体験記事「日本ライトハウス 展〜全国ロービジョンフェア2023〜」
日本ライトハウス展〜全国ロービジョンフェア2023〜に参加してきた様子をリポートしたいと思います。
(画像はFacebookより)
日本ライトハウス展〜全国ロービジョンフェア2023〜とは?
ライトハウス展は西日本最大級の視覚障がい者用具・機器の展示会です。
コロナ禍で一旦中止されていましたが(Web上でYouTube日ラ展ちゃんねるとして配信という形の開催もありました)…
昨年から天満橋のOMMビル2階展示場で開催されています。やっぱり直接見たり聞いたり、手に取って確かめられるのがいいですよね。
今回は約40社・団体が最新の視覚障がい者用具や機器、アプリなどを展示紹介し、一部販売されています。また4年前まで難波の会場で行っていた特別ステージも再開しています。
過去2019年のライトハウス展についても体験記事で紹介しています。
また日本ライトハウスのホームページからライトハウス展のPDF版ガイドブックがダウンロードできます。
(画像は日本ライトハウスより)
懐かしい会場の雰囲気
安久工機のみつろうを使った小型触図筆ペンや、三菱電機、ソニーの音声案内付き家電などのブースが並んでいるのを見ると懐かしさを感じます。
(画像は安久工機より)
それ以外にも、高知システムシナノケンシ、インテック、ケージーエス、エクストラ、エッシェンバッハ、日本テレソフト、システムギアビジョン、インサイト、アイフレンズ、アメディア、東海光学、コスゲ、キザキ、レハ・ヴィジョン、錦城護謨…知らない人からしたら何の呪文か寿限無の名前かと思うような言葉の並びでしょうが、何年も前から見知った会社の名前やブースに並んだ機器、カタログを見ると同窓会のような不思議な感じ笑。
老舗の企業さんについては、こちらの記事でも紹介しています。
でもみなさん変わらないものもあれば、性能アップや新機能の製品もありました。
例えばシナノケンシさんのプレックストークがradikoにも対応していたりとか。QDレーザーさんがカメラ型や手持ち兼据え置き型の機器を増やされていたりとか。錦城護謨さんが細長いタイプの「ガイドレット」を販売されていたりとか。
やっぱりみんな直接触れて体験したいんですよね
視覚障がいの機器展示会なので、視覚障がいの方々がたくさんいて、機器の説明を聞きながら操作を試して体験して…というのは当然、当たり前の話なのですが。
やはり話に聞くだけではなく、直接触って自分で操作できるか確かめてみたいという想いはみなさんお強いようです。昨年は参加できていませんでしたが、例年にも増してみなさん熱心に体験されているように感じました。
多くの方がヘルパーさんや案内係さんと一緒にまわられていましたが、「ここのブースは○○ですよ」と聞くと「それはのぞいてみようかな、体験はできる?」と尋ねられている方もたくさんおられました。
知ってたけれど…初体験する用具や機器
X(旧Twitter)などで見かけ、記事などでも紹介していた商品の実物にもたくさん出会うことができました。
丸安洋傘株式会社「サイレントアンブレラ」
雨の日は白杖や周囲の音を頼りに移動する視覚障がいの方にとって雨音で情報が聞き取りにくくなる困った日でもあります。そこで開発された雨音の静かな傘がサイレントアンブレラです。
こちらの動画で音を聞き比べてみてください。
実際に触ってみると傘が二重構造になっているから音が静かなんですね。そして二重構造なので日傘としても優秀で周囲よりも10℃くらいは涼しくなるそうです。
(画像は記者撮影より)
ミズノ株式会社「ミズノケーン ST」
スポーツメーカーのミズノが、スポーツ用品開発で培ったカーボン設計・加工技術を活用し、軽量性と操作性を追求した直杖タイプの白杖です。ネット上でもそのデザイン性や価格から話題になっていました。持ってみると「軽っっ!!」と思わず声に出てしまいます。一般的な白杖よりも3〜4割は軽量化されているそうです。
(画像はミズノより)
株式会社Ashiraseの視覚障がい者向け歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」
靴に取り付けた機器の振動で案内する…とは聞いていましたが、実際に体験すると足が振動するって不思議な感覚です。やっぱり体験してみるのが1番ですね。
