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板書・プリントとノートの話「赤のチョークはダメですよ」「シンプル イズ ベスト」

見えにくい弱視と言っても、視力が低い、視野の狭い、光が眩しすぎる、暗いと全然見えない、色がわかりにくいなど様々です。最初にお伝えしますが、これだけやれば絶対にオッケーという支援はありません。見え方は同じ眼の病気でも、個人によって異なります。また視野障害と視力障害(中心暗転も)では、縮小と拡大という正反対の支援が必要になります。
ただ、弱視の子にどんな支援が必要かを知っておくと、意外と見えている子(目えていても見ていない子は意外と多いんです)にも有効な部分はありますよ。

黒板の板書について

①座席

大前提として、視力障害の場合は当然黒板に近い教室の前の席がいいです。でも、一番前の席が指定になるのが嫌な子も当然います。周囲の受け入れる雰囲気も不可欠です。臨機応変に対応しましょう。
ただ視野障害やまぶしさに弱い、暗いと見えにくくなるなどの場合は、座席の位置にも気をつけましょう。視力はあるけど視野が狭い場合は真ん中〜後ろの席にする、まぶしさに弱い場合は廊下側の席にする、また個人で明るさを調整できるよう机にライトを設置するなどの支援が有効です。

②レイアウト

板書の際は、「めあて」「まとめ」などを使った定型の書き方をする、教科書のページ数を示すなどが有効です。それでも見にくい場合は事前に板書計画のプリントを配付するのも方法の1つです。iPadで板書の写真を撮ってもいいでしょう。
目で見て写すことが目的なのか、内容を理解することが目的なのか、目的によって支援の方法を使い分けましょう。

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(画像は佐賀県教育センターホームページより)

③チョーク

深緑色の黒板に、白や黄色のチョークはコントラストがはっきりして見やすくなります。赤や青、緑のチョークはなるべく使わず、使う際は形などで色がわかるように気をつけましょう。実は赤や緑が識別しにくい色覚異常の子はクラスに2〜3人ほどいてると言われています。

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(画像は学校保健より)

また理化学工業から、色覚異常の方も見やすい「ダストレスeyeチョーク」が販売されています。値段は通常のチョークと同じです。

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(画像はねとらぼより)

プリントについて

①文字とフォントポイント

「文字とフォントの話」でもお伝えしましたが、一般に弱視の子にとって、ゴシック体は線が全て太くはっきりと見えやすいと言われています。ポイントは大きいほど見やすくなりますが、視野が狭い場合は小さい字が見やすい場合もあります。

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(画像は保健師のまとめブログより)

②行間と字間

また文章の行や文字の間隔をある程度あける方が見やすくなります。行間がつまっていると文字が重なって見えることもあるのです。

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(画像はビジネスとIT活用に役立つブログより)

しかし、文字間や行間の間隔が大きすぎると、視野の狭い子がわからなくなってしまうことに注意してください。
これはテストなどの名前欄も同じです。
行間が広いと、どこに名前を書くのかわかりません。

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(画像は記者作成より)

名前欄には下線があると、視野が狭くてもどこに書くのかがわかります。

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(画像は記者作成より)

③文章の表示

素早く読むのに課題のある場合、一文字ずつ拾い読みしていたり、文節や言葉の意味を理解できていないことがあります。その場合、文章を/(スラッシュ)で区切ると読みやすくなります。

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(画像は記者作成より)

行を短くすると、視線移動距離が短くなり、どこを読んでいるのかがわからなくなる子は読みやすくなります。
また縦書きと横書きとどちらかが読みやすい・読みにくい子もいますので、読みやすい方を知っておくといいですね。

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(画像は記者作成より)

④筆算の補助線

筆算は書くうちに数字の位がずれてわからなくなってしまうこともあります。補助線を入れるだけで、ズレの問題が解決です。

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(画像は記者作成より)

⑤選択肢と傍線部

視野が狭い場合、画像上の選択問題では、最後の選択肢エ.を見逃してしまうかもしれません。必ず左詰で選択肢の記号が縦に並ぶようにしましょう。選択肢はなるべく1行にまとめ、ページをまたぐことのないよう気をつけましょう。

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(画像は記者作成より)

また国語の長文読解で、弱視の子は見えている子のようにさっと一瞬で該当の部分を見つけ出すのは難しいです。該当部分の場所を示しているとずいぶん楽になります。

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(画像は記者作成より)

⑥図形

図形は右側のように枠線を太くした方がよく見えます。色ぬりやハサミで切るときも同じです。
図形全体を黒くするとよりはっきりと強調されて見えます。発達障がいの子にもわかりやすいですし、校内誘導掲示の矢印は右側のようにするといいでしょう。

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(画像は記者作成より)

⑦写真や画像の補助線(グリッド)

理科の観察など写真や画像を写して描くときには、画像に補助線(グリッド)を入れると描きやすくなります。これは視覚認知の弱い子、絵の苦手な子にも有効です。iPadなどでは、写真撮影でグリッドを入れることができます。

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(画像は百花繚乱より)

⑧地図などの図

海岸線など細部にこだわらなければなるべくシンプルな方がわかりやすいです。

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(画像左は白地図専門店、右はSILHOUETTE ILLUSTより)

ここまでシンプルにはいかなくてもこれくらいで十分の場合がほとんどです。

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(画像は東北地方 白地図集より)

