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試行錯誤を経てたどり着いたブレイクスルー的機能「自動応募システム」、その誕生秘話を紐解いてみる

2019年12月にリリースし、今や見積もりプラットフォーム「ミツモア」の“コア機能”とも言える存在になったのが「自動応募システム」です。

通常であれば依頼時に事業者を探し、その後はメールなどでのヒアリングを経て見積もりを作成…という流れになります。しかし、それが事業者側にとっての繁忙期だったら? 見積作成の時間が取れず、本当は案件を取りたいのに依頼者側に提案ができないという事態に陥ります。そのすべてを数分で解決できるようにしたのが、「自動応募システム」でした。

実は自動応募システムが誕生するまでには、さまざまなトライアンドエラーがありました。その経緯を、開発を担当したミツモアCTOの柄澤エンジニアの坂本ともに紐解きました!

柄澤 史也@fmy (TOP写真左)
株式会社ミツモア 共同創業者 兼 取締役CTO
ヤフーにて4年間勤務。ヤフオクにてプロダクト開発、オフショアマネージメントに携わったのち、CTO室に異動。ヤフー全体を横断した技術支援などを担当した後、ミツモアを共同創業。東京大学大学院 理学系研究科卒。
https://github.com/fmy
https://twitter.com/fmy
坂本竜@ryusaka (TOP写真右)
早稲田大学で情報工学を学び、インターンを経て2019年にミツモアに新卒第一号として入社。Node.js, Reactを用いてフロントエンド、バックエンド共に開発。社内にて既存プロジェクトへのTypescriptの環境構築、普及を行う。
https://github.com/ryusaka
https://qiita.com/ryusaka

依頼者のサービス体験向上&事業者の負荷を軽減した「自動応募システム」

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ーまず、自動応募システムについて伺いたいです。具体的に、どのようなシステムなのでしょうか?

柄澤:自動応募システムとは、依頼者の希望に応じた見積もりを自動で算出、カスタマイズされたメッセージとともに自動で届けるものです。
ミツモアは、税理士やカメラマン、ハウスクリーニングといった事業者の方々から、依頼者に最大5社の見積もりをお届けするサービスです。これまでは依頼条件に見合う事業者に情報をお届けして、見積もりとメッセージを手動で作成してお送りしてもらっていました。個々人にカスタマイズされた見積もりやメッセージが届くところが「良いユーザー体験」として評判だったんです。
しかし、サービスが成長して依頼者が増える中、事業者の方からの返信が間に合わない状況が増えつつありました。
「何かしらの打ち手を考えないといけない」と考えたところ、誕生したのが自動応募システムでした。これによって、事業者の方々は事前に設定をしていただければ、あとは定常的に依頼を確認しに行くことなく、自動でメッセージ返信と見積もり送付までを完了することができます。依頼者にとっても、数分で見積もりをもらうことができるようになりました。

ー坂本さんも開発を担当していたんですよね。いつから開発を進めていたのでしょうか?

坂本:自動応募システムの開発は2019年11月初旬に開始し、約一ヶ月後の12月中旬にはリリースしました! というのも、税理士への依頼が殺到する年末年始や確定申告に間に合わせたかったのです。この開発は、かなりスピード感をもって進めていましたね。

柄澤:とはいえ、最初から「自動応募システムをやろう」となっていたわけではありません。他の打ち手をいくつか試していたんです。しかし、どれも根本的な解決にはならず、どうしたらいいか詰まっていた時期もありましたね。議論しすぎて、経営メンバーでも少しギクシャクしたり(笑)。結果的に、自動応募システムでブレイクスルーできて良かったです。

さまざまな試行錯誤を行い、たどり着いた三方良しのブレイクスルー

ー自動応募システムにたどり着くまで、どのような試行錯誤が?

柄澤:自動応募システムの前に「ご指名」という機能をリリースしていました。これは、依頼者が自分の希望条件をいくつか入力し、それに合致する事業者を10〜20件ほど概算見積もりとともに表示させて、その中から指名できるシステムでした。
これが…なかなかうまくいきませんでした。ほかにもいくつか考えられる原因はありますが、一番大きな要因はこの機能自体が「依頼者が期待するサービス体験ではなかった」からだと考えています。
ミツモアは当初から、依頼者が希望する内容に対して、事業者から提案がくる体験を提供し続けてきました。ところが、「ご指名」のシステムは、依頼者自身の能動的なアクションが必要な機能でもありました。今思うと、そこにギャップがあったのかもしれません。


ーそして、自動応募システムの構想へたどり着く?

