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盲学校からの発信「ボディイメージを育むコグトレ」

コグトレという言葉を聞いたことはあるでしょうか。今回は、『ケーキの切れない非行少年たち』でも知られる宮口幸治先生の提唱されたコグトレが、視覚障がいの子たちのボディイメージ向上に効果的だったという僕の実践を報告したいと思います(今回はあくまでも僕の実践で、盲学校でコグトレが普及しているわけではありません)。

コグトレとは

コグトレとは、「認知トレーニング(Cognitive Training)」の略で、立命館大学教授宮口幸治さんが提唱されているものです。

もともと少年院でのグレーゾーンの子を対象に、社会面や学習面、身体面の認知機能を高めるために開発されたもので、現在は支援学校や通常学校でも広く行われています。

僕は数年前にこのコグトレの研修会に数回参加し、その中の認知作業トレーニング・コグトレ棒を使った身体トレーニングが視覚障がいのある子たちのボディイメージや聴覚認知機能の向上に効果があるのではないかと考え、数年間取り組んできました。

コグトレは今回紹介する認知作業トレーニング以外にも、認知ソーシャルトレーニングや認知機能強化トレーニングなどもあり、複数の書籍があります。全国で研修会が開催されていますし、興味があればこちらの記事などで紹介されています。

視覚障がいのある子たちのボディイメージについて

見えない・見えにくい子は、当然ですが周りの人の動きを見ることが苦手です。なので多くの人がするように周りの動きを見て真似たり、自分の動きや姿勢を修正することがなかなかできません。人間学ぶことは真似ぶことからはじまります。
必然的にいろいろな動きのボディイメージが掴みにくくなります。

視覚情報なしだとどんな風になるのか試しにやってみましょう。

整列するときなど、「指先まで力を入れて、ピンと伸ばして」という言葉かけを多くの方がきいたことかあるかもしれません。前にならえをイメージしてください。

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(画像は記者撮影より)

実際に目を閉じて、指先に思いっきり力を入れて、ピンと伸ばしてみてください。

すると写真のように指先が手の甲側に反ってしまっているかもしれません。

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(画像は記者撮影より)

また「指と指の間をくっつけて」と伝えると、写真のように親指が人差し指にくっついてしまい、お椀型になってしまうかもしれません(でもこれでも指と指の間はくっついていますよね)。

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(画像は記者撮影より)

言葉だけで姿勢や動きを伝えることはなかなか難しいのです。見かけ上、同じ姿勢に見えても力の入り方が全く違うかもしれませんし。

また片足立ちなどのバランス感覚も、目をつむってみると途端に難易度が高くなります。

このため、様々な動きの獲得、ボディイメージやバランス感覚の向上が視覚障がいのある子たちに必要だと昔から言われていたのですが、僕はこのボディイメージの向上にコグトレが非常に効果的だと思っているのです。

では具体的なトレーニングの内容を紹介していきます。

ボディイメージを高める

当初はコグトレ棒を持っても、肘を伸ばすことができない(まっすぐのボディイメージが持てない)、身体を左右に傾けることができない(体を傾けるつもりで腕だけ捻っている、頭が傾かない)などの様子が見られました。子どもたちはそんな実態なので、体育のラジオ体操の姿勢も指定された姿勢をとることができておらず、また指定された姿勢のボディイメージも理解できていなかったため、本人たちは自分が正しい姿勢ができていると考えており、姿勢を修正するよう指導してもなかなか理解できずその内容も定着しませんでした。

また筋肉量や運動時間が十分でなかったようで、当初は「疲れた」「しんどい」と声を上げるような状況でした。

そこから徐々にトレーニングを通して、1学期の後半には、コグトレ棒を持つことで肘を伸ばすボディイメージが、背中や後頭部を壁につけることで背中を伸ばして頭を上げるボディイメージが向上し、普段の着席時の姿勢や体育のラジオ体操、整列で肘や背中を伸ばす姿勢が見られるようになってきました。コグトレにも慣れ、体力もつき途中で「疲れた」「しんどい」と言うこともなくなり、子どもたちは楽しんで参加する様子が見られるようになりました。

ここではボディイメージを高めるための取組みをいくつか紹介します。

①肘や背中を真っ直ぐに伸ばす

コグトレ棒を持つことで腕を真っ直ぐに伸ばすという感覚が掴みやすくなります。まずは基本の姿勢、コグトレ棒を両手で持ち、胸の前でキープします(胸の姿勢)。そのまま棒を持ったまま胸から前に腕を伸ばします(前の姿勢)。これが前にならえのイメージにつながります。注意点は肘を伸ばすことと、腕を前に伸ばすことを意識しすぎて背中を丸めないことです。

