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教材紹介【聞く力】『聞きとりワークシート』

『聞きとりワークシート①言われたことをよく聞こう編(LD発達相談センターかながわ)』という本の紹介です。

聞く力を育てる

全体での指示や話の内容を理解するのが苦手な子、説明を聞いていてもその中で大事なポイントを把握するのが苦手な子。

ソーシャルスキルトレーニングの一環として、そんな子たちに聞く力を高める取り組みを行なってきました。

例えば「落ちた落ちたゲーム」や「旗あげゲーム(肩あげゲームなんてのもあります)」「めいれいゲーム(船長さんゲーム)」「聖徳太子ゲーム」などのゲームもその1つです。

(画像はミックスじゅーちゅより)

(画像は実験!リモート遊び研究会より)

(画像はミックスじゅーちゅより)

(画像はミックスじゅーちゅより)

(画像はこども発達支援研究会より)

コグトレ棒を使ったトレーニングなども行ってきました。棒を持って「前、上、後(首の後ろ)」などの声かけに合わせて素早く動かしたりなどです。

そんな取り組みを重ねていくうちに、子どもたちはゲームなどが始まると、「聞き取ろう!」と集中して取り組めるようになってきました。

トレーニングと実際の話を聞く場面を繋いでいく「聞きとりワークシート」

ゲームが始まると集中のスイッチがオンになり、「聞こう」と集中する感覚がわかってきた子どもたち。

でも実際の話を聞く場面でそれを活かしていくにはまだまだです。話の内容という次のステップに移るために文章の読み取りなどを考えていたときに出会ったのがこの本です。

というわけでお待たせしました、ここからが本の紹介です。聞くことの大切さや本の内容をお伝えするために「はじめに」の一部を引用します。

 私たちが新たな情報を得たり、人と関わる時にはさまざまな感覚を総動員させますが、中でも「聞くこと」がとても大きな位置を占めていることは、みなさんも日々感じていることでしょう。子どもたちに何かを学ばせたい時、こちらの意図をくみ取ってほしい時、「よく聞いておぼえてね」「しっかり話を聞いて」「言われたとおりにやってね」と言います。ところがら聞きたい、覚えたい気持ちがあったとしても聞きわけられない、覚えられない、聞こえるものの中から何を、どの部分を覚えていいのか選べない、判断がつかないから人の話を聞くのは嫌いという、発達にアンバランスがある子どもたちがたくさんいます。情報を記憶にとどめて複数の活動を同時におこなったり、複数の刺激をまとめて捉えて考えたりする時に使われる能力はワーキングメモリーと呼ばれています。行動する前にとりあえずとどめておき、必要な時に情報をとりだすので「脳の作業台」とか「脳のメモ帳」と呼ばれることも多いようです。
 ワーキングメモリーが弱いと新しい情報を覚えたり、正しく活用すること、人の話を聞いて会話をスムーズに進めることも難しくなります。そんな子どもたちがらクイズやロールプレイといった楽しめる課題を通して「聞く」ことに対する抵抗感を減らすこと、ポイントやフォーマット、覚え方を示して工夫すれば聞きとれるようになるんだと実感できるようになること、説明や会話の中で話題になることばや内容に意識的に触れ、なじむことで話の流れが予想しやすくなり、指示の理解や会話がスムーズになることを願って「聞きとりワークシート」を作成しました。

ふむふむ、僕がイメージしていたゲームと実際の話を聞く場面を繋げていくというねらいにピッタリです。

本に掲載されているワークシートの使い方ですが、まずは「使い方」の中から子どもの実態に合ったワークシートを選びます。

1 ことばの中の音をよく聞こう
 →単語の中の音に傾聴する問題です。一音ずつに気づかせたり、音の保持の練習をします。
●似ている音をよく聞こう
●いくつの音でできているかな?
●ぬきぬきことば
●さかさことば
●シャッフルことば

2 言われたことばをよく聞こう
→単語や話の文節を聞きとることを練習します。
●キーワードかぞえ
●あてはまる絵にしるしをつけよう
●あてはまる絵を選ぼう
●3ヒントクイズ
●順番に気をつけて聞こう
●聞いたとおりにやってみよう

3 上下左右をよく聞こう
→空間を示すことば、中・外・上・下・左・右などを聞きとることを練習します。
●いろいろな位置のことば
●上下、左右、真ん中をよく聞こう
●片づけスッキリ大作戦

4 お話をよく聞こう
→短い話の中でポイントとなることを意識して聞きとることを練習します。

続いて、「進め方」を読み指導の流れをイメージし、必要箇所のシートをコピーしておきます。

それぞれの課題の「ねらい」「進め方」「応用」「読み上げ文」「解答」などが書かれているのがわかりやすいですよね。

コピーしてすぐ使えるのでとっても楽なのと、ワークシートにイラストが多く、子どもたちが楽しみながら、視覚的にイメージしながら使えるように工夫されているのもオススメポイントです。

