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本作でのランスロットはファンが発狂するんじゃないかってくらい卑劣でカッコつけるだけのクズ男

コーンウェルのアーサー王物語を読み始めている。とりあえず第1部読了。

伝説というよりは歴史小説というノリなのでとても地味かつ独特な世界観。決して奇跡が起きまくる話ではないしアーサーも神のように強いわけでもない、一介の将軍として描かれる。

ブリテンはキリスト教に侵略されており、それはサクソン人による実際の侵略とキリスト教の神による侵略と、人と神、2つの階層で共に侵略されている。アーサーはブリテンをブリテン土着の神々の手に取り戻す存在なのだ。この宗教の伝播を神の侵略という概念で捉えるのは手塚治虫の『火の鳥 太陽編』で仏教が伝来してくるくだりを思い出す。

仏教の仏様たちが、八百万の神を次々に駆逐していく神々の戦いが描かれていたと思うのだけど、このアーサー王物語はそのイメージにとても近い。神々の戦いをブリテンの神の勝利に導こうとする存在が大魔法使いマーリンであり、サクソン人を打倒する将軍がアーサーなのよね。

アーサーは平和を望みながらも、グィネヴィアに一目惚れしてしまい、予定されていた結婚を破棄してグィネヴィアと結婚する。アーサーは完全にグィネヴィアに夢中になってしまい、その様子は魔法にでもかけられたかのような様子。そしてまたグィネヴィアも魔性の女というか傾国の美女として描かれる。それが元で団結しかけていたブリテンに争いが起きるし、アーサーと円卓の騎士たちが滅びるきっかけもまたグィネヴィアとランスロットの不倫な訳だから、魔性の女として描かれるのは致し方ないのかもしれない。

ややかわいそうなのはランスロットで、本作でのランスロットはファンが発狂するんじゃないかってくらい卑劣でカッコつけるだけのクズ男だ。戦では城から出ない、常に後ろに控え、勝つと我が物側で自らの手柄にする。品性下劣で騎士道精神とは無縁そうなキャラなのがかなり新鮮。マロリーの『アーサー王の死』ではランスロットは恋に狂って、発狂して蒸発する時期があったと思うのだけど本作でもこの後そういったシーンが出てくるのか実に楽しみ。

自分の好きなことを表明すると、気の合う仲間が集まってくるらしい。とりあえず、読んでくれた人に感謝、スキ押してくれた人に大感謝、あなたのスキが次を書くモチベーションです。サポートはいわゆる投げ銭。noteの会員じゃなくてもできるらしい。そんな奇特な人には超大感謝&幸せを祈ります。