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都会の水は合わなかった

私は子供のころから水道水が大好き。

学校の蛇口を逆さまにして飲む水も好きだったし家の水道から汲んだ水を「美味しい美味しい」と飲んでいた。我ながら幸せなヤツ。
なんならジュースより水道水が好きだった。


大学生になり、関東某市でドキドキワクワク、初めての一人暮らしを始めた。
忘れもしない2日目。その日、初体験に遭遇する。


カップラーメンを完成させたのに、一口しか食べず処分してしまった。



存在を忘れて伸び切ってしまった…わけじゃない。
スープ前入れなのに入れ忘れた…わけでもない。


あまりにもカルキ臭かった。
ケトルで沸かした水道水があまりにも。

その土地の水を否定するわけではない。私の慣れというのが大きいと思う。
使っている薬剤の量も、もしかしたら地元の水道水と変わりないのかもしれない。

ただただ、蛇口から出る水が合わなかった
これが、かなりのカルチャーショックだった。

その日、初めて2リットルの天然水を購入した。
地元にいるときは、水を買っている人をみて「どうして水道水を飲まないんだろう?」と疑問に思っていた人間がである。


水が合わない


この言葉がはっと、頭に浮かんだ。
ガラケーから変えたばかりのスマホで検索した。

ー新しい土地の風土になじめないこと
(スーパー大辞林より)


この場合「水」は例えとして使われているはずなのに、この状況と合致してしまう。

新しい生活に馴染めなかったらどうしよう…
余計な不安に襲われる。

無理もない。ドキドキウキウキ一人暮らしは、序盤で思わぬ壁にぶち当たったのだ。
まさか料理用の水に水道水を使えないとは、思ってもみなかったから。

※大学4年にもなると普通に使えるようになった。慣れって怖い。


幸い大学では友達もたくさんでき、希望通りのサークルに入り楽しい学生生活をスタートできた。

しかし、水とのミスマッチは私の皮膚をも襲った。

まずアトピー発症。常に関節や、体のあらゆる皮膚に痒みが走った。地元から同じ市に移り住んだ友人も同じだったというから驚きだ。

その後、飲食店洗い場のバイトで洗剤負けしたことも影響してか、手湿疹を発症した。

これがかなりの難敵。
手が常にカサカサ、ぼろぼろ、深いアカギレ。手の甲のみならず、手のひらや、指先までバキバキになり、カマンベールチーズパンのようだった。

いい香りのする普通のハンドクリームでは歯が立たず、ワセリンとニベアを混ぜていたから私の手は常にベタついていた。スマホの画面は拭いても拭いても、いつも汚かった。

散々悩んで、いろんな皮膚科を受診したが一向によくならない。治療法を探すと「水に触れないこと」が重要という。そんなの無理に決まってる。
一生付き合う覚悟をしたところだった。



地元、福島に戻って丸5年。
これがすっかり治ってしまった


理由は多分、水だと思う。

願いが叶う水、などではない。
普通に水道から出てくる水だ。

地元に戻って2年間は、生まれ故郷とは別の街で勤務した。ここでアトピーがすっ、と治った。
でも手湿疹はひどく、冷たい水に触れるだけでも痛みが走った。

変化があったのは、生まれ故郷の郡山に戻り3年後の昨年。
毎年冬ごろ湿疹のピークが訪れていたが、この年はいつになっても手の痛痒さがこない。

春になってもこない。夏になっても…


これ、治ったわ!!(歓喜)

かくして地元の水が特効薬となり、9年間の手湿疹&アトピーとの戦いは幕を下ろした。

ネイルすらできない手だったが今ではばっちり、年相応の綺麗な手になりました。





人は生まれ育った環境に最も居心地の良さを感じるのかもしれない。「ノスタルジック」という言葉が、おそらく総じてポジティブな意味合いで使われるように。

関東での生活が嫌だったわけではない。むしろ記憶に残るのは楽しい思い出ばかりだ。皮膚の疾患への悩みは、ある意味どうでもいいくらいに。

ただ、地元に戻って確実に体調が良くなった。それは客観的事実として間違いない。

そういう意味ではやはり、関東の都会は「水が合わなかった」のかな、と少し思う。




※繰り返しにはなりますが関東地方の水道水の水質を批判しているわけではありません。逆に関東の方が東北の水質が合わない、ということももちろんあると思います。

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