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森の中の美術館 光降り注ぐ 「POLA MUSEUM OF ART」


箱根の山中、国立公園内にある『POLA MUSEUM OF ART』に行ってきました。


○ 森の中のアプローチ


駐車場からのアプローチ 木陰が涼しい
緑のトンネルを歩き、気持ちが高まります


自然との共生をテーマにしているポーラ美術館は、周りの木々に建物の高さを合わせているため、森と同化しています。
表通りの道路からも、全景は見えません。

緑のトンネルを進むと、奥にガラスの建造物が見えてきます。

周りの木々 
どこに来たのか一瞬忘れてしまうほど


木のような表情ですが、トントンと叩いたら金属の音

実は、橋の上を歩いていることに気付きます。地面は数メートル下。
そこにも、彫刻が。

やっと建物に着きました。

○ 光降り注ぐ空間

重厚な扉と、軽やかなガラスの対比


天井には水が流れている様子
シルエットが浮かんでいます。


埋め込み式の傘立て
使わない時はフラットになるようです。


自動ドアは趣のある木の板


スタイリッシュ過ぎる消毒液。分かりづらくて途中で案内シール貼ったのかな?


一面が凹凸のあるガラス

天井が磨りガラスで、外側が透明なガラス。
内側は凹凸のあるガラス。
表情の違いがおもしろい。

エスカレーターを下がり、チケットカウンターと展示の階です。
まずはコインロッカーに荷物を預けて極力手ぶらになります。

と、コインロッカーの向かいに奥まったスペースが。なんだろう?と覗いてみると、スーツケースのクローク!
ワイヤーでカッコいい〜
さすが観光地ですね。

チケットカウンターは自動発券機でした。
美術館では初めてです。

○ ポーラ美術館の成り立ち

約10,000点のコレクションは、ポーラ創業家2代目の故・鈴木常司が40数年にかけて収集したものです。西洋絵画、日本の洋画、日本画、版画、東洋陶磁、ガラス工芸、古今東西の化粧道具など、多岐にわたります。優れた作品、豊かな自然、そして光に満ちた建築空間…。「共生」という理念が、美術館のすべてに息づいています。

ポーラは1946年に静岡市で創業しています。
日本が経済大国になっていく時代とともに、美術品の収集が行われたんでしょうね。

ポーラ美術振興財団は、1996年5月、ポーラ創業家二代目の故鈴木常司(1930–2000)が私財を投じ設立されました。人の内なる美しさと心の豊かさを至上の価値とし、美と文化に貢献することを目的に設立された当財団は、2010年7月に公益財団法人に移行しました。ポーラ美術館を運営する「美術館事業」と合わせて、財団のもう一つの重要な活動が「助成事業」です。日本の美術分野のすそ野を広げ、また国際的な文化交流を活性化させるべく、①若手芸術家の在外研修、②美術館職員の調査研究、③美術に関する国際交流の3つの分野に対する助成事業を毎年実施しています。「美術館事業」と「助成事業」という公益性の高い文化事業を実施し、継続してゆくことで、日本の文化の発展と国際交流の促進に寄与しています。

ポーラ美術復興財団は、美術館事業と、助成事業を実施しています。
助成事業では、若手芸術家の支援もしています。

美容分野のポーラが、日本の美、アートに注力するのは素晴らしいですね。
また、日本の芸術家の活躍の場が長らく海外になってしまって、アートの逆輸入も多い印象です。
そんななか、日本の企業が日本の若手芸術家の価値を高めて活躍の場を作っていることに、これからも注目したいですね〜

今回の訪問時にも、ポーラ美術復興財団が支援した芸術家の展示が行われていました。

https://www.pola-art-foundation.jp/foundation/index.html

○ HIRAKU project


HIRAKU Projectは、美術の表現と美術館の可能性を「ひらく」ため、財団の「若手芸術家の在外研修助成」を受けた作家の活動を紹介する、展覧会のシリーズです。ポーラ美術館開館15周年にあたる2017年より開始し、同年に新設された「アトリウム ギャラリー」を会場としています。

古い窓枠やレンズに、そこから当時見えていたであろう景色を映し出した作品たちが並んでいました。

《The Rings of Saturn:舷窓-アイリッシュ海》2020年、北川正人蔵 


アンティークのレンズや鏡に風景が写っています。
イギリスの木枠に当時の風景

タイムスリップしたような気持ちになります。
展示室の壁のライトグレイの色がぴったり。

作家プロフィール

1983年、埼玉県生まれ。埼玉県在住。2007年、東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻卒業。2015年、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。2022年、同大学院博士後期課程修了。2016年、「VOCA展2016 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」(上野の森美術館)VOCA奨励賞受賞。2018年度ポーラ美術振興財団在外研修員(イギリス)。

○ フィリップ・パレーノ この場所 あの空

企画展は、現代フランスを代表する芸術家の1人。フィリップ・パレーノの展示でした。

ギョギョ!