前後左右の振動で方向を、振動の間隔で曲がるまでの距離を教えてくれるのです。会場内での体験でしたが、ぜひ実際に街中で体験してみたいですね。
(画像はAshiraseより)
リンクス株式会社「shikAI(シカイ)」
「shikAI(シカイ)」は歩行ナビゲーションシステムの1つで、スマートフォンのアプリとカメラを使い、点字ブロック上に貼られたシールやQRコードを読み込んで音声や振動で目的地までナビゲーションしてくれるものです。
東京メトロなどで導入されているという話は聞いていましたが、晴眼者もアプリを使用できるとお聞きし、アプリをインストールして会場内の錦城護謨さんの「歩道くんガイドウェイ」の上をスマホ片手に辿ってみました。ほうほう、間違った方向へ進むと振動で「違う!」と教えてくれるんですね。左右などの曲がる方向も音声で案内してくれました。
(画像は再都市化より)
百聞は一見に如かずといいますが、やはり実物を体験できるのはライトハウス展のいいところですよね。
知らなかった…初めて出会う用具や機器
前情報がなく、初めて出会う用具や機器もありました。これもライトハウス展の魅力のひとつです。
ソニー株式会社「LinkBuds」
耳をふさがない構造の完全ワイヤレス型ヘッドホンです。イヤホンから音声が聞こえながら、でも会場内の周囲のザワザワも聞こえるという不思議な感じです。
(画像は記者撮影より)
イヤホンを着用して、株式会社コンピュータサイエンス研究所さんの視覚障がい者歩行支援アプリ「Eye Navi」を体験させていただきました。
有限会社エクストラ「センスプレーヤー」
販売中止になったプレックストークリンクポケットのような形状で、DAISY図書の録音再生やインターネット上からのダウンロードはもちろん、カメラで撮影した活字文書の読み上げもできます。
さらに、スマホやタブレットとBluetoothで接続して、上下左右への移動やガラケーのようにキー文字入力ができるそうです。
最近はスマホが主流になりつつ、まだ操作が苦手でボタンのある方がいいという声が多数あるのだそうです。
(画像はエクストラより)
株式会社オーカムテクノロジーズ「オーカム リード」
あのオーカムマイアイにペン型のデバイスが登場していました。ポイントやスクエアといった赤いライトの光で選択した範囲にある文字を読み上げてくれました。ある程度範囲を選択するので弱視の方向けの製品です。
(画像はPR TIMESより)
すごい!と思っていると、どうやらもうすぐ新機種のオーカムリード3が販売するのだと教えてもらいました笑。
視覚障がい者の豊かな暮らしを実現する研究会(ゆたくら)「「YUTAKURA BP(仮)」
収納力と耐久性の両方を重視した革製のリュックを試作されています。実際に背負わせてもらいましたが、折りたたんだ白杖を収納するサイドポケットがあったり、いくつものポケットの中にはペンや小物を収納するホルダーがあって、リュックの中で荷物が迷子にならないように工夫されていました。
(画像は記者撮影より)
株式会社マキカンパニー(fukufuku312)「オールフロントTシャツ/パンツ」
前後裏表がなく、どうやって着ても間違えないTシャツとズボンです。ズボンは外側にポケットがあるので前後関係なく使えるんです。厚手の柔らかい生地で伸縮性があるのに型崩れせず襟元もヨレヨレにならないそうです。
(画像は記者撮影より)
ダイハツ工業株式会社「SmartWalk」
スマホからは独立した首から肩にかける形状で、カメラ付きの機器です。カメラが周囲の状況を認識して、人や自転車、トラックなど7つの障害物と点字ブロックから指定したものの位置を音声で教えてくれます。
(画像は記者撮影より)
まだ開発中で実験モニターを募集中とのことでしたが、体験させていただきました。そこまで重くはなく、両手がフリーになるのが歩行時に便利です。スマホのバッテリーが切れそうなときでも安心して使えますし、Bluetoothでイヤホン接続もできるそうです。
また出展ブースではありませんが、関係団体の資料コーナーも設置されていて、盲学校や視覚障がい施設、団体のパンフレットが置かれていました。
(画像は記者撮影より)
