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障がい者手帳があれば利用できるサービス その2 交通編

身体障がい者手帳や療育手帳(東京都の愛の手帳)、精神障がい者保険福祉手帳の障がい者手帳を持っていると、いろいろな福祉制度を利用できることは知っていますか。

自治体によって利用できる福祉制度やその対象は異なる場合もありますが、障害者手帳があれば税の減免や、交通、施設などの割引や免除受けることができます。

今回は交通関係の情報をまとめて紹介していきます(最後に他の福祉制度について紹介した記事を掲載しています)。

手帳の区分 第1種と第2種について

障がい者手帳にはそれぞれの障がい区分による等級があり、その程度によって「第1種」と「第2種」とに分けられます。この第1種か第2種かや単独乗車か介護者と一緒の乗車かにより割引の取り扱いが異なりますので気をつけてください。

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(画像は大阪市福祉のあらましより)

1 鉄道関係(JR・地下鉄・私鉄各社)

第1種で介護者とともに利用する際は、本人・介護者ともに乗車券が5割引になります。距離の制限はありません。

また第1種で単独乗車なら、片道100キロを超えて利用する場合に限り乗車券が5割引になります。

第2種には介護者の割引は基本的にありませんが、12歳未満の障がい児が定期乗車券によって利用する場合に限り、介護者のみ5割引になります。

第2種で単独乗車なら、第1種同様、片道100キロを超えて利用する場合に限り普通乗車券が5割引になります。

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(画像は大阪市 福祉のあらましより)

以上がJRの規則ですが、私鉄各社も基本的にこれに準じています。

*割引制度を利用する場合は、JRのみどりの窓口など、乗車券購入時に障がい者手帳の提示を求められます。手帳を預けて代理人が購入することも可能です。券売機で買うときは「福祉」のボタンを押すか、なければ「こども」のボタンを押して購入し、改札口の駅員さんに相談しましょう(特例として認められているようです)。券売機でも手帳の提示を求められることもあります。ちなみに多くの券売機でテンキーを押すと音声案内がスタートし、券売機の隣には点字運賃表が設置されています。

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(画像は記者撮影より)

*介護者の割引を適用する場合は、同種・同等の乗車券を購入する場合に限ります。異なる種別・区間を購入する場合は適用されません。平たく言えば、介護者なんだから乗る駅も降りる駅も一緒ですよねってことです。

*手帳の入手でも紹介したアプリ「ミライロID」に対応した交通機関がJRも含めて広がり、とても便利になっています。

*5割引で10円未満の端数は、JRは切り捨て、私鉄各社では切り上げのところが多いです。買うときは迷ったら「福祉」か「こども」のボタンです。「こども」で購入した場合は、改札口でその旨を伝えましょう。

*割引になるのは乗車券のみで特急券は対象外です。なので例えば東京〜大阪間を新幹線のぞみ利用の場合、乗車券が8,910円、特急券・指定券が5,810円で合計料金は14,720円になります。ここで5割引になるのは乗車券8,910円だけなので、8,910円の5割引→4,450円+特急券5,810円で割引料金は10,260円になります。意外と安くならないので注意してください。

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(画像はJRおでかけネットより)

*また新幹線のネット予約も障害者割引の対象ですがクレジットカードの事前登録が必要となります。

*新幹線乗車時には、車椅子などの肢体不自由や視覚障がいの場合、駅係員さんによる誘導や介助が充実しているそうです。

100キロ以上は路線距離なので、実際とは異なりますが、直前距離で100キロ以上というと、東京駅からなら静岡県の沼津や群馬県の前橋、栃木県の宇都宮辺り、大阪駅からなら兵庫県の赤穂や和歌山県の田辺、三重県の四日市辺りでしょうか。なかなか普段は移動しない距離ですね。

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(画像は祐気取り.comより)

また大阪や東京など、地下鉄やバスの無料乗車証や割引証を交付している自治体もあります。

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(画像は東京都交通局より)

*大阪市の場合、1年1回発行で無くしても再発行してくれません。厳しい。

地下鉄はそもそも100キロを超えることがないものも多く、大阪メトロや横浜市営地下鉄などのように、第1種も第2種も距離に関係なく介助者と同乗時は5割引になっている場合もあります。

ICカードが利用できる場合もあります。

*JR東日本のSuica(スイカ)は、通常通り乗車して、割引が適用される場合は降車駅の改札で手帳を提示して伝えると割引運賃が引かれるそうです。JR西日本のICOCA(イコカ)は対応していないそうです。

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(画像はJR東日本より)