(画像は特別支援ドットコムより)

そして「進め方」の流れにそってワークシートに取り組みます。子どもの状況に合わせて、スピードや何度読み上げるかを適宜、調整します。子どもによっては、「聞きとれなかったら「もう一度言ってください』と言ってね」と伝えるなどする場合もあるかと思います。

また言われたことを忘れずに保持することの方法(方略)をたくさん見つけら自分に合った方法を身につけていくことはとても大事です。みんなそれぞれの得意な認知の方法が違うからです。

聞きながら復唱する、キーワードを強調して言う(言語化)、目をつむって映像化する、メモする、略記号を使う、イラストに描く(視覚化)、指を折ったり、体を動かす(動作化)などをして「自分はどうすれば覚えやすいのか」を考え、試す機会をつくってあげてください。

ワークを終えたら、「フィードバックシート」を使って答え合わせをします。このときに、指導者が丸をつけるだけでなく、本人がフィードバックシートを使って答えを確認し、自ら意識、判断する機会を設定するのも大切です。イラストのあるフィードバックシートを使って答え合わせすることは、音声情報を視覚イメージ化する経験に繋がります。

また問題によっては応用の仕方や、新たな問題を作成するヒントが掲載されています。

多くの問題は著者の先生方が実際の療育の中で子どもたちに向けて作成、使用した実践的な教材です。ぜひ実物を手にとって見てください。

もちろん子どものアセスメントや環境調整をまず先に

もちろんこのワークシートを闇雲に進めるわけではありません。本の最初、「1 ことばの中の音をよく聞こう」には特殊音や音韻認識のワークがあるように、音と文字の認識でつまずいている子もたくさんいます。

そんな子たちには、以前紹介した記事が参考になるかもしれません。

聞く力はあるのに、言葉や文章の意味理解でつまずいているかも知れません。そうであるなら、まずは文章を目で見て、それを具体的なイメージとリンクさせるような取り組みが必要です。

もちろん聴力が原因の場合もあるでしょう。聞いた情報を記憶にとどめながら考えたり作業したりするワーキングメモリの弱さがある子もいます。

子どもたちのつまずきの原因を置いたまま、全体の話が聞けていないからといって聞く力のトレーニングに取り組むものではありません。

もしかしたら教室全体がザワザワしているからかもしれませんし、僕たち教員の声の大きさや伝え方が未熟だからかもしれません。

▶︎余計な言葉を削る
▶︎ 短文で1つずつ伝える
▶︎ イメージを持たせるエピソードで語る
▶︎ 子どもに合わせてスピードを調節する
▶︎ 「え〜」「あ〜」と言わない

こども発達支援研究会より

こちらが子どもたちが見通しをもてる、わかりやすい伝え方を意識することも大事です。

聞く力を育てることも大事ですが、目で見る方が得意な子たちもたくさんいます。この本のワークシートの多くがイラストとセットになっているように、実際の授業や作業の説明の際には、写真やイラストを提示するなど、子どもたちがわかりやすい環境を整えることも大切です。

まとめ

聞く力を伸ばすワークシートの紹介でした。僕の関わる子たちの取り組みにちょうどピッタリ合う内容の本でした。

覚えておいてと言われた言葉や数字は覚えられるし、伝えて会話してからもその言葉や数字を思い出せる子たちが、文章の中に出てくる「パン」という音の数や誰が何をしたのかを問われても「どう答えたらいいのかわからない…」となってしまう場面がたくさんありました。

本に書かれていた通り、(聴力やワーキングメモリの力ではなく)聞こえるものの中から何を、どの部分を覚えていいのか選べない、判断がつかない子たちがたくさんいるのだと思います。逆に「何を、どの部分を」覚えるのかを意識することに繋がるワークがたくさんありました。

繰り返しになりますが、この本の内容だけをやればいいというものではありません。子どもの実態を把握して、環境を整えた上でその子の段階に合ったワークシートに取り組むことが大事です。その子に合った覚え方を探すというのも大事な視点です。

『聞きとりワークシート』は全部で3冊のシリーズです。聞きながら作業すること、話のポイントの聞きとりなメモの仕方などについての問題で構成され、小学校低学年くらいから取り組める「②大事なところを聞きとろう編」、会話の中やの聞きとりや省略したりことばでは言っていない部分も考えて聞く問題で構成されている小学校中学年以上くらいを対象とした「③イメージして聞こう編」もあります。

他にも無料の聞き取り用ワークシートや聞きとりに活用できる読解問題のあるサイトもいくつかあるので紹介しておきます。

気になった方はぜひ手に取ってみてください。



表紙の画像はAmazon.co.jpより引用しました。