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(画像は記者撮影より)

背中を丸めてしまうのは、背中を壁につけたまま行うことで修正できます。

続いて前の姿勢のまま、真上に両腕を挙げます(上の姿勢)。目を瞑って腕を真上に挙げてみると、真上のつもりなのに微妙に前後にズレていることがあります。視覚障がいの子たちも同じです。これも壁に背中をつけた状態で腕を壁に当てることで、真上の位置を確認します。

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(画像は記者撮影より)

また後のねじる動作や聴覚認知トレーニングのため、首の後ろに棒を持ってくる姿勢(後ろの姿勢)も確認しておきます。

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(画像は記者撮影より)

壁を使ってボディイメージができてきたら、椅子に座った状態や、壁から離れて立った状態でもそれぞれの姿勢を確認し、細かい位置を修正しながら、感覚を定着させていきます。

②身体を左右に傾ける

右や左と聞くと大まかな方向はイメージできますが、真っ直ぐ右や左の方向を視覚障がいの子たちがイメージするのは練習が必要になります。

考えてみれば、自分の右手と左手や机の上での左右などは確認する機会や真横方向に腕を伸ばすことはあっても、身体を傾けることはあまりないのかもしれません。

授業で初めて身体を左右に傾けてもらったときには、右斜め前に傾けたり、身体を捻ったり、腕だけが曲がっていたりといった様子でした。ラジオ体操での体を横に曲げる運動が難しい訳です。

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(画像はかんぽ生命<図解>ラジオ体操第一・立位より)

これも壁を使ってボディイメージをつけていきます。まず腰から上だけを曲げることを伝え、コグトレ棒を上に挙げた状態(上の姿勢)から両腕を壁につけたまま左右へと傾けていきます。最初は少しずつで構いません。両足裏が床についたままであるように、腰から上だけを曲げるように、背中と腕が壁から離れないように、注意しましょう。頭と腕の角度がずれてしまう場合には、まずコグトレ棒を短く持って腕で頭を挟むようにした状態からはじめましょう。

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(画像は記者撮影より)

これも慣れてきたら椅子に座り、背もたれを使ってできるように、それが定着すれば立った状態でできるようにスモールステップで進めていきましょう。

③身体を左右にひねる

身体を左右に曲げること同様、ひねることもイメージが難しい動作です。これもラジオで子どもたちが苦手とする動作でした。

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(画像はかんぽ生命<図解>ラジオ体操第一・立位より)

これは椅子に座った状態でコグトレ棒を後ろに持ってた状態(後ろの姿勢)で、頭から背骨を軸にしてコグトレ棒の力を借りてひねります。ひねると言うとわかりにくいようで、右を向く、左を向くと伝えていました。

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(画像は記者撮影より)

後ろの姿勢でひねるイメージがついてきたら上の姿勢でもひねります。ひじが曲がらないように注意しながら取り組みましょう。

椅子に座った状態でのボディイメージが定着したら、立った状態でできるように取り組みましょう。

④腕を大きく回す

まず気をつけの姿勢で右手にコグトレ棒の端を持ち、もう片方の棒の端を床に向けます。そこから腕を時計の針のようにして大きく回していきます。右腕を大きく回すようにして徐々に挙げていき肩の高さでストップ(右)、そこから真上に挙げていき真上でストップ(上)、左腕も挙げて棒を持ち替えて(持ち替えたら右腕は気をつけの姿勢へと戻す)、今度は左腕を大きく回すようにして徐々に下げていき肩の高さでストップ(左)、さらに大きく回すようにして下げていき真下でストップ(下)、棒を右手に持ち替えます。ポイントはひじが曲がらないように腕を真っ直ぐ伸ばすこと、コグトレ棒が腕の延長のように(引っ張られているように)真っ直ぐ伸ばすこと、腕が前後にぶれないこと、右や左のときは肩の高さで腕を止めること(肩の高さで止めるイメージをもつ)です。これも壁に背中と腕をつけて回すことでズレていないかがわかりやすくなります。右回りをしたら左手真下からスタートする反対回りも行います。棒の先端まで意識して延ばすイメージはなかなか難しかったようです。

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(画像は記者撮影より)