*関西の私鉄では、「スルッとKANSAI特別割引用ICカード」が利用できます。第1種の方を対象に、本人用と介護者用とがあり、割引運賃が適用されます。

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(画像はスルッとKANSAIより)

定期券も普通の乗車券とおなじ条件で5割引での購入が可能です。また学生の場合は、障害者割引ではなく学生割引での定期券購入となります。

ちなみに同行援護や移動支援のガイドヘルパーさんや家族、友だちなどと一緒に利用するときには、改札で切符を2枚連続で投入すると2人とも通過できるというテクニックがあります(一部非対応の私鉄もあります)。ガイヘル時代に活用していました。

2 バス関係

バスも電車同様ですが、100キロ超の距離条件は基本的になくなります。

第1種は単独時及び介護人と同乗時に、本人も介護人も5割引になります。また第2種の単独乗車時の5割引も多くのバス会社で設定されているようです。

最近はノンステップバスも増えてきましたね。

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(画像は伊予鉄より)

また大阪や東京など、地下鉄やバスの無料乗車証や割引証を交付している自治体もあります。

*バス会社によっては、第2種でも介護人5割引が認められたり、小児のみ介護人5割引が認められたりするケースがあるようです。

*高速バスや夜間バスでも障がい者割引のある場合があります。ただインターネット上の予約は難しく、電話や直接窓口に行くなどの必要があるようです。

京王バスでは、車椅子の場合、介護人2名まで5割引になるそうです。そういえば昔の大阪市営地下鉄でも交渉したら2人まで割引にしてくれた気が…規定がどうなのかはわかりませんが。

3 船舶関係

船舶は、定期船やフェリー、高速船などで、第1種・第2種に関係なく、本人及び介護人が5割引になるところが多いようです。

フェリーでは、客室料金も半額になるようです。ただし、乗用車やバイクは対象外です。

太平洋フェリーでは、客室ドアは引き戸、トイレは身体障害者用シャワートイレになったバリアフリー対応客室がありました。

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(画像は太平洋フェリーより)

4 航空機関係

一部航空会社では障がい者割引があります。多くの場合、第1種・第2種に関係なく、12歳以上で、本人及び介護人が割引料金適用になります。

割引料金は航空会社と航路や時期によって異なるようですが、正規料金の6〜7割程でした。小児料金よりも若干高目に設定されています。

障がい者割引があるのは、以下の航空会社でした。

ANA(全日空)
JAL(日本航空)
スカイマーク
AIR DO(エア・ドゥ)
ソラシドエア
スターフライヤー
フジドリームエアラインズ
(トラベルコより)

LCCなど格安航空会社(ジェットスター、ピーチ・アビエーション(ピーチ航空)、春秋航空日本、エアアジア・ジャパン)には障がい者割引はないようです。

*航空券の購入や搭乗の際には、手帳の提示が必要になりますが、手帳情報を登録したマイレージカードなどがある際は、そちらで手続きできるようです。

*航空会社によっては、機内用車椅子の貸し出しや筆談ボード、点字の「安全のしおり」、上体固定用ベルトの貸し出し、優先搭乗など障がい者への様々なサービスがあるようです。

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(画像はANAより)

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(画像はJALより)

5 タクシー関係

タクシーは障がい者手帳を提示すれば、等級に関係なく料金が1割引になります。乗車する際に提示するのが良いそうです。

自治体によっては、市役所の障害福祉窓口に申請することで無料のタクシー券を配布している地域もあります。タクシー券の金額は自治体によっては異なりますが、3〜4万円程が多いようです。場合によっては、リフト付きタクシー券を配布している自治体もあるそうです(大阪市の場合、無料乗車証との併給は不可など)。送迎費用の取り扱いについてはタクシー会社によるそうです。

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(画像はRepeLより)

*タクシー券は全国どこでも使えるわけではなく、その自治体が対象とするタクシー会社だけで使えます(多くの場合裏面に記載)。

また最近は福祉タクシーや介護タクシーも増えてきました。それぞれの特徴を説明しておきます。

福祉タクシーは車椅子のままで乗車できるリフト付き車両のタクシーですが、基本的に乗降介助などのサービスはないようです(運転手・乗務員が介護職員初任者研修の資格を有している場合は可能)。
介護タクシーは、運転手・乗務員が介護職員初任者研修の資格を有している場合は、病院への送迎や外出、旅行などの際、ベッドから車までの乗車、目的地までの移動、降車後の移動などのサポートを行います。
また買い物や着替え、食事、掃除などの生活援助や排泄・入浴時の介護を行うこともあります。
介護タクシーには、介護保険を使用して利用できる介護保険介護タクシーと、介護保険を使用せず現金などで精算する介護タクシーがあるようです。
アイラス福祉移送ネットワークより)