柄澤:「ご指名」を開発する中で、事業者が自身のサービス価格を設定し、依頼者の希望するサービス料金を概算する機能がほぼ完成していました。そこで「この機能を一部再利用し、依頼者の希望に対して、見積もりを作る部分は自動化できるはずだ」と考えたのです。社内では「自動で見積もりを送るのは、事業者側から反対もあるのでは」という声もあったのですが、議論を重ねて自動応募システムをリリースすることになりました。
背景として、依頼が増えて案件をさばけなくなってしまう業種は、繁忙シーズンが明確なところも多かったんです。例えば、税理士への確定申告の依頼が急増するのは年末年始など。税理士として登録している事業者の方が年末年始に全て手動で対応していくことは、負荷が高すぎる。「ならば、年末年始までに、自動応募システムを実装を進められないか?」と考えました。これは、開発をすすめる大きなきっかけとなりました。

坂本:確定申告に限らず、業種によってはシーズンとともに需要の波が変わるものは多いです。事業者の方がすでに忙しい時期に依頼が集中してしまうと、本当は新規の依頼者の案件を受けたいと思っていても、見積もりを作る時間は確保できない。そうなると、見積もりを送っていただけない。シーズンなので依頼は多く来るけれど、事業者側の反応数がどんどん下がり、とうとう依頼者側への見積もり提出が0に近づいているカテゴリもありました。その中で、「これでは依頼者の満足度も、事業者の満足度も下がってしまう。自動応募システムがこれを解決できるのではないか」と実装を決めました。今となればミツモアの核の機能ですが、開発を始めた時点では「これで100%いける!」という確信があったわけでもなかったんですよね。

エンジニア・ビジネス・デザインが関わった背景とは

ーこの開発のために新たに取り入れた方法や組織体制などありますか?

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坂本:自動応募システムの少し前から、UI/UXデザイナー・エンジニア・ビジネスでコミュニケーションして決定していく開発スタイルを取り入れました。それ以前でも、要所要所でデザイナーに依頼はしてました。ただ、エンジニアがデザインを考えていることも多かったんです。そのため、機能が足され続けて、カオスなUIになっていた時期もあり…。ユーザー体験の設計時からデザイナーに入ってもらったことで、全体設計を考えながら開発を進められるようになりました。
おかげで、いろんな機能が増え、全体的な体験として整理された実感があります。今では、新しい機能の開発を行う際は必ずデザイナーに入ってもらう体制は当たり前になりました。

ーミツモアでの開発の特徴として「ビジネスチームとエンジニアチームが密に連携する」があります。自動応募システムでは、ビジネス側とどんなコミュニケーションをしていたのですか?
坂本:開発スタート時は、かなり綿密にコミュニケーションしていましたね。具体的なプロジェクトの進行状況については毎日ビジネスチームとCheck-outミーティングでシェアし、その場で質問もクリアにしていました。

柄澤:「自動応募のシステムを無料で提供するかどうか」は、特に多く意見があったところですね。建設的な議論をバチバチしたこともありました!

坂本:そうでしたね! 自動応募システムは当初、事業者の方からはポイントとして追加で費用をいただいていたんです。紆余曲折の議論を経て、完全に無料で提供するという結論に至りました。この意思決定は、僕も良かったと思います。そのほか、ビジネスチームは自動応募のマッチングについても深く議論しました。自動応募システムを実現するにあたって、ミツモア側が事業者と依頼者のアルゴリズム設定を行う必要があるのですが、どういうアルゴリズムを組むのが理想の体験なのか、というのは今も継続して話し合っています。