僕のみていた子どもたちは低緊張の課題があり、ゆっくりな動きが苦手(体幹の筋力が弱く姿勢の維持ができない、微妙な筋コントロールが苦手で力の入れ方が0か100かになってしまう)だったので、この大きく回すときに、真下→右→真上のそれぞれに動かす際に、早く回すだけでなく3秒や5秒などをカウントしてゆっくり回すことにも取り組みました。3秒かけてゆっくりと声をかけても、1秒もかからずに動かしてしまうので(本人の意識だけの問題ではなく、ゆっくり動かす筋力がなくコントロールもできない)、教員が腕を押さえながらゆっくり動かす感覚を練習しました。ゆっくり動かし続けるのではなく、刻むようにですが、少しずつゆっくりと動かす感覚が身についてきたようです。

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(画像は記者撮影より)

余談ですが、僕が道徳で取り組んでいる感情のコントロールの怒りの温度計という取組みでも、すぐにキレる子は大抵怒りまでの変化に刻みがなく、些細なことですぐに怒りの温度が100度になってしまいます。まずは怒りの温度50度のレベルをつくること、それから細かい段階を本人が意識できることが、すぐにキレないための怒りの感情コントロールに繋がっていくのです。身体のコントロールとも似ていて面白いなと思います。

⑤コグトレ棒で身体の部位にタッチ

ボディイメージを高めるために、コグトレ棒の端を片手で持ち、棒の反対側の端(先端)で、左肩やおへそ、つむじ、くるぶしなど指定された部位をタッチする取り組みも行いました。これは同時に身体のさまざまな部位名、こめかみやくるぶし、肩甲骨、鎖骨とその位置の学習にもなりました。

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(画像は記者撮影より)

最初は棒でタッチするのは難しく、自分の手のひらでタッチしました。そこからコグトレ棒に移行します。初めは先端ではなく、棒自体でタッチしていた子たちも、徐々に身体とコグトレ棒の先端位置のイメージができて先端でタッチできるようになりました。コグトレの取り組みを通してボディイメージが高まってきたのだと思います。

柔軟性とバランス感覚を鍛える

①上体反らし

コグトレ棒を両手にもち、上にした状態でさらに後ろに下げて上体を反らします。このときには頭ごと後ろに向けることも伝えます。ラジオ体操の上体をゆっくり反らす運動のイメージです。

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(画像はかんぽ生命<図解>ラジオ体操第一・立位より)

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(画像は記者撮影より)

②前屈

コグトレ棒を両手にもち、胸の姿勢からおへそ、ひざ、すね、つま先と徐々に下げていき、前屈のストレッチをします。ひざを曲げないように伝え、難しい子はできるところまででよいとも伝えます。

③棒またぎ

ひざの前に持ってきたコグトレ棒を両手に持ったまま、片足ずつまたぎます。上体を傾け、ひざを挙げることを意識させます。

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(画像は記者撮影より)

また次の④の肩甲骨伸ばしが終わった後には、今度は反対にひざ裏からコグトレ棒を両手に持ったまま、片足ずつくぐります。②→③→④→③は続けて行っていました。

④肩甲骨伸ばし

コグトレ棒をお尻の後ろで両手で持った状態から、肘を伸ばしたまま棒を上に挙げていきます。痛いくらいのところでストップし、10秒間キープします。上体は真っ直ぐに立てたままと、前に90度傾けたままの2パターンで取り組みました。

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(画像は記者撮影より)

⑤片足立ち

見えている人が片足立ちの途中で目をつむると難易度が高くなります。見えない・見えにくい子たちは、見えている僕たちが使っている視覚情報から身体をコントロールする機能が使いにくいため、そもそもの片足立ちの難易度が高いのです。

まずは机や椅子、壁などの支えを持った状態からスタートし、徐々に手を離すよう伝えます。コツは床についている方の足裏に体重を乗せることです。

5秒、10秒、20秒と徐々に秒数を増やしていくパターンと、20秒、10秒、5秒と徐々に秒数を減らしていき「最後の5秒は頑張って手を離してみて」と伝えるパターンの2つで取り組みました。

⑥蹲踞(そんきょ)の姿勢

いわゆるうんこ座りとかヤンキー座りとか言われている姿勢です。和式の便座が減り、この姿勢が取れない子が増えているそうですね。

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(画像は日本拳法白虎会のブログより)