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(画像は福祉タクシーサービスおおはしより)

6 自動車関係

①有料道路料金割引

自動車を身体障がい者手帳所持者が運転する場合、または介護者が第1種の身体障がい者・知的障がい者と同乗して運転する場合には、申請すれば、高速道路などの有料道路料金が5割引(端数は繰り上げ)になります。

割引利用には事前に各自治体の障害福祉課などに申請して使用する自動車を登録し、手帳に「有料道路割引」のスタンプを押印してもらい、料金所で提示する必要があります。

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(画像はCARD EXPRESSより)

ETCカードの利用を申請をすることも可能です。但し、2年間の期限がありますので注意してください。

認定されるのは障がい者1人につき1台のみで、貨物自動車の場合は乗車定員4名以上になります。軽トラックや事業用車、レンタカー、借用自動車、タクシー、代車などは認められないので気をつけてください。

②駐車禁止除外指定車標章の交付

以下の障がい種別・等級(程度)の方は、最寄りの警察署に申請することで、駐車禁止場所でも標章を提示することで駐車することが認められるようになります。

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(画像は大阪市福祉のあらましより)

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(画像は神奈川県警察より)

*認められるのは、障がい者本人が運転するか、同乗している場合のみです。また標章を見える場所に提示する必要があります。

*どこでも駐車できる訳ではありません。詳細はこちらの京都府警察のホームページで確認してみてください。

③自動車駐車場使用料の減免

自治体の運営する駐車場使用料の減免を受けれる場合があります。割引や対象は各自治体によって異なります(大阪市の場合は、手帳の等級にに関係なく障がい者本人が運転する、もしくは同乗の場合に5割引になります)。

④身体障がい者用自動車改造費の助成

自治体によっては、上肢、下肢または体幹機能障がいにより身体障がい者手帳の交付を受けていて、運転免許を所持しており、就労など社会参加のために所有する自動車の改造を必要とする場合は、10万円を上限(自治体によって異なる)に自動車改造費の助成を受けることができます。

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(画像は障害者のドクゼツ本音とーくより)

*新車・中古車問わず、自動車購入の際に業者に申請を依頼することもできるようです。

⑤自動車税・自動車取得税の減免

以下の障がい種別・等級(程度)の方で、身体障がい者手帳所持者が運転する場合、または介護者が第1種の身体障がい者・知的障がい者と同乗して運転する場合には自動車税と自動車取得税の減免を申請することができます。

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(画像は大阪市福祉のあらましより)

*認定は障がい者一人につき1台で、軽自動車税の免除との重複申請や営業車の申請は認められません。

⑥軽自動車税の免除

以下の障がい種別・等級(程度)の方で、身体障がい者手帳所持者が運転する場合、または介護者が第1種の身体障がい者・知的障がい者と同乗して運転する場合には自動車税と自動車取得税の減免を申請することができます。

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(画像は大阪市福祉のあらましより)

⑨レンタカー代金の割引

日産レンタカーでは、対象車両は限定されますが、手帳を提示することで基本料金が10%割引になります。

*他の割引制度、キャンペーン、旅行会社や提携サイトからの割引料金とは併用できません。

⑧障がい者団体等に対するバス借上料の助成

自治体によっては障がい者やその支援者による団体が貸切バスを使用して活動等を行う場合に、借上料に要する経費の一部の助成を得ることができます。

*障がい児・者の人数や団体の所在地などの利用条件、助成費用の上限や年間の利用回数などは自治体によって異なります。

7 自転車関係

自治体によっては、自動車駐車場と同様、自治体の運営する駐輪場使用料の減免を受けれる場合があります。割引や対象は各自治体によって異なります(大阪市の場合は、手帳の等級に関係なく5割引になります)。

まとめ

今回は交通関係の障がい者手帳があると使える割引などを紹介しました。鉄道やバスは有名ですが、飛行機や船舶、タクシーや高速道路、バスの借り上げなどは知らない方も多かったかもと思います。

手帳を持っているのに福祉サービスを知らなくて利用しないのはもったいないですし、いろいろなサービスを知ることが家や学校、職場からより広い社会へ出ていくきっかけになるかもしれません。書いていてガイドヘルパーをしていたときのことを思い出しました。

今後も手帳があることで受けられる福祉サービスを紹介してきます。


参考にしたサイト

大阪市 福祉のあらまし

誰かのために役立てば。「JR障害者割引の概要とSuica・新幹線の割引適用・購入方法」

RepeL

トラベルコQ&A



表紙の画像は一般財団法人メルディアより引用しました。