遠い未来と思っていた現実がすぐそこに
4年以上前に「未来の歩行をサポートするもの」という記事を書きました。
その当時に記事で紹介した多くの装置やシステムはまだ開発段階で、実用化はまだまだと思っていましたが、今回のライトハウス展には紹介したものがいくつも出展されていました。
リンクス株式会社「shikAI(シカイ)」や、株式会社コンピュータサイエンス研究所「Eye Navi」はスマートフォンのカメラ機能とGPSを使い、歩行をサポートしてくれるアプリです。
株式会社Ashirase「あしらせ」は靴に装着した機器の振動で進む方向を教えてくれます。
ダイハツ工業株式会社「SmartWalk」は首からかけた専用の機器のカメラが障害物などを認識して音声で教えてくれます。
今回のライトハウス展に参加して、4年の間に未来が現実のものになりつつあるのだと改めて実感しました。
ドコモのらくらくフォンも終了し、会場内でもスマホを片手に機器についての説明を受ける方もたくさんいらっしゃいました。僕の周りにも「スマホは絶対使わない」と言っていたのに、いまや当たり前のようにスマホを使いこなしている視覚障がいの方もいらっしゃいますし笑。
視覚障がいの方の歩行が変わる日は遠くないのかもしれませんね(基本の白杖操作が必要なことはもちろんですが)。
まとめ
日本ライトハウス展〜全国ロービジョンフェア2023〜についての紹介いかがでしたか。4年ぶりに参加し、会場の熱気や見知った企業さんのお名前に、懐かしさを感じてました。
ぜひまた来年も参加したいですね。
そして僕の拙い記事だけではライトハウス展の魅力を十分にお伝えできていません。気になった方はぜひ、直撮会場を訪れてみてください。
最後に出展された企業や団体の一覧を掲載しておきます。
出展企業・団体一覧
1.日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター
2.社会福祉法人京都ライトハウス情報製作センター
3.丸安洋傘株式会社
4.有限会社 安久工機
5.株式会社NTTドコモ
6.三菱電機株式会社
7.ソニー株式会社
8.株式会社コネクトドット
9.株式会社コンピュータサイエンス研究所
10.NPOメディア・アクセス・サポートセンター(MASC)
https://apps.apple.com/jp/app/hello-movie/id1494250968
アプリ「HELLO! MOVIE」についてはこちらの記事でも紹介しています。
11.株式会社高知システム開発
12.合同会社フロッグワークス
13.欧文印刷株式会社
14.国立大学法人 筑波技術大学
15.シナノケンシ株式会社
16.合同会社ブラインド・ソリューション
17.株式会社インテック
18.ケージーエス株式会社
19.有限会社エクストラ
20.株式会社エッシェンバッハ光学ジャパン
21.株式会社日本テレソフト
22.株式会社システムギアビジョン
23.株式会社インサイト
24.株式会社アイフレンズ
25.株式会社オーカムテクノロジーズ
26.株式会社プライムアシスタンス
27.株式会社アメディア
28.東海光学株式会社
29.視覚障がい者の豊かな暮らしを実現する研究会(ゆたくら)
30.株式会社マキカンパニー(fukufuku312)
31.株式会社KOSUGE(コスゲ)
32.株式会社つえ屋
33.株式会社キザキ
*白杖の情報は見つかりませんでした。
34.ミズノ株式会社
35.リンクス株式会社
https://apps.apple.com/jp/app/shikai/id1542150781
36.有限会社テイクス
37.ソニー株式会社・株式会社QDレーザ
38.レハ・ヴィジョン株式会社
39.株式会社Ashirase
40.株式会社リモートアシスト
リモートアシストについては過去に別の記事で紹介しています。
41.ダイハツ工業株式会社
*SmartWalkの情報は見つかりませんでした。
42.錦城護謨(きんじょうごむ)株式会社
43.日本ライトハウス 盲導犬訓練所
44.日本ライトハウス情報文化センター 「エンジョイ!グッズサロン」
表紙の画像は日本ライトハウス展〜全国ロービジョンフェア2023〜のチラシから引用しました。