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(画像左はエルムくんと金谷梅園のblog、右は福原のページ(植物形態学・生物画像集など)より)

また市販の地図帳は都市や自然、道路や鉄道、特産品などが重なってわかりにくいので、同じ縮尺で項目ごとに複数枚あるとわかりやすくなります。ファイルに綴じて見比べると頭の中のイメージで地図を重ねることもできます。

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(画像はFlameillustより)

⑨漢字

弱視の子の多くは漢字を苦手としています。細かく画数の多い漢字はとても見にくいですし、やる気がなくなる子も多いでしょう。読みを覚えるのではなく、文章を読むのが目的の際は、ルビを振ってしまうのもひとつです。

初見の漢字は細部まで見えるように拡大し、トメ・ハネ・ハライがわかるよう明朝体や教科書体をしましょう。

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(画像は記者作成より)

また漢字を書く際も、一画ずつ写すより、部首や部品などのパーツに分解して言葉で伝える方法もあります。例えば「親」という漢字なら左上に「立つ」その下に「木」、右側には「見る」という説明です。

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(画像はモリサワホームページより)

漢字の多くは似たような部品が組み合わさっているので、線を一本ずつ写しているような子には有効だと思います。漢字についてはまた『口で言えれば漢字は書ける!』著者 道村静江先生の実践を紹介します。

筆記用具や便利グッズについて

①ノート

ノートは罫線を太くすると見やすくなります。サインペンなどで線を引いてもいいですし、線の太いノートも売っています。コントラストがはっきりする黒いノートと白いペンもあります。

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(画像は日本ライトハウス情報文化センターホームページより)

②鉛筆・シャーペン・色ペン

鉛筆は2Bや3Bの濃いもの、シャーペンは同じく2Bや3Bで芯の太さは0.7ミリや1.0ミリなど太いものが見やすくていいでしょう。見え方によってはボールペンやサインペンがはっきりわかりやすいです。
また色覚に配慮して、赤にこだわらず青や紫など自分の見やすい色ペンを使うことも大事です。

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(画像はwithnewsより)

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(画像はAmazonホームページより)

また太く持ちやすい公文の三角鉛筆やグリップを使うと持ち方が安定する場合もあります。

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(画像は広汎性発達障害児ママの子育てブログより)

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(画像はブンドキ.comより)

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(画像はAmazon.co.jpより)

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(画像はLOHACOより)

太いマジックペンで描く際にうつりが気になる場合には、「プロッキー」や「紙用マッキー」などの水性顔料系インクのものを使うと、薄い紙でも色うつりしにくいのでおすすめです。

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(画像はTwitter@onigirhsunnより)

③タイポスコープ(スリットや読字・サインガイドとも)

弱視の子はノートを書く際、どこに書いたか、今どこに書いているかがわからなくなることがあります。また真っ直ぐに字を描き進めるのが苦手な子も多いです。
そんなときにはタイポスコープが活躍します。ノート用だけでなく、ハガキ用のものもあります。

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(画像は加齢黄斑ドットコムより)

タイポスコープは自作できます(枠をダウンロードできます)が、販売もしています。

またタイポスコープは読むときにも活躍してくれますよ。視野が狭い子や視覚認知が弱い、いろいろなものが気になりすぎてしまう子が、どこの行を読んでいるのかわからなくなってしまうときに活用できます。黒い下敷きなどでも代用可能です。

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(画像は加齢黄斑ドットコムより)

タイポスコープやノート類は日本ライトハウス情報文化センター日本点字図書館わくわく用具ショップなどで販売しています。

④読書ガイド

タイポスコープを使わなくても、透明なファイルや下敷きに黒マジックペンで線を引くだけで読書ガイドになります。今どの行を読んでいるのかがわかれば、読み間違いも減っていきますよ。もちろん指差しでもオッケーです。本人にあった方法を選びましょう。

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(画像は記者撮影より)

⑤白黒反転

白黒反転(文字や線を白、図を黒)にすると、コントラストがはっきりして見やすくなることが多いです。

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(画像は福祉用具プラザ北九州より)

ただ全てのプリントを白黒反転にするのはインク代がかかるのが難点です。拡大読書機の白黒反転を使う、iPadなどで写真を撮る、データを送るなどして反転機能を使うなどもいいでしょう。

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(画像はエクストラホームページより)

iPhoneやiPadで白黒反転する方法はこちら
iPhoneやiPadでの白黒反転をショートカット設定する方法はこちら
Androidで白黒反転する方法はこちら。Windowsで白黒反転する方法はこちら
Windowsで白黒反転をショートカットキー入力する方法はこちらです。

⑥定規類

文字が大きい、白黒反転、触ってメモリがわかるなど配慮された定規、三角定規、分度器、ぶんまわし(コンパスのように円を描くもの)、メジャーなどが販売されています。百均などにもありますよ。

コンパスで長さが調整しやすいよう、定規の0メモリに穴を開けてコンパスの針を入れれるように自作する方法もあります。

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(画像は加齢黄斑ドットコムより)

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(画像は川崎市視覚障害者情報文化センターより)


さて、黒板の板書やプリント作成の注意点、ノートなど筆記用具について説明してきました。わかりにくい部分も多く申し訳ありません。また関連する内容についても記事を書いていきたいと思います。

今回の表紙画像にはモリサワのフォント見本を使用させていただきました。