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音読、してますか??

 みなさんは国語の授業で何を大切にされていますか?国語科の授業については本当に様々な教育書が出版されていますし、熱心に勉強されている方も多いことでしょう。

 僕が国語の授業で最も大切にしているのはずばり「音読」です。新出漢字をサラッと扱ったら、あっという間に音読を始めます。しかも、全文音読です。教材文によっては、先生による範読であっても20分はかかる作品もあります。それでも読みます。しっかりと聞かせて、しっかりと読ませます。

 なぜなら音読指導こそ読解力の基礎であり、音読はやればやるほど伸びるものであり、クラスの音読を聞けばその先生の国語の授業の質が分かるといっても過言ではないと僕は信じているからです。さあ、これを読めば、あなたも明日から音読漬けの国語の授業がしたくなりますよ。

 少し話がそれますが、読解力とはなんでしょうか。読解力の定義はなかなか複雑です。僕は読解力とは「読んだ文章を頭の中でイメージ化できる力」これを読解力だと考えています。文字という情報からイメージするために必要なものはなんでしょうか。様々な知識、多様な生活体験、豊富な感情・・・。決してそれらは国語科だけで養われるものではなくて、その人の人生すべてが「読解力を養う活動」であると思います。だから、安易に読解力の向上を謳いたく無いし、それは眉唾物であると思います。

 しかし、読解力の基礎は音読で養えます。養える力は2点あります。

一つ目は語彙力。いわゆる、ボキャブラリーです。英文だって、単語を知らなければ読めませんよね。繰り返し音読をすることで、様々な語彙を効率的に獲得できると考えます。

二つ目は文章を読むスピード。ある程度の長い文章を読む場合にはこのスピードが求められます。もう少し詳しくスピードについて説明すると「一度に把握できる文章の量を増やす」かなと思います。「たけしくんが肉まんを食べた」と「四人兄弟の末っ子で甘やかされて育った恰幅の良い体型であるたけしくんが、近くのセブンイレブンで買った300円の高級肉まんを食べた」では、後者の方が把握することが難しいことは明白です。これを把握するためには、やはり文章を読むことへの「慣れ」が必要です。音読を繰り返すことで、文章への慣れが生まれてくるはずです。

 そもそも音読とはなぜするのでしょうか。多くの先生が宿題として課している音読。保護者が児童の音読を聞いて、聞き終わればハンコを押すというシステム。保護者からすれば、仕事や家事で忙しい中、子どもの音読を聞かないといけないなんて正直めんどうくさい、なんて声が聞こえてきそうですね。

 先生方の中にも音読の効果をイマイチわかっていないのか、新しい教材文にもかかわらず、先生からの範読もせず、児童の音読も少しだけして、あとは本文読解なんて授業も見ることがあります。

 しかし、それではダメなのです。保護者のみなさんには、できるならお子さんの音読は聞いてもらってほしいし、先生方は新しい教材文が始まったら必ず範読をして教材文の正しい読み方を聞かせて、子どもたちには飽きるほどの音読をさせてあげてほしいのです。文章をスラスラと読むことができて、初めて読解という行為にたどり着くのです。

 音読と黙読の関係性も話したいと思います。みなさんの多くは文章を読むときに黙読をすると思います。そのとき頭の中では音読をしていませんか?

 本をパラパラめくりながら読む、いわゆる速読法と言われる方法の中には、この頭の中の音読をやめなさいという文言に出会うことが多いですが、そんなパラパラと本を読める人はめったにいないわけで、多くの人はやはり黙読をするときには頭の中で音読をしていることかと思います。

 聞いた話では、多くの人はだいたい10歳ごろに「黙読のスピードが音読のスピードを超える」そうです。これは感覚的にわかりますよね。5歳の息子はひらがなを覚えたてですが、ひらがなを読むときには、ほぼ毎回、声に出して読んでいます。つまり、読むことの基本は音読であり、音読に慣れてくると10歳ごろに黙読の方が早くなるということです。

 しかし、音読への慣れが無い児童はどうでしょうか。音読のスピードがいつまでもあがらないわけです。それは黙読のスピードも上がらないことと同じです。ゆっくりしか文章を読むことができない児童は、長い文章を読むことを嫌がります。当たり前です。読めども読めども終わらない文章なんて読む気にもなれません。学年が上がるにつれて学習への課題も出てくることでしょう。


 音読への慣れは音読のスピードアップを促し、それは長い文章を読める力へと変わり、その力は様々な教科につながっていく。ここまで書けば音読がどれほど大切な活動なのかを理解してもらえたかと思います。

 国語の授業中心に音読を据えてみましょう。45分の授業を漢字・音読・読解の三つにわけます。音読の活動に毎時間20分を取れば、残りは25分。5分の余裕をもっていればトラブルにも対応できるので残りは20分。漢字を7分として、読解は13分。

 どうですか?読解が少なく感じますよね。でも、これでいいのです。児童は繰り返し音読をする中で教材文が頭の中に入っています。この状態になれば、読解がとてもスムーズに進むのです。つまり、音読は読解を兼ねています。あとは、本時で触れておきたい大切なところを先生が解説しつつ黒板に書けば13分でも十分足ります。足りなくてもあなたは5分の余裕を持っています。これで明日からの国語の授業準備の時間は13分の読解指導における板書計画を考えればいいので楽ですよね。

 音読は全文音読を強くすすめます。文章とは最初から最後までで一つの文章です。それはみだりに切り取るものではありません。先生によっては一つの場面だけを音読させておしまいという先生もいるでしょうが、それはよくないです。場面をまたいで描かれている事柄に意識が向かなくなります。だからこその全文音読です。文と文の関係性をとらえさせるためにも必要なことなのです。いくら時間がかかってもこれは守ってほしいです。始めのころは40分かかったとしても、繰り返しクラスで音読をする中でそれは30分になり、25分になるでしょう。それが成長であり、その時間は是非計測してあげましょう。数字は使い方によってはモチベーションアップにつながります。


 多くのクラスから音読の声が聞こえる国語の授業になることを願っています。