ぷかぷか

広い空間の中に、魚の風船が浮かんでいます🎈
錘で絶妙な重さに調節されているので、人が近づくと風圧でフワフワと、、
ふーっと息を吹きかけたり。

途中、フワフワと魚が出入り口に向かい、、脱走しちゃう?と思っていると、すかさずスタッフの方が虫とり網の枠を持ってきて、キャッチ!
無事捕獲していました。
警備員さんも、人を見守りながら、魚の見守りもしていて、和やかな光景でした。
警備員さんのお人柄もよく、笑いも生まれていました!
ハプニング➕インスタレーションですね〜

また、部屋全体が作品の一部なので、外環境によって作品の印象が変化するのも楽しめそうです。
私が行ったのは夏の晴れた昼間。生命力溢れた緑と空気がガラスの外に見えていました。
季節や時間帯、天気によって、魚の見え方が変わりそうですね。

まさに金魚鉢の中にいるよう


天井に集まる金色の吹き出し

○ 常設展


婦人像 作家名 アメデオ・モディリアーニ 制作年 1916年頃 技法・素材 油彩/板 サイズ 79.5 x 48.5 cm
レースの帽子の少女 ピエール・オーギュスト・ルノワール 1891年 技法・素材 油彩/カンヴァス サイズ 55.1 x 46.0 cm

帽子の質感と、髪の毛の柔らかそうな手触りに惹かれる。
女の子の生き生きとした若さがピンクの頬に現れています。

ムール貝採り  ピエール・オーギュスト・ルノワール 制作年 1888-1889年頃 技法・素材 油彩/カンヴァス サイズ 56.0 x 46.4 cm
ベルト・モリゾ ベランダにて 1884年
陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地
ヴィルヘルム・ハマスホイ 1899年


アザミの花  フィンセント・ファン・ゴッホ 制作年 1890年 技法・素材 油彩/カンヴァス サイズ 40.8 x 33.6 cm

ゴッホの花の絵といえば、ひまわりが有名ですが、青緑色が美しいアザミの絵も迫力がありました。はみ出しそうなアザミ。
テーブルも背景も同じ色で不思議なんだけど、妙に納得してしまう。
ゴッホがピストルで亡くなる約1ヶ月前の作品です。

散歩 クロード・モネ 1875年

やはり、クロード・モネが人気でしたね。特に睡蓮は終始人だかりでした。
ポーラ美術館の代名詞とも呼べる作品です。

太陽の光の下の明るい色彩と、屋外の開放的な雰囲気は、誰が見ても心地よい作品だと思います。
当時は皮肉られて印象派と呼ばれていましたが、今では、印象派という代表的なジャンルになりました。

○ ミュージアムカフェ チューン

お昼時になったので、ミュージアムカフェへ。
ホットサンドと、ケーキをいただきました。

ガラスのせいか、光にうっすら青みがありcoolな印象。
チューブの椅子がスタイリッシュ
パラソルの下の席を選びました。木漏れ日
店名がついたフランボワーズのケーキ「チューン」

子連れだけど、たまにはミュージアムカフェでゆったりした時間。
光射し込むスタイリッシュな空間でいただくと、子どもも雰囲気を察して、少し背筋が伸びる様子。

○ 屋外の遊歩道

美術館の周りとその先の敷地内に、遊歩道が1キロ程整備されていて、森林の中を散歩することができます。


入り口の下を潜ります
屋上で飛び跳ねる犬🐕
背の低い草と木がバランス良く
枕木が整備され、歩きやすい
幹まきテープで保護されている木。移植したんだろうか?処置まで丁寧で美しい。


こっそり犬🐕
巨木が生えていたり


輝いているステージのようなスポット
同化しつつ、存在感はあり

美術館、駐車場などの建設予定地に生える絶滅危惧種の植物を敷地内の森に移植したそうです。

○ 建築

建築設計は、箱根の自然を知ることから始まりました。広大な敷地内の動植物や地形、水流などを徹底的に調査し、設計図に落としこんでいきました。その結果、この土地の植物生態系を損なわない、自然への影響がいちばん少ない、現在の建築に辿りついたのです。当館は、建物のほとんどが地下に埋まっています。木々を越えないように地上8mの高さに抑える。森にとけこみ、一体となる。ゆるやかな傾斜地に直径74mの円形壕を掘り、免震ゴムを設置。安全免震構造によって、建築を浮かせ、人と美術品を地震や高湿度から守ります。円形壕は、地下の水脈を守りながら、土の圧力に対する安全性も確保します。建物の全部位にアクセスできる、永久メンテナンス構造です。多くの人に長く愛される、永く自然と共生できる建築を目指しています。


地震の時はここで建物が切り離される構造


直径74mの円形豪
エントランスが1階で地下に降りていく構造
前後にスライドする仕組み


最下層 黒い四角い形のものが免震ゴムになっている 
コンクリートの土台にガラス

美術館の周りの遊歩道を歩くと、土台部分の造りが良く見えます。
美しい上部の建築と違い、土木と言った感じ。トンネルとかダムとかそんな雰囲気。

敢えてそのまま見せてるのは、国立公園内の自然と共生した美術館という意義を表していますね。
カッコいいだけじゃないよ。というような。

○ まとめ

緑と光が降り注ぐような、森の中の美術館は圧倒的でした。
展示内容もさることながら、季節や時間帯を変えて訪れたくなる場所です。

そんなポーラ美術館が一夜限りの夜間イベントを開催するようです!
素敵だろうな〜 ご興味ある方は是非!


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