではなくなってしまい、フェイクニュースで相手を貶めたり、イジメの道具としての地位を確立する。それと同時に、トイレは古代では神々との交わる場所であったが、異界との入り口として怪異たちが住民票を獲得し始める。
 この本の中で、何人ものyikes(ヤイクス:うわぁ!の意味)な方々が登場するが、その中でも、平安時代の最低な変態ストーカー平中と比肩できる「がんばり入道」がヤヴァイ。
 異常性愛な犯罪者は、死して妖怪になり、生前本人が犯罪行為に勤しんだおトイレに居を構えるという例を知って、趣深い。
 また『東海道中膝栗毛』もウンコ話しが溢れかえっているらしく、ヤジさん&キタさんの匂い立つ道中に好奇心をそそられました。


 そして女性の立ちション。昭和50年代ごろには、日本の都会じゃないトコであった習慣らしい。風化してしまったのかなと思いきや、アメリカではアウトドア用品として女性の立ちション補助具が売ってるそうです。

勿論、その地域のルールに従ってしてくださいね。


ターゲットとしてる人達

 こだわり派。
 ステイホームを充実させたい読書派の方。
 古文の下ネタ関連に、非常に高い興味を持っていらっしゃる方。
 日本の神様関係が好きな方。


心に刺さった内容

[古文] 『富家語』
 故信雅朝臣は面(おもて)は美くても後ろが頗る劣れり。

[現代語訳]
 死んだ信雅朝臣は、顔はキレイだけど、後ろ(お尻)が全然ダメだった。

古典BLは、現代でもウケそうな気がしました。


読了日:

2021年11月

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