盲学校の体育で行う視覚障がいスポーツ、フロアバレーボールやグランドソフトボールの全盲プレイヤーはこの蹲踞の姿勢をキープしないといけません。

そんなこともあり、蹲踞の姿勢に取り組みました。慣れてきた子には、かかとを床から離してつま先立ちになり、上体を真っ直ぐに起こして、ひざから手を離すように伝えます。

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(画像は記者撮影より)

また立った状態から真っ直ぐにこの蹲踞の姿勢にしゃがむ動作ができることは、子どもたちの事故を減らすことにも繋がります(落としたものなどを拾おうとして上体を前に傾けたまましゃがむときに、机や椅子、棚やロッカーなどで顔をぶつける事故が盲学校では多く見られます。万が一眼にぶつかれば大事故になります。なので、落とし物を拾うときは、周りに机などがないかを手で確認し、顔の前に手を持ってきてガードし、立った状態から真っ直ぐにしゃがむように子どもたちには伝えています)。

聴覚認知能力を鍛える

①胸、前、上、後

座った状態で両手でコグトレ棒をもち、教員の「前、上、後」などの声かけに合わせて素早くコグトレ棒ごと腕を動かします。

話をよく聞かずに思い込みで行動してしまう子がよく聞いてから行動できることを狙った聴覚認知トレーニングの一環です。徐々にスピードを上げたり、「上、上、上」のように同じ位置を続けるなど難易度を高くしていきます。

またワーキングメモリを鍛えることも狙って、胸=1、前=2、上=3、後=4のようにそれぞれに数字を割り当て、それを覚えた上で「2、3、1」などの声かけでも行いました。「2、2、5」など存在しない数字を言ったり(1〜4以外の数字には反応しないルールを追加)、1〜4の順番を入れ替えたり、英語や他の言葉に置き換えたりすることでさらに難易度を上げることもありました。

②右、左、右

同様に座った状態で、左右の腕を挙げる、下げる(机の上にゆっくりと音を鳴らさずに置く)動作を、教員の声かけに合わせて素早く動かすことにも取り組みました。旗上げゲームのような感じです。

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(画像はApp Storeより)

フロアバレーボールの前衛プレイヤーは、後衛の指示に合わせて左右へ素早く移動することが求められますが、左右の瞬時の判断が苦手な子がいたためでもあります。

「右上げて」「左下げて」などの単純な上げ下げだけでなく、「両手上げて」「右上げない(下げない)」「左あげないで、右下げて」など声かけを複雑にすると難易度が上がります。

力加減のコントロール(他者に合わせて力を調整する力)を鍛える

ボディイメージを高めるの④腕を大きく回すもそうですが、力加減を調整するのが苦手な子が多く、また相手に合わせて力加減を調整するような機会もあまりなかったようで、このような内容にも取り組みました。

①手のひら合わせ

自分の胸の前で両てのひらを合わせて押し合います。大抵、聞き手の方が力が強いので、身体の正中線でつり合うよう、左右の手の力加減を調整します。

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(画像は人間ドックのここカラダより)

②壁押し

壁に両てのひらを当てて押しながら、入れる力の強弱を試します。最初は両足を肩幅くらいに開いた状態で、それからはアキレス腱を伸ばすように左右の足を前後にした姿勢で押すことで、体重が乗り、入る力が変わる感覚を体験します。

またこの姿勢と体重を乗せる感覚(前後の体重移動)は、フロアバレーボールのアタックなどにも繋がります。

③手押し相撲

まずは教員と生徒で腕一本分ほどの間隔で向かいあい、お互いの手のひらをくっつけます。そこからお互いに力加減を調整し、押したり押されたりを繰り返しながら、お互いの力が釣り合うように(2人の真ん中くらいの位置に手がキープされるように)します。何度か練習して感覚をつかめたら生徒同士でチャレンジしました。

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(画像は子どもの遊びポータルサイトミックスじゅーちゅより)

④背中ぴったり

脚を伸ばして座った状態で2人で背中合わせになり腕を組みます。そこからお互いに背中で押し合いながら、徐々にひざを曲げていき、立ち上がります。これもお互いの力加減が重要で、まずは教員と生徒のペアから練習をスタートしました。

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(画像は日本レクリエーション協会 背中ぴったりより)

ラジオ体操や視覚障がいスポーツに向けて

このコグトレに取り組む前は、ラジオ体操や視覚障がいスポーツなどで姿勢を修正するよう声かけをしたりこちらが姿勢を直しても、定着しない、指示を聞き入れない子も多くいました。
おそらく、求められる姿勢のボディイメージがわからないこと、求められる姿勢と現在の自分の姿勢の違いがわからないこと、なので自分の姿勢が正しいと思っている(実際にはこちらの求めるものとはズレているのだけど)ことが原因ではないかと思われます。

