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Music Never Left Him:アルツハイマーが影を潜めトニー・ベネットがザ・エンターテイナーに戻る瞬間

こんにちは、Megです。去る7月21日、大好きな Mr. Tony Bennett が96歳でお亡くなりになりました。今回はアメリカのミュージックシーンで70年以上活躍されてきた Mr. Bennett へのトリビュートです。

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聴くごとに感情が揺さぶられるあのお声、そして歌唱力。誰にも真似できない、ハスキーなんだけどシルキーなお声は聴けばすぐに彼とわかります。よく“Crooner”と呼ばれますが、まさに!彼のあの、大きな大きな笑顔は心から湧き上がってくる本物の笑顔なんだろうな、心が大きな方なんだろうなぁ…って、いつも思っていました。1990年代にはジャンルを超えて数々のアーティストと共演されているんですが、レコーディングの時に涙を流す Lady Gaga のその涙を拭いてあげたり、自分にとってヒーローである Tony Bennett との共演でとてもナーバスになっている Amy Winehouse の緊張を解いてあげたりと、歌の実力はもちろんなんですが人間力もすごくて、彼に続いていくアーティストらからすると大きなメンター的存在なんだろうなって思います。96歳で彼が亡くなってから、数々のスターはもとより彼が生まれ育ったニューヨークの街中が、そして世界中が彼に敬意を表しているのも納得です。

代表作に “I Left My Heart In San Francisco” がある Mr. Bennett ですが、生まれも育ちもニューヨークですからニューヨーク市民からとても愛され、リスペクトを受けていました。

人々の熱狂ぶりと嬉しそうな顔、顔!Mr. Bennett、素敵すぎます。それにしてもこのコンサートがあった2011年て、まさに私がニューヨークに住んでいた時ではないですか。こんな素晴らしいイベントがあった9月15日、何してた、めぐ?!当時のスケジュール帳を調べてしまいました…。他のイベントに行っておりました…涙。

更に2つ、ニューヨークがテーマの名曲 “New York State of Mind”、2008年と2019年のビリー・ジョエルとのデュエットです。

2つ目は2019年ですからアルツハイマー病の診断を受けて3年後。2021年に病気のことが公表されるまで人々は知らなかった訳なのですが、この時の Mr. Bennett を見てアルツハイマー病を疑う人などいないでしょう。

さて、“60 minutes” という番組でアンダーソン・クーパー氏が Mr. Bennett の最後のコンサートとその前後の様子を取材しています。
「先日のコンサート、どのように感じられました?」
というクーパー氏の質問に
「何の事かな」
と少し困惑した表情を見せる Mr. Bennett。アルツハイマー病がかなり進んでいることがわかります。数日前のステージ上では歌詞を忘れることもなく全く衰えを感じさせない堂々さで歌声を披露し、スタンディングオベーションを受けていたのに。その脳のメカニズムを彼のドクターが説明するシーンがあり、病院の待合室でもファンの呼びかけで瞬時にパフォーマーのトニー・ベネットの顔になるという話をしてくれます。(YouTubeの字幕をオンにして見ると英語の勉強にもなります。)

Lady Gagaとのインタビューでは、「リハーサル中はずっと Mr. Bennett から “Sweetheart” と呼ばれていた」、「実際自分のことを誰だかわかっていなかったと思う」、という話があります。バックステージでは「アルツハイマーのおじいちゃん」である彼を奥さんがステージまで歩いて連れて行きます。幕が上がり観客を見た瞬間に Mr. Bennett の顔がパッと明るくなります。大きく手を上げて満面の笑顔で観客の歓迎を受ける Mr. Bennett。それまでとても心配していた奥さんでしたが、ステージ上の彼を見て
「ライトのスイッチが入ったように自分自身が戻ってきた。大丈夫だと確信した」
と言っています。

ステージ上で “Lady Gaga!” と名前を呼ばれた瞬間、彼女が驚きと喜びの表情で崩れ落ちるシーンは感動の嵐です!Lady Gaga はその時のことを
「(感情を抑えるのが)大変だった、完売したショーを続けなくてはならなかったから」
と打ち明けています。Lady Gaga、すごいな、と思いました。

最後の一曲を歌い終えた Mr. Bennett の目を見つめ厳粛な面持ちで Lady Gaga が言います。
“Tony, we're all so grateful to have witnessed your talent, your generosity, your creativity, and your kindness, and your service throughout all these years. Mr. Bennett, it would be my honor to escort you off the stage.”(筆者訳:「私たちは皆あなたの才能、寛大さ、創造力、優しさ、そして長年にわたるご尽力を目の当たりにできたことをありがたく思います。Mr. Bennett、ステージからエスコートさせて頂ければ光栄です。」)
60年の年の差がありながらも最高の音楽パートナーとして活動してきたふたりが共にする最後のステージでもあります。この時も Lady Gaga は込み上げる涙と思いを抑えるのに精一杯という表情です。一方 Mr. Bennett は、自分がエンターテイナーとしてステージにいるというのはわかっていても自分の最後のステージだという状況までは把握していないでしょうから笑みを浮かべ
”Thank you.”
と応じます。そしてバンドの音楽が続く中、 Mr. Bennett は彼 Lady Gaga にエスコートされながら観客に手を振り最後のステージをあとにします。このシーン、何回見ても涙が溢れます…。

締めくくりに…おまけです。美しすぎる…。2016年”、90歳で “Tony Bennett Celebrates 90” をリリースされた時のステージ、最後の曲です。

アーティストについて書く時は毎回そうなのですが、特に今回は Mr. Bennett の何十年にもわたる功績・映像・音源がとにかく多くてなかなか進みませんでした…。気がつくと映像に釘付けになってニヤニヤしたり涙を流したりしてしまって、笑。長年にわたって私たちに素敵な歌を贈り続けてくださった Mr. Bennett、ありがとうございました。May your soul rest in peace.

ブログ www.Meg for Life では Mr. Tony Bennett の人生やディスコグラフィーに焦点を当てます。お楽しみに!

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