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また、この機能をたった1ヶ月でリリースしたのは相当頑張った点ですね。ミニマムで必要なもの、後から追加で出すのでも良い機能の取捨選択はビジネスサイドのメンバーも交えてしっかり議論し、決定しました。料金設定は事業者に設定してもらう期間があるため、自動応募システムを始めるまでに、まずは事業者の方が価格を設定できる状態を先に作り、自動で見積もりを作成する機能やアルゴリズムなどは追って開発を進めました。

柄澤:急ピッチで作ったことで、料金設定のデータベースの置き方など、技術的負債が無いわけではありません。しかし2019年年末までに自動応募システムをリリースできたことで、サービスの発展にも繋がりました。多少の「もっとこうすれば良かった」と感じる点はありますが、あのタイミングで機能をリリースできてよかったなと感じています。

「使いやすい」を超えて、日本のGDP向上に貢献していく。ミツモアの今後の構想

ー自動応募システムは、事業者・ユーザー・ミツモア三方良しになった聞いています。実際に反響はどうでしたか?

柄澤:ちょうど「ミツモア大学」で、カメラマンの方のインタビュー記事があり(集客の手間や営業コストをミツモアの自動応募で効率化した夫婦カメラマンの成功体験談)、『自分としても楽だし、すぐレスポンスが来るためお客様にとってもいい』とコメントをいただきました。こうしたお声を受け、定性的にも、ユーザーの方がハッピーになっているなという実感があります。
定量的な数値でも、自動応募システム導入後に、成約率がグッと増えました。見積もりがつく数が圧倒的に増え、ユーザ体験も改善されました。その後成約し、実際に仕事が実施される割合も上がりました。ただ、自動応募システムはまだ全サービスには適用されているわけではありません。今後は、他カテゴリにも展開していきたいですね。

ーところで、坂本さんは新卒でミツモアに入社していますよね?

坂本:そうです! 2017年6月、エンジニアインターンとしてミツモアにジョインしました。当時はまだミツモアが創業して4ヶ月くらいのというタイミングで、貴重な経験ができたと感じています。その後、大学院卒業のタイミングで、正式に社員として入社しました。

ー決め手はなんだったんですか?

坂本:当時、他の会社にも内定していたんです。でも、ミツモアで4人目の社員として参加できるような環境を経験したことで「今後こうしたアーリーステージのスタートアップで働ける機会はもうないかもしれないだろう」と感じ、入社を決めました。
何より、会社に入社した何年後かに、SNSでミツモアが例えば上場などをしている姿を見て、『いいね!』する外側にいる人間になりたくない、上場し、共に喜ぶに側でいたい、と考えたことも、強い動機だった気がします(笑)。

ーなるほど(笑)。

柄澤:ありがたいですよね(笑)。
大前提として、我々はミツモアというサービスを通して、日本のGDPを上げることを目標にしています。では、どうすれば日本のGDPが上がるのか?働き方を改革し、業務効率と労働生産性を上げていけば、よりバリューが出せるような働き方ができるようになると考えています。自動応募システムでは、これまで手動で作成していた見積もり作業が完全自動になり、労働生産性の向上に繋げられたという実感があります。今後さらにプロダクト開発を進め、もっとそういう世界を作っていきたいです。カメラマンやエアコンクリーニングなど、さまざまな事業者が抱える「これが面倒」「これが手間で仕事を増やせない」といった問題を着々と解決していきたいです。
具体的にはすでにいくつかの開発が始まっています。例えば、エアコンクリーニングの事業者でスタッフが5人いる場合、「どのスタッフに仕事を割り振るか」という問題があるそうです。現在は「この人は○○区」といったマニュアルに沿って決定しているそうなのですが、こうした課題もテクノロジーで解決できるのではと考えています。
事業者のみなさんの仕事を学び、ミツモアがテクノロジーとして解決できること機能として提供し、課題を減らしていければと思います。ミツモアが掲げ、特に取り組んでいる課題解決は「1. 労働生産性を上げる」「2. 世の中の見積もりを全て自動化する」この2軸ですね。今後もさまざまなペインを解決していきたいですね。

坂本:事業者にとってもユーザーにとっても便利な世界を実現して、「見積もりをとるところまでは絶対にミツモア!」というイメージが定着してもらいたいですね。

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(インタビュー・編集:福岡夏樹    ライティング:伊賀あゆみ)

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