ところが、いくら伝えても改善しようとしなかった子が、コグトレの取組みを続けていると、こちらのアドバイスを受け入れるようになったのです。

コグトレ棒や壁を使って繰り返し確認できたので、背中を伸ばすことやひじを伸ばすことなどのボディイメージがわかり、それによって今までの自分の姿勢が違っていたことに気づいたそうです。

①整列

まず整列ときの前にならえで、ひじが伸びて腕が真っ直ぐ前に突き出されるようになりました。コグトレの前の姿勢のイメージです。それからは次のステップとして、手のひらの向きや指先を伸ばすことにも取り組みました。冒頭でも紹介しましたが、指を真っ直ぐ伸ばすのはなかなかイメージがつきにくいようで、「いただきますでくっつけた手をそのまま離すようにして」と伝えていました。

②ラジオ体操

コグトレで確認したボディイメージと同じ姿勢をとるラジオ体操の動きは沢山あります。肩の高さで腕を止める、頭ごと上体を反らす、体を横に曲げる、体をねじるなど、授業で行っている動作がラジオ体操の動きに繋がっていることを伝え、授業の中でも体育のラジオ体操でも声をかけることで、動きが見違えるようになりました。

③視覚障がいスポーツ

何度も言いますがフロアバレーボールやグランドソフトボールの前衛プレイヤーがブロックや守備をするときには蹲踞の姿勢をキープしたり、その状態で左右に動くことが求められます。それまでの体育ではフロアバレーボールの前衛で蹲踞の姿勢がキープできない生徒が多かったのですが、コグトレをはじめると姿勢が安定し、スムーズに練習に入ることができるようになりました。また力の入れ方を確認したことで、フロアバレーボールのアタックやグランドソフトボールのバッティングでも後ろから前に体重移動させるイメージが理解しやすかったようで、例年よりも力強いアタックやバッティングが見られました。

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(画像はJFVA 日本フロアバレーボール連盟より)

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(画像は愛媛新聞ONLINEより)

体育の授業でそのフォームだけを練習しても形だけになってしまい、また限られた時間の中でゲームを行うことを考えると練習の時間や回数も限られます。

コグトレを通してボディイメージを高め、基本的な姿勢を繰り返し練習したことは、遠回りのようで実は近道だったのかもしれません。

まとめ

コグトレで指示される姿勢のボディイメージを繰り返して確認し、子どもたちは自分で背中を伸ばす、肘を伸ばすなどの姿勢と、それまでの自分の中の背中を伸ばす、肘を伸ばすのイメージの違いがわかるようになりました。その結果、それまでラジオ体操などで姿勢の修正を指示されても全く聞き入れなかった子が、「この姿勢はコグトレの○○と同じだよ」と伝えることで自分の姿勢と指示された姿勢が違うことがイメージでき、こちらのアドバイスを聞き入れて自分の姿勢を修正するようになりました。

また例えば蹲踞の姿勢をフロアバレーボール前衛のブロックと同じ姿勢と関連づけたり、フロアバレーボール前衛のアタックやグランドソフトボール打者のバッティングなど体重を後ろ(バッティングでは右利きの場合は右側)にためて打つ瞬間に前(バッティングでは右利きの場合は左側)に傾けるイメージなども確認したことは、体育授業での練習にスムーズに取りかかれることにもつながりました。結果的にフォームやプレイ内容も良くなり、それが子どもたちの楽しみや自信に繋がったのではないでしょうか。

また力の加減や調整は、自分と他者では力が違うことや相手に合わせることの必要性の理解になり、道徳でも取り組んでいた自分と他者の違いや他者の感情を考えることにもつながりました。

なにより子どもたちが楽しんで意欲的に取り組んでくれたことが大きかったです。

視覚障がいの子たちへのコグトレの実践報告、どうでしたか。僕自身はとても有効だと思いますので、いろんな盲学校などで広がり、子どもたちの成長に役立ったら嬉しいなと思います。

よければ参考にしてください。


参考にしたサイト・書籍

コグトレ研究会

『不器用な子どもたちへの認知作業トレーニング(宮口幸治/宮口英樹)』



表紙の画像はコグトレ研究会より引用しました。